法律相談室/「賠償請求手続き」のコントロール

知ってると知らないでは大違い!
日豪プレス 法律相談室

第17回 「賠償請求手続き」のコントロール

違法行為を受けた時に被った損害を埋め合わせるための「損害賠償請求」。賠償請求を行っていると、その複雑性と係争性から、請求者が手続きを進める気力を失ってしまうことがあります。ご自分が、事故に遭ったと考えてみましょう。事故でけがを負ったこと自体、十分なストレスですが(他人の不注意で生じた事故なら、なおさらです)、これに加えて治療費の支払いや欠勤に伴う所得減などの金銭的不安も出てきます。

賠償請求者のストレス

しかし、賠償請求者にとってストレスはそれだけではありません。請求者は、治療に関わる出費や日常生活へのけがの影響(たとえ医師の診断書があったとしても)などについて、賠償請求のために日々細かく記録を取り続ける必要があります。一刻も早くアクシデントを乗り越えて前に進みたいという請求者の思いに反して、時にそれが2年以上に及ぶこともあるのです。

こうしたハードルは、賠償請求の相手先である保険会社によって作られているとも言えます。なぜなら保険会社は、自分たちのクライアントがけがを負わせた(過失のあった)側であるにも関わらず、賠償請求者に対する賠償額の支払いを避ける、遅らせる、あるいはできるだけ少額にしようとする経済的動機があるからです。手続きを引き延ばせば、最終的に請求者がくじけて立ち去って行くことを、保険会社は知っているのです。請求者が手続きを諦めてしまえば、保険会社は自分たちのポケットに、何十万ドルというお金をキープすることができるのです。

事故でPTSD(心的外傷後ストレス障害)、その他精神的ダメージを負った請求者にとって、こうしたハードルはさらに厳しいものとなります。保険会社による請求者のひそかな監視、度重なる医療診断のリクエスト、収入・支出記録の詳細チェックを受けることで、請求者は再び被害者になってしまったと感じるでしょう。

保険会社の事情

保険会社による、誠実な賠償請求者の調査・監視がここまで厳しくなった理由の1つに、2011年に大きな賠償請求が増えたことで、保険業の利益が急落したことが挙げられます。保険会社は、保険料を値上げてして収入額アップを図ったものの、利益は落ち続けています。そうしたことから、中には、その対応策として賠償請求者への態度を厳しくしている保険会社もある、ということなのです。

こうしたことから、請求者にとって賠償請求を最善の結果で終わらせるには、手続きの支配権を握ることが不可欠です。また、保険会社への対応に気持ちを左右されないよう、個人的な価値観をしっかりと保つことも重要かもしれません。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として24年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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