法律相談室/賠償請求の実例

知ってると知らないでは大違い!

日豪プレス 法律相談室

 

第5回

賠償請求(CTP Claim)の実例

日本と制度が異なるオーストラリアで事故の賠償請求を行うのは、とても大変なイメージがありますよね。「手続きに要する労力が賠償金額に見合わないのでは?」と考える人も多いかもしれません。

そこでまず、実際に自動車事故でけがを負った人による賠償請求(CTP Claim)の例を紹介したいと思います。

X氏は乗用車の助手席に乗車していましたが、車が停止した際、後方から来た車に追突されました。その結果、むち打ち症といくつかの軽症を負いました。さらには、事故で負ったけがのせいで精神的にも病み、仕事に復帰することができなくなってしまいました。

オーストラリアの賠償金制度では、事故による所得損失が非常に重視されます。X氏のケースでは治療費はもちろんのこと、事故で負ったけがが将来の仕事能力にも悪影響を与える(所得の低下を導く)こと、また、けがの後遺症により今後も継続して日常生活で介助が必要なことなどが認められ、最終的にはCTP保険会社から20万ドル超の賠償金が支払われました。

軽傷だからといって放っておいたところ、半年〜1年後に症状が悪化した、という話もよく耳にします。

そうしたことから、事故で負ったけががたとえ軽傷であったとしても、面倒と思わずすぐに医師に診断してもらうこと、そして、賠償請求について一度検討してみることをお勧めします。

今回はもう1つ、最近ニュースでも話題になった、興味深い賠償請求の例を紹介しましょう(首都キャンベラでの例ですので、QLD州の法律がそのまま適用されるわけではありません)。

2008年のことですが、J氏はフットボールの公式試合を見に行き、ハーフ・タイム中に行われた観戦者参加型のゲームに出場したところ、首の骨を折る大けがを負い、その結果、タイル職人としての仕事に戻ることができなくなってしまいました。

賠償金としておよそ50万ドルの支払いを受けたJ氏ですが、なんと4カ月でそのお金のほとんどを使い切ってしまったのです。J氏は賠償金を正しく使用せず、ぜいたく品の購入などに充てていました。そのためセンターリンクはJ氏は年金の受給資格はないとし、また、少なくとも17年まで政府の福祉補助は不要であるとの判断を下しました。

もし不運にも事故でけがを負ってしまい、人や組織などに事故発生の責任がありそうな場合は、賠償金請求制度の複雑な手続きやルールを誤用しないためにも、まずは専門家に賠償請求手続きについて相談してみるのが良いでしょう。

以前のコラムでもお伝えしていますが、法律で賠償請求を行える期限が設けられていることにも注意してください。


長谷川由貴
豪州弁護士。QLD大学法学部・文学部(犯罪学専攻)卒。MBA法律事務所で、事故に遭われた人やその家族に対し、法的サポートを提供している。

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