夢をかなえる投資術

夢をかなえる豊かな明日への投資術

第16回 為替相場の決定要因

−グローバル・マネー・フローをつかむ⑥


文=諸星きぼう

今回は、改めて為替相場の決定要因について考えてみます。 一般的には、2国間のファンダメンタルの差によって決まるとか、金利差によって決まるとか言われていますが、果たして本当でしょうか。

超・長期的には、ファンダメンタル(経済の基礎的条件)や購買力平価(つまるところ、インフレ率格差を意味しています)という説には反対しませんが、実務的な立場からは役立つ話ではありません。

ほとんどの投資家は短期的に為替相場がどう変化するのかを問題にしており、長期投資家と言える人でも中期的な相場水準を考えているでしょう。

短期的な見方をするならば、ひと昔前は貿易収支が重要視されていましたが、現在は金利差が最も重要視されています。これは以前にもこのコラムで書きましたが、現在の世界的マネー・マーケットでは、実需の資金フローよりも投機の資金フローの方が格段と大きいからであり、その資金フローが起きる要因で直接的に分かりやすいものが金利差だからです。

しかし、今回で6回目のテーマですが、こうしたグローバル・マネー・フローの要因にはさまざまなものがあります。おさらいしますと、国策要因、信用リスク要因、マネー・サプライ要因、金利差要因といったものが挙げられます。

この中でも最も重要、かつ根本的な要因が「国策要因」と私は考えています。この国策に従って、金利、マネー・サプライ、信用リスクを政府がコントロールしようとしているわけです。

変動相場制を採っている国では、表向きは為替変動を市場に委ねているということになっていますが、政策によってその政府の意図を反映させようとしています。それは、これまでもこのコラムでも述べてきましたが、米国の国策要因によって、ドル円の為替水準が大きく変わったことを見ればお分かりになったと思います。

ただ、為替市場はあまりに巨大になったため、1国の政策意図が短期的には実現できるとは限りません。また、私たち個人投資家は類推することはできても、政府の真の意図をあらかじめ知ることは困難です。

それゆえ、為替相場の動向、ひいてはアセット市場の動向を予測するためには、グローバル・マネー・フローの動向に注視することが重要になってくるのです。

 

ドル急落

ここで政府の意図とかい離した市場の暴走例を挙げてみます。1998年8月のロシア危機勃発時に、ドル円が急落しました。1ドル147円台まで上り詰めたドルが、1週間もかからずに120円近辺まで一気に急落したのです。

このきっかけはもちろんロシアのデフォルト宣言によるものですが、その理由は前々回に説明したヘッジ・ファンドによる円キャリー・トレードの巻き戻しによるものでした。

特にその中心をなしたのが、あのLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)というヘッジ・ファンドであり、米国金融界まで揺さぶることになるのです。ヘッジ・ファンドは円キャリー・トレードと称して低利の円調達資金をドル転し、それにレバレッジをかけて最終的にロシア国債に投資してきたことは前回で説明しました。

実はヘッジ・ファンド以外にもキャット・トレーダー(模倣投資家)が同様な取引を行い、円キャリー・トレードによるポジション(持高)が膨大に膨らんでいたのです。そこへロシア国債のデフォルトが起こり、そうしたポジションを持つ投資家たちはそのポジションの解消を余儀なくされました。

その解消の最後の取引が円転(ドルを円に替えること)であり、つまりドル売り円買いを行わなければならなかったのです。 ロシア危機が勃発したのは8月17日であり、日本ではお盆の真っ最中。海外でも長期休暇シーズンで、市場参加者が著しく限られており市場には流動性がありませんでした。

つまりドルの買い手がほとんどいなかったのです。しかし、キャリー・トレードを解消しなければならないヘッジ・ファンドはすぐにドルを売らなければならず、ドルがどこまで落ちようが売り叩いたのです。

その結果、1日に10円弱もドルが急落するような惨事を招き、その売りが落ち着くまでの1週間足らずの間にドル円為替相場は120円を切るような水準まで崩落していったのでした。

ユーロ危機によりユーロ金利がほぼゼロとなったことで、ユーロ・キャリー・トレードも盛んになっています。ユーロの悪材料によりマーケットがリスク回避的になった時に、ユーロがあまり売られなくなってきたのは、ユーロ・キャリー・トレードの巻戻しによるユーロ買い資金フローがあることによるかもしれません。しかし、98年のようなドル円急落が起きたのは95年からの長期ドル上昇局面があり、かなりキャリー・ポジションが積まれていたからです。現在のユーロ・キャリー・ポジションは、豪ドルなどの資源国通貨や一部の新興国に向かっていますが、それと比べたら極小です。とは言え、ユーロ豪ドルの反転が見られた時は注意した方がいいでしょう。



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著者プロフィル もろぼしきぼう

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に『お金は週末に殖やしなさい』(2010/10)、『大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術』2009/3)。オフィシャル・サイト: www.ideal-japan.com ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com Facebook: www.facebook.com/#!/kibo.moroboshi

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