法律相談室/『007』の宿敵がカム・バック。その法的理由は?

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第15回 『007』の宿敵がカム・バック。その法的理由は?

ボンド・イズ・バック!映画『007』シリーズ第24作でジェームズ・ボンドが帰ってきました。この最新作では、1981年のシリーズ作品冒頭部に登場して以来、スクリーンから姿を消していたボンドの宿敵、ブロフェルドも再登場。この超悪役エルンスト・ブロフェルドが34年もの間、映画に出てこなかったことには理由があるのです。

それは、ブロフェルドというキャラクターの使用に関する法的な争いが長引き、この間、ブロフェルドを映画に登場させることが出来なかったから。ブロフェルドは世界規模の犯罪組織「スペクター」の首領として、原作者イアン・フレミングとケヴィン・マクローリーによって創作されましたが、ジェームズ・ボンドの映画化権を保有するイーオン・プロダクションズとマクローリーの間で、スペクターとブロフェルドの登場が特徴的な作品『007 サンダーボール作戦』の著作権について争いが起きていました。

この法的論争は59年、マクローリーがフレミングに会い、バハマでの映画撮影(後に『サンダーボール作戦』が完成)を提案したことから始まります。フレミングはこのストーリーを小説化し61年に出版しましたが、そのクレジットにマクローリーの名前は無し。これに対しマクローリーは、物語の構想や登場人物の創造は共作、小説は共著、と訴訟を起こしたのです。

ブロフェルドにまつわる長い争いに終止符が打たれたのは2013年11月のこと。ボンド映画の制作者と配給会社が、マクローリーの遺族が持つジェームズ・ボンドに関するすべての権利を管理するとの公式発表があり、この和解により、待望のブロフェルドとスペクターの銀幕復帰の道が開かれたのです。

法律の一般的解釈では、完全に創作された文学的キャラクターは、著作権保護の対象です。著作権を持つ者は、第三者が別の作品に許可なくそのキャラクターを登場させることを阻止出来ます。個性が強く特徴的な性格を持つキャラクターであれば、とある場面でそのキャラクターがとる行動は比較的簡単に予測可能なため、著作権保護の対象になりやすいと言えます。

かといって、すべての架空キャラクターが著作権法で保護され、勝手な使用に対する罰則があるわけではありません。著作権対象のキャラクターの二次使用が罪となるのはキャラクターの「大部分」をまねた場合で、単に名前を出すだけならOK(ただし、商標や不正競争防止に関する法律に触れないことが条件)。つまり、もし私が小説を執筆しディナーの場面にブロフェルドを招待客として登場させただけなら著作権法違反ではないのです。しかし、いかにもブロフェルドらしく話したり動いたりさせる、あるいはブロフェルドを重要人物として登場させれば、私が『007』級のトラブルに巻き込まれることは間違いありません。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として24年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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