法律相談室/「暴力」の損害賠償請求のルール

知ってると知らないでは大違い!
日豪プレス 法律相談室

第13回
「暴力」の損害賠償請求のルール

暴力を受けてケガを負った場合の賠償請求は、負傷日から3年以内に裁判手続きを開始しなければならないというルールがあります(QLD州での民事訴訟の場合。他州もこれに近い規則あり)。刑事訴訟による賠償請求が可能な場合もありますが、賠償範囲がずっと広いのは民事訴訟の方です(就職など、日常生活への影響も賠償対象となるため)。民事は刑事よりも立証責任が緩く、民事で賠償請求を進めるには、加害者が刑事有罪である必要はありません。

州による違いはありますが、賠償請求期限の延長が可能であったり、例外が認められていたりします。例えばVIC州やNSW州では、子どもが親や後見人、近親者などの保護者から暴力を受けた場合の賠償請求期限は、被害者の年齢が37歳に達するまで、という特定の法律が存在します。

しかし正当な賠償請求が、単に期限に間に合わなかったという理由で却下されてしまうのは公正とは言えません。ある非政府組織が、性的暴力の被害者による賠償請求から逃れるために積極的にこの“期限”を利用した例も知られています。ではなぜこうした期限が設けられているのでしょうか?それは、時間が経過するにつれ関連証拠がなくなってしまう可能性が高い、ということが大きな理由です。教会関係者などによる暴力が生じた場合、信仰による治癒や救済を唱える側の教会が自らの立場を守るために被害者による賠償請求の期限を利用するというのはまったくおかしな話です。

それぞれの州で法律が異なるオーストラリアの民法は非常に複雑で、現在、連邦委員会は「各州の法律に一貫性を持たせること」と「制度の単純化」を検討しています(特に子どもへの暴力に関して)。そうなれば、法律の理解と適用がより簡単に世間一般に広まっていくのではないでしょうか。

そのほか現制度の問題点として、正当な手順で賠償請求を起こしたとしても、加害者(あるいは関連組織)に支払い能力がない場合には被害者に賠償金が届かないことが挙げられます。現在この問題に対し、子どもに関係する組織の強制保険加入や、子どもと関係する組織の中に加害者がいた場合の組織の責任を明確にするガイドライン作成などの動きがあります。こうした動きが広まれば子どもの被害者は経済的賠償を得やすくなるかもしれません。

さらにこれらは、教会や準公的グループなどの組織において、子どもと関わる人物を雇用する際の適正審査強化にもつながっています。このように、子どもへの暴力を防げるような仕組み作りが進んできていることは非常に前向きな変化と言えるでしょう。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として24年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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