法律相談室/スポーツ外傷に対する賠償額は?

知ってると知らないでは大違い!

日豪プレス 法律相談室

 

第9回

スポーツ外傷に対する賠償額は?

スポーツ選手が試合中に負傷してしまった場合、賠償金の請求は可能なのでしょうか?

オーストラリアのスポーツ界で今話題になっていることといえば、昨シーズンのナショナル・ラグビー・リーグ(NRL)試合中に重度の脊椎損傷を負ったアレックス・マッキノン選手(Newcastle Knights)が起こした賠償請求です。今後プロとしてラグビーができなくなってしまった彼の将来を含め、法的に慎重な協議がなされているところです(2015年5月現在)。

 

相手選手のルール違反

スポーツにケガは付き物だと考える人も多いと思います。しかしマッキノン選手は、相手チーム選手による危険なリフティング・タックルが原因で負傷しました。試合後、ラグビー連盟の裁定機関が事故を調査し、相手選手にルール違反があったとの判断を下しました。もちろんマッキノン選手はラグビーにケガのリスクがあることは承知の上で試合に参加していますが、それは競技ルールが守られることを前提にしています。

 

プロの試合中のケガ

この事故に関してもう1つ考えるべきことは、一般人が行うレクリエーションとしてのスポーツ中ではなく「仕事中に負ったケガ」だという点。試合は連盟によって営利目的で運営されているもので、試合を開催すれば広告やテレビ放映権、スポーツくじなどによる収益が発生します。その試合に参加するプロのラグビー選手は雇用者のいるチームに被雇用者として所属し、雇用者は選手たちの安全について責任があります。つまりマッキノン選手が“仕事”であるラグビーをしている最中にケガをしたという側面からも、賠償について考える必要が出てきます。

 

スポーツ外傷の賠償の実例

こうしたケースについては1985年の有名な判例「Steve Rogers v Mark Bugden」で対処が確立されています。ルール遵守の試合におけるケガのリスクを承認していた選手が、試合中のルール違反が原因(承認していたリスク外)で負傷すれば、賠償金を得られるのです。上記判例では、ラグビーの試合中にバグデン選手がロジャーズ選手のあごの骨を折ってしまった結果、バグデン選手が所属していたクラブ・チームが雇用主として、ロジャーズ選手に対する賠償金6万8,154ドルを支払いました(1990年)。

さて次回のコラムでは、全世界で人気のメル・ギブソン主演映画「Mad Max」シリーズの、SA州の砂漠での撮影が話題となったおもしろい法的裏話をご紹介しましょう。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として24年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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