明日への投資術「日本の財政問題はどうなったの?」

夢をかなえる豊かな明日への投資術

第32回 日本の財政問題はどうなったの?


文=諸星きぼう

一昨年11月より、アベノミクス、日銀の異次元金融緩和がきっかけとなり円安・株高となり、なんとなく景気が良くなりそうだという雰囲気になっていますが、本当にそうでしょうか?インフレ率は円安により若干上昇し1%を超える水準になりましたが、GDPの数値を見る限り、景気拡大という状況にはまだ程遠いようです。

とはいえ、何となく明るい未来を感じている雰囲気となっているのも事実かもしれません。そうした楽観的な気分が蔓延している中、日本の国家財政破綻の危険について、あまり誰も言わなくなりましたが、大丈夫なのでしょうか?

平成25年度予算を家計に例えると、月収40万円(税収+税外収入47.1兆円)に対して、生活費46万円(一般歳出54兆円)、田舎への仕送り14万円(地方交付税16.4兆円)、住宅ローン返済19万円(国債費22兆円)と79万円も支出しているのです。足りない39万円はローン(国債発行額45.5兆円)で埋めているのです。もし、これが普通の家庭でしたら、どう見ても破綻ですよね。借入金および政府短期証券も含めた国全体の債務額は1,274兆円にも上り、国民1人当たり999万を超え、4人家族でしたら4,000万円弱の借金を国が勝手に(?)しているようなものなのです。

にもかかわらず、国債が売られ長期金利が上昇することはなく、それどころか10年国債金利は0.5〜0.7%と極めて低位安定しています。

ギリシャのように国債が暴落し、長期金利が跳ね上がらず低位安定しているのは、なぜなのでしょう。

それを考える前に、金利の構造を理解する必要があります。私たちが目にしている金利は名目金利と言いますが、「名目金利=実質金利+インフレ率(+信用リスク・プレミアム)」という式で表わされます。国債の場合は通常、リスク・フリーであり信用リスク・プレミアムはゼロという前提でした。ところが、ギリシャをはじめとした南欧諸国には、このプレミアムが要求され金利が跳ね上がり、国債が急落、暴落したのです。

では、日本の長期金利はなぜ、上昇しないのでしょうか。その理由は、(1)景気があまり拡大せず、資金需要があまりないため実質金利が下がっている、(2)インフレ率がまだ低い、(3)信用リスクをまだマーケットが見ていない、といったことが考えられます。

先ほど書いたように、こんなに日本の財政が酷い状況なのに、なぜ信用リスクプレミアムが上昇しないのでしょうか?

現在は、政府債務1,274兆円を大きく凌駕する個人金融資産1,590兆円があるということと、経常収支が黒字であるので、ストックの面でもフローの面でもまだ大丈夫と見られているのでしょう。しかし、状況はどんどん悪化しています。

(1)政府債務が拡大を続けている。財政規律が緩く、国家強靭化法を錦の御旗にした、野放図な財政支出が拡大しており、10%までの消費増税でもプライマリー・バランスすら達成できない。

(2)円安により、既に貿易赤字になっており、所得収支の大幅な黒字により辛うじて経常収支は黒字だが、近い将来赤字化する可能性も出てきた。

(3)経常収支が赤字化した場合、財政ファイナンス、つまり国債消化は国内では賄い切れず、海外からの資金流入が必要となる。

こうした状況に対してアベノミクスは、第1の矢として「大胆な金融政策」として日銀に異次元金融緩和をさせ、新規国債発行高の7割を日銀が購入し実質的な中央銀行による財政ファイナンスを行い、経常収支黒字の減少を補っています。これにより「ベース・マネー」が増大していますが、資金需要がなければ「マネー・ストック」は増えず、私たちは豊かにはなれません。

次に第2の矢として「機動的な財政政策」をうたっていますが、これまでのバラマキと何ら変わることなく、政府債務は火だるま的に増大し続けることになります。

第3の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」ですが、これが最も重要にもかかわらず、今のところ小粒な政策しか見えず、期待できない状況です。

異次元金融緩和という劇薬を飲み、円安誘導している今、日本の財政を救うには、景気拡大しかありません。景気拡大により税収を増やし、少しでも借金を返すしかないのです!今、日本の景気に対して楽観論の人が多いようですが、米国を中心に世界経済が拡大しなければ、日本経済は再び、暗礁に乗り上げてしまうでしょう。

こうした日本の状況を踏まえ、今後経済・マーケットがどう動き、それにどう対処したらいいのか、ということをインベストメント・サロンではお伝えしています。

【最新ワード解説】
・ プライマリー・バランス:基礎的財政収支のことをいい、国債収支を除いた国家収支バランス。
・ ベース・マネー:現金流通量+金融機関が日銀に預けている当座預金。これがいくら増えても、民間銀行の当座預金が積み上がるだけで、経済には全く寄与しない。銀行の貸出残高が増えて、マネー・ストックが増大しないと意味がない。
・ マネー・ストック:現金流通量+民間が保有する預金残高。これが増えれば、民間保有のお金が増え豊かになっていることになり、経済が拡大する。

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著者プロフィル もろぼしきぼう

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に『お金は週末に殖やしなさい』(2010/10)、『大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術』2009/3)。オフィシャル・サイト: www.ideal-japan.com ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com Facebook: www.facebook.com/#!/kibo.moroboshi

 

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