第15回 労働災害保険ワーク・カバーについて

日豪プレス法律相談室

 

第15回

労働災害保険ワーク・カバーについて

 

Q 現在ワーキング・ホリデー・ビザで働いているのですが、オーストラリアの永住権、または市民権を持っていないため、労働に関する政府機関による補償受給資格が一切ないと聞きました。万が一、何かあった時のために、個人で保険に入るべきでしょうか?


A オーストラリアの市民、または永住権保持者はセンターリンク(Centrelink)という政府機関からさまざまな手当を受けることができますが、一般的にワーキング・ホリデー(ワーホリ)労働者のような海外からの一時滞在者にはこのような手当の受給資格はありません。ただし、労働者に与えられる権利という観点では、ワーホリや学生の人々にもオーストラリア市民や永住権保持者と同等の権利が与えられています。すなわち、ワーホリだからという理由で不当に解雇されたり労働災害の手当が下りないようなことがあれば、QLD州の法律により定められた権利を主張することができます。

ワーホリや学生ビザなど労働の権利が付随するビザをお持ちの方は、就労中や通勤途中にけがをした場合、そのけがの原因に関わらずワーク・カバー(Work Cover)という機関を通じて補償手当の申請が可能です。この手当には賃金手当、治療費、交通費および、リハビリにかかる費用などが含まれ、法的労働者であれば誰でも申請できる権利を持っています。また、ワーホリで滞在中の人の悩みとしてよく耳にするのが医療費に関するものです。実際に「海外旅行保険に入っていないため病院に通えない」という人もいるかと思います。しかし、海外旅行保険に入っていなくても、上記のように通勤途中で事故に遭った場合や、労働によりけがを負った場合はワーク・カバーを通じて補償手当の申請ができるということを強調したいと思います。補償手当の申請に関するメリットとしては、補償金受給により、就労不可能、または限定的な就労のみ可能となった期間の金銭的な負担も軽減されますし、さらにはけがを負った直後から治療費などを自己負担せずにすみ、ワーク・カバーからの支払いで通院を続けたり、そのほかの適切な治療を受けることができます。

労働災害に関する権利はQLD州の法律で就労するすべての労働者に等しく与えられている権利であり、雇用者は労働者が就労中に不慮の事故にあった場合に備え、ワーク・カバーによる補償制度を利用できるよう備えておく法的義務があります。オーストラリアで働いている人が、万が一就労中にけがをしてしまった場合には、保持しているビザの種類に関係なく、州の法律によって賃金や治療費などがきちんと補償されるということをぜひ知っておいてほしいと思います。 なお、本記事は法律アドバイスではなく情報提供を目的としたものです。


柿崎秀一郎
豪州弁護士。中央大学法学部卒。ボンド大学法務博士号取得。リトルズ法律事務所で民事訴訟を中心に法務を行っている。

 

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