QLD州の労災法の改正について

日豪プレス法律相談室

 

第32回

QLD州の労災法の改正について

10月、労働者災害法と労働者災害補償組織運営の改正法案がQLD州議会を通過しました。この度の労災法改正で大きく変わった点、また改正法が一般労働者に与える影響について解説いたします。

2013年10月15日発効となった改正点で最も重要なものが後遺症5%制(仮)の導入です。旧制度では雇用主に過失があると判断される場合、後遺症の程度にかかわらず労働者に過失労災請求の手続きを起こす権利がありました。新制度では5%を超過する後遺症が認められた場合のみ、労災請求の手続きが可能とされています。

後遺症5%以下に該当するケガ、症状の例を挙げると、利き手ではない手の薬指第1関節での切断、脊椎に隆起を伴わない中程度の腰痛、中程度の適応障害などがあります。後遺症の程度が5%以下と判断される症状の多くは一般的にはかなり重度の症状に該当し、職業や生活スタイルによっては日々の業務や日常生活が一変するようなことも考えられます。

また専門医による後遺症診断の際、用いられるガイドラインの刷新が検討されていますが、後遺症5%制が導入される以上、ガイドラインの厳格な適用が各医師に求められることになります。

後遺症5%制は10月15日以降に起きた労災事案に適用されるため、10月15日より前に職場でケガや病気を患った労働者は旧制度に従い労災請求の手続きが許されています。

また、10月29日に施行された改正により、雇用主は労働者を雇う前に、既存の病気やケガ、医学的状態の開示を労働者に要求することが可能となりました。雇用主は労働者に求められる業務内容やケガや病気が適正に開示されないことの含意を明記しないといけません。故意に虚偽、および紛らわしい情報の開示を行った労働者には労災請求の権利が認められない可能性があります。

なお、以前、本稿の第2、15、23回で触れた補償手当ての手続き(Statutory Claim)、通勤途中で事故に巻き込まれた場合に申請可能なJourney Claimの手続きに変更はありません。改正案の検討段階ではJourney Claimの撤廃案が出されましたが、都市部以外のQLD州住人に与える影響の重大性が懸念され、撤廃とはなりませんでした。

上記は情報提供を目的とし、法的アドバイスではありません。


柿崎秀一郎
豪州弁護士。中央大学法学部卒。ボンド大学法務博士号取得。リトルズ法律事務所で民事訴訟を中心に法務を行っている。

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