法律相談室/著作権と架空作品の使用…「オリジナル」を巡る問題

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日豪プレス 法律相談室

第16回 著作権と架空作品の使用…「オリジナル」を巡る問題

前回のコラムでは、映画『007』の架空キャラクターであるジェームズ・ボンドを例に挙げ、著作権法に関するお話をしました(Web: nichigopress.jp/account/clinic/115961)。

ところで“ジェームズ・ボンド”という名前ですが、作者イアン・フレミングが作品の製作中に読んでいた本『西インド諸島の鳥類』の著者である鳥類学者ジェームズ・ボンド博士の名前から採ったことは、もう1つの面白いエピソードです。本物のボンド夫人(鳥類学者の奥様)はイアン・フレミングに「名誉毀損で訴えようとも思ったけれど、ボンド博士はイアンが創作した同姓同名のキャラクターを存分に楽しんでいたため、訴えることなんてできなかった」と話しています。それに対してイアンは「もしボンド博士が極めて醜い種を新発見した際には、その鳥をイアン・フレミングと名付けることが私への仕返しですね」と答えています。

作品の商業利用の可能性

こうした「オリジナル」を巡る問題は、アメリカのコメディー・ドラマ「ビッグバン・セオリー」でも起こっています。人気ドラマ・シリーズの少なくとも8話の中で、主人公の1人であるシェルドンが「柔らか子猫ちゃん、あったか子猫ちゃん」という歌詞の子守歌を歌うシーンがあります。この歌詞は、1930年代に教師であったエレン・ニューリンさんが作った詩が原作だと言われています。一見取るに足らないことのように思われますが、私たちが生きる商業的な世界では、例えばこの歌詞を使用したTシャツ、マウスパッド、マグネットの他、さまざまなキャラクター・グッズの製作や販売が、番組制作者の商業的利益に結び付くことを忘れてはなりません。

著作権と架空作品の使用問題

法的観点からこの出来事を見てみましょう。詩の作者は『保育園のための歌』という本に歌詞の掲載を許可していますが、テレビ・ドラマの製作者(ワーナー・ブラザース社とその他)側は、その本の出版社に歌詞の使用許可を取っていると反論しています。問題の争点は、「詩の作者がその『歌詞に対する著作権』を保有しているかどうか」で、作詞者が出版社に詩の掲載を許可していることや、番組制作者が作詞者ではなく本の出版社に許可を取っていることとは別になります。これは、著作権と架空作品(ジェームズ・ボンドが登場する小説、あるいは「ビッグバン・セオリー」で歌われた歌詞)の使用問題がいかに複雑であるかを示す良い例だと思います。

さて次回のコラムはテーマをがらっと変えて、「保険会社とのやりとりは負傷よりもストレスがいっぱい?」です。お楽しみに。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として24年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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