法律相談室/オーストラリアで“ギグ・ワーカー”が労災に遭ったら?(2)

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第49回 オーストラリアで“ギグ・ワーカー”が労災に遭ったら?(2)

自由VS操られる

先月号で、ギグ・ワーカーの労働環境における懸念点などについて触れました。今月は、実際にギグ・ワーカーの働き方について見ていきます。

オーストラリアのギグ・ワーカーには、病気休暇、有給休暇、解雇に関する事前通告などがなく、大事なスーパーアニュエーションもありません。

犬の散歩代行者や便利屋、ホーム・ヘルパーなどのギグ・ワーカーには、オーストラリアの労働法が適用されません。正規雇用者は、最低限の雇用環境、例えば最低基本時給や休暇手当などの付与が法律で守られています。更に、ギグ・ワーカーは仕事で使用する機材・道具を自分で用意する必要があり、メンテナンス費用も個人負担です。

その結果、オンライン・サービス(アプリ)の会社は、スーパーアニュエーションや労災補償、休暇手当、特定の税金などの支払いをしなくても良い場合が多いです。働き手は労災などに遭って初めてこうした状況について考える、ということが少なくありません。また、ギグ・ワーカーの雇用契約は、オーナーの思い付きで終了することもあるでしょう。こうした状況は、オーストラリア社会に大きな疑問を投げ掛けています。

その他の懸念

大きな社会的関心の1つにヘルス・ケアがあります。正規雇用者が職場でけがをした場合、労災補償を受ける権利があります。具体的には、手術費や理学療法治療費、再就職のためのトレーニング費用などが、雇用主が加入している労災保険制度で補償されます。

一方、ギグ・ワーカーが仕事中にけがをしたとしても、労災補償を受けられません。個人で民間の健康保険に加入していなければ、公的健康保険制度の下で治療を受け、その費用を個人で負担することになります。

ワーキング・ホリデーで来豪中に、ギグ・ワーカーとして働いているとしましょう。上司の指示で仕事中、負傷し働けなくなってしまったら、所得はなくなりますし、治療のための出費もあるでしょう。こうした状況を公平だと感じるでしょうか?

もし、あなたが税金を納めている正規雇用者、ビジネス・オーナーだったとします。あなたが納めた税金の一部が、仕事中にけがをしたギグ・ワーカーの治療費に充てられることを公平だと感じますか?


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として25年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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