法律相談室/いじめへの対処

知ってると知らないでは大違い!

日豪プレス 法律相談室

 

第7回

学校運営者の注意義務−“いじめ”への対処

日本で大きな社会問題になっている“いじめ”。今日では、パソコンや携帯電話を使ったインターネット上のいじめが増えていることも特徴の1つではないでしょうか。

ここオーストラリアも日本と同じような状況にあるようです。ある調査によりますと、オーストラリアでは身体的ないじめは増加傾向にないものの、「Cyber-Bullying」と呼ばれるインターネット上のいじめが増えているという結果が出ています。

今回は、こうしたいじめ問題に対処しなければならない学校の義務について考えてみます。学校の運営管理者は、生徒間でのいじめをやめさせるため、適切な手段を取ることが不可欠です。学校には、監督している子どもたちを守らなければならない全般的義務があるからです。

ここで1つの判例(Oyston v St Patrick’s College)をご紹介しましょう。いじめを受けていることを学校に相談していた生徒、オイストンさん。しかし校内のいじめ問題に適切に対処しなかった学校に対して、NSW州裁判所は2013年9月、彼女へのおよそ16万ドルの賠償金の支払いを命じました。

オイストンさんは、セント・パトリック・カレッジに通っていた3年間、ほかの学生たちからいじめを受け続けた結果、心の病を負ってしまったことに対し、学校に過失(注意義務違反)があったことを訴えていました。彼女は学校スタッフに何度もいじめについて報告しており、学校側はいじめ問題が校内で起きている事実を把握していたはずですが、彼女の相談に対して効果的に対処することを怠っていました。

実際のところ、セント・パトリック・カレッジには校内でのいじめに対処するため2つの指針が用意されていましたが、学校の対応はその場しのぎで、体系的なものではありませんでした(対処は行ったものの、いじめをやめさせるには十分な対応ではなかった)。オイストンさんの精神的疾患にかかるほどの心の傷がいじめによるものであることは明らかですが、学校は注意義務を遂行しなかったということになります。ちなみに、学校運営者が、校内でのいじめに目を光らせるようスタッフに指示するだけでは、十分な対応とはみなされません。

残念ながら多くの事例において、学校スタッフは、いじめの報告を受けた際の適切な対処方法についてトレーニングを受けていません。学校は、いじめ問題への対処方法をルール化して、いじめを阻止する措置を取ることが求められています。また、学校の運営管理者は、いじめ問題担当の学校スタッフに対して、継続的なトレーニングを提供する義務があります。


長谷川由貴
豪州弁護士。QLD大学法学部・文学部(犯罪学専攻)卒。MBA法律事務所で、事故に遭われた人やその家族に対し、法的サポートを提供している。

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