第11回  グローバル・マネー・フローをつかむ

夢をかなえる豊かな明日への投資術

第11回 グローバル・マネー・フローをつかむ

文=諸星きぼう

グローバル・マネー・フロー

「強い通貨」に投資するために、つまり為替相場を見通すために、グローバル・マネー・フローをつかむことが重要であるということを前回書きました。

「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」という言葉があります。グローバル・マネー・フローをつかむために、過去を知ることが重要です。

過去と言っても、現在の国際資本市場が形作られてまだ30年余り、現代金融史の中で、まさに現在につながっている90年代から掘り起こすことから始めたいと思います。

米国の世界金融支配の確立

平成、21世紀と新しい時代カウントに入る度に、大不況が訪れています。

平成元年は言わずと知れたバブル崩壊の年であり、21世紀の始まりはITバブルの崩壊によって始まりました。

バブルの崩壊と崩壊前夜を経験した1990年代とはどういう時代だったのでしょうか。

それは、米国が一国世界支配(ヘゲモニー)をほぼ完成させたデケード(10年)であったと言えます。90年代は、アメリカン・スタンダードをデファクト・スタンダード(事実上の規範)としてグローバル・スタンダードにしていく過程の10年でありました。

その中でBIS規制と時価会計はその2本柱といえます。

BIS規制は、表向きは国際的な銀行が健全、かつ平等に競争できるような土俵を準備するものでありましたが、実際の意図はバブル期の邦銀のオーバー・プレゼンスを抑制するためでした。

つまり、邦銀は過小資本で海外資産を膨張させ、世界金融の覇者となる勢いでしたが、それを抑制する手段としてBIS規制が導入されたのでした。

90年代前半の米国は、S&Lの破たん処理に追われる金融危機の真っ最中であり、とても邦銀に対抗する余力はありませんでした。経済的にも貿易赤字、財政赤字という双子の赤字に苦しめられている状況でもあったのです。

そこで、自己資本規制という楔(くさび)を邦銀に打ち込むことにより、相対的に米銀の復権を果たそうとしたのです。

もう1つの邦銀対策として導入したのが時価会計です。邦銀は期間損益の概念しかなく、体力にものをいわせて無謀なリスクを取ってきましたが、時価での損益認識をさせることにより、無謀なリスク・テイキングを抑制し、邦銀のプレゼンスの低下を促したのです。

この2つの対策で邦銀を押さえ込んでいくことにより、日本の優秀な企業の世界進出をも抑制しようとしたのでした。

実際、日本は平成の始まりと同時にバブルが弾け、90年代の持続的な株価下落の過程で邦銀は凋落していったのでした。

このように米国は、アメリカン・スタンダード、平たくいうと、米国流のやり方をうまく世界標準(グローバル・スタンダード)にすることで、米国企業に有利な仕組みを世界のルールとして浸透させ、日本のような出る杭を打ち据えていったのです。

もちろんすべてが米国にとって順風満帆だったわけではありません。90年代前半は景気低迷と金融危機の吹き荒れていた時代だったのです。

90年代中盤からは、米国のマネー戦略が功を奏し、米国がかつてない (かつてないというのは、景気循環をもなくしてしまうようなという意味)繁栄を享受していく時代でもありました。

経常赤字国である米国は、常に海外からファイナンス(資金調達)しなければ、資金ショート(資金不足)してしまう状態にあるのですが、世界中(特に、日本と欧州)から資金をかき集め、さらに経常赤字額以上の資金まで取り込むことに成功し、その余剰資金を世界中に投資するという循環を作り出したのです。

つまり、米国を、グローバル・マネーのハブとすることに成功したのでした。

ディスクロージャーの徹底、格付けや時価会計などは、米国投資家が投資するための判断材料・基準であり、その要求を満たすことを投資の要件とすることで、アメリカン・スタンダードを浸透させていったのです。

実物経済フローを超えたキャピタル・フロー

こうして米国資本が世界を駆け巡るようになると、従来の実物経済の動き─貿易収支の動きよりも資本の動きが巨大になっていったのです。

このことの重要性は、米国が成熟国を通り越していき、債務国に転落しながらも覇権を掌握し続ける素地をもたらしたことです。通常、成熟国は経常赤字を上回る投資収益で収支をまかなっていくのですが、米国の場合、資本輸出の期間が短く、海外での資本の蓄積が十分でなかったため、債務国へ一気に滑り落ちてしまったのです。それにもかかわらず、米国は世界中から資金を取り込み投資・資本を獲得することに成功したのです。

今月の 得ネタ

満月と新月

昔から、月には不思議な力があると信じられていますね。潮の満ち引きにも関係しますし、人体にも影響しているとのことです(専門外なので詳しくないのですが)。

特に、満月と新月は強い影響力を持つとされています。この2つの日に、月の引力が最大になることが最大の要因ですね。

さて、この満月と新月が相場に大きな影響を与えることもよく観察されています。相場も人の気が集中することで形成されるので、月が人に影響を与えるのならば、相場に影響を与えるのも不思議ではないですね。

満月、新月の日には、相場の転換点となることが多いとされています。転換にも2種類あって、その日を境に相場が反転する場合と、現在動いている方向へ加速度を増す場合です。

こうしたことからマーケット関係者の多くは、満月と新月の日を意識しているものなのです。私の個人的な感覚では、満月よりも新月の方が当てはまることが多いような気がしています。もちろん満月や新月の日が必ず転換点となるわけではありませんが、大きく反転などすると、やはり新月だったからな、と妙に納得したり、その反転に向けてポジションを取り損なったり、クローズし損なうと、ああ、ちゃんと月を確認していなかったなどと反省したりします。

最近では、4月21日が新月であり、その日は土曜日だったのですが、その翌週の月曜日から豪ドル円が84円台から下落を開始し、5月9日に80円割れし、現在も下落基調を続けています(5月14日本原稿執筆現在)。

月とは関係ありませんが、チャートで見ると79円を割り込むと70円台中盤から前半までの下落は必至と見られていますが、反転のきっかけとして期待されるのは、次の新月である5月21日。ここで下げ止まり反転しないようだと、豪ドル円の下落はかなり深刻なものになっている可能性が高いです。今は、月に祈るばかりしかありません。

 


著者プロフィル もろぼしきぼう

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に『お金は週末に殖やしなさい』(2010/10)、『大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術』2009/3)。オフィシャル・サイト: www.ideal-japan.com ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com Facebook: www.facebook.com/#!/kibo.moroboshi

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