望む人生とオーストラリア経済

夢をかなえる豊かな明日への投資術

最終回 望む人生とオーストラリア経済


文=諸星きぼう

3年半強にわたって連載させていただいた、この「夢をかなえる豊かな明日への投資術」を終了させていただくことにしました。投資と言うと「儲かる」といった表層的なことばかりに飛びつく方が多く、そうした扇動的な書籍や雑誌が多い中、投資の本質的な部分を取り上げた私の記事を、長きにわたって掲載してくださった日豪プレスに感謝申し上げます。

本連載のタイトルにある「豊かな明日」の内容は、人によって違うでしょう。最も重要なことは「心の豊かさ」であることは言うまでもありませんが、ここは啓蒙記事ではありませんし、私も含めて一般人はやはり「経済的な豊かさ」なしに「心の豊かさ」を得ることは難しいので、経済的な豊かさに焦点を絞ります。

投資を本質的に体得するためには、連載第31回の記事「投資はプロジェクトである」の内容を理解することが大切です。儲かりそうな投資話や案件があるから投資する、ということを続けていたらいつまで経っても豊かになることはできません。ピンときた方はぜひ読み返してください。

書籍『金持ち父さん貧乏父さん』的に言うと、ラット・レースを抜け出して、お金に働いてもらう生活を望む人も多いと思います。そのためには、投資家になるかビジネス・オーナーになるかということになりますが、多くの人は事業主の経験がないのでビジネス・オーナーへの道は考えず、投資家になろうとします。いろいろな人にインタビューした中で聞いた平均的な希望は、「3億円保有し5パーセントで回せば年1,500万円の収入になるので遊んで暮らす。そのためにまず3億円を作りたい」ということ。お金を作ることがまず初めにありきで、貯めたり、投機的な投資を繰り返す人が多いです。

でも、それでは本末転倒ではないかと私は思うのです。まず最初に、自分がどのような人生を望んでいるかというビジョンがあり、そのビジョンを実現するためにどうしたら良いか、と考えるのが本来的ではないでしょうか? お金はそのための最終手段であり、お金を目標に暮らすのはいかがなものかと思うのです。

私の好きなニーチェの言葉に「なぜ、郡畜のままでいるのか。なぜ、自分自身の人生をデザインしないのか」という言葉があります。自分の望む人生を歩めているか、時には振り返ってみてはいかがでしょうか。

さて、今後のオーストラリア経済について述べたいと思います。オーストラリア経済は2000年のシドニー・オリンピックを皮切りに変貌を始め、00年代中盤以降の資源バブルにより急激にその存在感を高めました。通貨豪ドルも米ドルに対してパリティを超え1.1倍の水準まで上昇する場面がありました。不動産価格も上昇を続け、経済は順風満帆の様相を呈していました。

しかし資源バブルは10年ごろに崩壊し、資源価格は下落に転じました。鉄鉱石価格の下落により資源産業は大ダメージを受けています。昨年秋くらいから原油価格が暴落し、それがさらに資源価格下落全般に波及しています。

こうした中、RBAは利下げを断続的に実施し、現在では史上最低水準の2.25パーセントまで下げてきました。利下げにより、高止まりしていた豪ドルの水準を下げるためでもありました。こうした中、内需産業は相変わらず芳しくないのですが、不動産の高騰が続いており、RBAの政策運営を難しくしています。

今後の豪州経済を占う上でのキー・ファクターは、やはり資源価格ということになるでしょう。資源価格に関しては、18年ごろまで下げ続ける可能性が高く、豪州経済浮揚に寄与できないと考えています。これはコモディティ・サイクルを根拠としており、10年の頂点の次は、40年ごろが頂点となり、底になるのが18年ごろと見られているからです。目先、急落した原油価格がショート・カバーにより反発し、資源価格も反発を見せる場面が年内にあるかもしれませんが、長期トレンドとしては下落が続くと考えたほうが良さそうです。資源産業の代替となるべく内需産業ですが、こちらも一朝一夕には大きな成長を望むことは難しそうです。一人気を吐いている不動産業も上昇し続けることは不可能であり、早晩、暴落はしないとしても伸びは止まってくると考えます。

こう書いてみると先行き暗く見える豪州経済ですが、30数年間プラスのGDP成長率を上げ続けている底力を持っており、高度成長は見込めなくともそこそこの成長は達成するのではないかと思っています。移民の国であり、人口増加も安定的であることがその主因かもしれません。リスク・ファクターとしては、中国経済バブルや、不動産バブルの崩壊、崩壊がなくとも中国の成長率はエコノミストが考えるよりも低下速度が速い可能性があります。こうした経済状況の中、豪ドル相場は軟調な時代が今後長く続くものと見ています。

拙著『お金は週末に殖やしなさい』でも書きましたが、ホーム・カントリー・バイアスを取り除き、豪州を含めたアジアへの分散が重要となります。この10年に限り、もしくは世界経済の大底になるであろう23年ごろまでは、経済好調な米国への投資がヘッジ機能も含めて有効でしょう。

最後になりますが、長い間、拙い私の記事をお読みいただきありがとうございました。アジア各国を周り続けており定期連載の執筆時間がなかなか取れなくなってしまいましたが、私のブログなどでは経済・投資記事を書き続けていますので、ご興味のある方はぜひそちらをご覧ください。

いつかアジアのどこかの国で、お会いしましょう。

著者プロフィル もろぼしきぼう

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に『お金は週末に殖やしなさい』(2010/10)、『大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術』2009/3)。オフィシャル・サイト: www.ideal-japan.com ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com Facebook: www.facebook.com/#!/kibo.moroboshi

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