法律相談室/海外からの訪問者に対する豪州の税制

知ってると知らないでは大違い!
日豪プレス 法律相談室

第18回 海外からの訪問者に対する豪州の「良くない」税制

現在、年間2万人もの日本人がワーキング・ホリデー(WH)ビザを取得しています。その約半数を占める人気ナンバー1はオーストラリア(特にQLD州)。人々のフレンドリーさと治安の良さは、日本人がオーストラリアを選ぶ2大ポイントですが、適正な賃金レベルも人気の理由の1つです。

オーストラリアの農場主にとって、日本(やその他の国)からのWHメーカーはとても頼りになる、経済への貢献者です。例えば、QLD州のガトンやスタンソープ地方などの果樹農園の多くは、毎年、リンゴ、梨、桃、イチゴの収穫作業を海外からの訪問者(日本人WHメーカーの割合が高い)に頼っています。こうした仕事の需要と供給のバランスは、ここ何年もの間、適正なところで保たれています。

日本人のWHメーカーたちはオーストラリアで一生懸命働いてお金を貯めた後、国内を旅行(ラウンド)する、というのが典型的な滞在生活パターンのようです。つまり、彼らの多くがオーストラリアで稼いだお金をオーストラリアで消費するということ。例えば日本人WHメーカーは、オーストラリア滞在中の1年間に約1万3,000豪ドル(以下、ドル)の収入を得、旅行に約1万5,000ドルを費やすそうです。

現在適切に保たれている上記の需給バランスですが、オーストラリア政府による税制変更(増税)が実行された場合、どうなってしまうのでしょうか?

現在の税制では、「居住者」であれば年収1万8,500ドルまでは無税、それを超えた部分に対しては1ドルの所得につき19セントの所得税がかかることになっています。ですから、WHメーカーの年収が1万8,500ドル以下であった場合、タックス・リターンをすることで、源泉徴収された税金の返金を受けられる可能性があります。

しかし最近オーストラリア政府が発表した税制変更案によりますと、海外からの訪問者がオーストラリアで働いて収入を得た場合、無税の範囲は無しとなり、1ドルの収入から32.5パーセントの所得税が課せられるというのです。これを具体的な例で示すと、あるWHメーカーの年収が3万7,000ドルであった場合、現行法では3,500ドルの所得税を納めることになりますが、税制が変更されれば、それが1万2,000ドルまで跳ね上がるということです。

このような税制変更は、オーストラリアを訪れる多くのWHメーカーに深刻な影響を及ぼす可能性があります。もしかすると果樹園の経営者は今後、アルバイトの若者たちを見つけにくくなったり、人件費により多くの予算を投じることになるかもしれません。そして、日本からのWHメーカーたちは高い税金を納めなければならず、彼らが国内旅行などで消費するお金も少なくなりますので、ひいては日本からの訪問客向けのビジネスをしている観光業界も痛手を被る、ということになるのかもしれません。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として24年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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