【今さら聞けない経済学】国債だらけの日本~国債発行の歴史~

日本や世界の経済ニュースに登場する「?」な話題やキーワードを、丁寧に分かりやすく解説。
ずっと疑問だった出来事も、誰にも聞けなかった用語の意味も、スッキリ分かれば経済学がグンと身近に。
解説・文=岡地勝二(龍谷大学名誉教授)

第27回:国債だらけの日本~国債発行の歴史~

「国債」とは何か

国債とは、政府が負う国民からの借金です。政府が国民から借金をするということは、本来あってはならないことです。しかし、政府は国民のためにさまざまな施策を実行する時にはお金が要ります。

例えば、橋、道路、病院、学校などを建設したり、また、働けなくなった人びとに毎月必要な生活資金を与えること(生活保護)もとても大切な政府の仕事です。その他、国民の義務である教育のための費用を政府は用意しなければなりません。

これらの資金を政府は国民から徴収する税金で賄いますが、その税金は、主として、「法人税」「所得税」「消費税」といったものから成り立っています。しかし、このような税収だけではどうしても賄いきれない時に、政府は止むを得ず国民から借金をすることになります。その借用書が国債と言われるものです。

事実、日本は、1990年代に突入した「大デフレ」の煽(あお)りを食って赤字になった企業から税金(法人税)は取れません。また現在の日本では、「非正規」の雇用者がだんだんと多くなり、その率は40%近くになろうとしています。その非正規雇用の人びとから税金(所得税)は取れません。従って、人びとが買い物へ行く度に支払う税金(消費税)からしか徴収する手段はないようです。

ただ日本の消費税は、現在のところ8%であり、ヨーロッパの国々の消費税から比べると非常に低い率であることは間違いありません。そこで、日本の政府は2019年の秋ごろに消費税を10%まで上げようとしています。しかし、これだけ上げたところで、とても全ての必要費用を税金で賄えるということにはなりません。そこで、日本政府は国債を増大させているのです。

経済学者は、日本が国債を発行せずに国を運営するためには、消費税を30%ぐらいまで上げないとだめだ、と言います。こんな高い消費税を取るような国に、一体誰が住みたいと思うでしょうか。日本という国は、かつての「輝ける太陽の国」から、「住みたくない国」へと転落していくのでしょうか。そうならないためにも今から日本人は英知を出して、しっかりとした「施策」、「方針」の確立が必要です。

日本の国債の発行残高

先に企業が支払う税金、法人税についてお話しましたが、現在の日本では赤字企業が多くて、とても税金を支払える状態ではありません。

まず、赤字法人の割合の変化を見てみましょう。

1980年 1990年 2000年 2010年 2014年
55% 50% 68% 73% 67%

1980年から2014年の赤字法人の割合の変化(資料:内閣府、経済財政白書、平成28年度 年次経済財政報告 P.43)

こんなにも赤字の企業数が多いのです。本当に驚きですが、「潜在的赤字企業」を含めると恐らく80%近くの企業が赤字と言えるでしょう。それほど日本の企業の業績は「悪化」しているのです。

ただ、国を運営していくためにはたくさんのお金が必要です。そこで政府は借金(赤字国債)を積み重ねていくことになります。そんな「借金=国債」が積もり積もって、現在日本には約1,060兆円の国債残高があります。日本の経済力(GDP)が約535兆円ほどですから、驚くことに2倍以上の借金がある、という状態です。この地球上に国が現れてかなりの年月が経ちますが、これほど借金を積み重ねた国家はかつて無い、と言われています。

そうそう、10年の春、世界的な大問題となった「ギリシャ・ショック」が起きました。それは、ギリシャが自国のGDPに対する比率で160%ほどの「借金」をヨーロッパの国々からして、返せなくなった出来事です。その後、ギリシャは国際通貨基金(IMF)の管理下に置かれたのです。

比較して見ると日本が積み重ねた借金はGDPの2倍ですから、ギリシャどころではありません。一体日本はこれからどうするのでしょうか。世界では、そのうちに「ジャパン・ショック」がやってくるぞ、などと口にする人もいます。

予算の歳入項目(2017年度の税収)
項目 予算額
所得税 17兆9,480億円
消費税 17兆1,380億円
法人税 12兆3,910億円
揮発油税 2兆3,940億円
相続税 2兆1,150億円
酒税 1兆3,110億円
タバコ税 9,290億円
税外収入 5兆3,798億円
新規国債 34兆3,698億円
全体の予算額 97兆4,547億円

では、ここで日本政府の予算構成を見てみましょう。

右の表は、今年の日本の予算規模です。財政規模に占める国債の比率は35%にも達しており、これほど国債を発行しないと日本という国は運営出来ないのです。非常に大変な現状であることが皆さんにも解かって頂けたのではないでしょうか。

国債発行は幾らでも出来るのか

ところで国債は政府の考えで幾らでも発行出来るのか、といえばそうでもないのです。日本には「財政法」という法律があり、政府にお金が無いからといって、お金を借りまくるということは出来ません。財政法の第4条、第5条の内容は非常に厳しく、次のように記されています。

財政法 第4条
「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以ってその財源としなければならない。ただし、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」

財政法 第5条
「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。ただし、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りではない」

これらは政府が勝手に国債を発行して、やりたい放題させない「足かせ」となっているのです。なぜこのような厳しい法律があるかというと、第2次世界大戦の悲惨的な敗戦が背景にあります。政府は国債をどんどん発行しそれを資金として軍備を拡大させました。そして無慈悲な戦争に突入して、多くの国民を戦争の犠牲としたのです。当時「欲しがりません、勝つまでは」を合言葉に、国民がせっせと有り金を叩いて買いためた国債は「紙くず」となってしまいました。結果、もう2度とこのような悲しい思いをさせてはいけないということと、政府に「安易に」お金を使わせないという目的で、財政法によって国債発行の取り締まりを厳しくしたのです。

とかく政治家は自分の「人気取り」のために、国のお金で「これもやる、あれもやる」という公約を掲げます。そして選挙を勝ち抜こうとします。そんな自分勝手なことをして、どんどん国の借金を積み重ねたらその国は滅びるでしょう。こういったことが出来ないようになっているのです。「高橋財政」と呼ばれ、現在も人びとの間でよく知られた国債にまつわる話をしましょう。

「高橋財政」とは何か

経済学を勉強すると「世界恐慌」という言葉を必ず学ばなければなりません。それは、1929年から33年にかけて、アメリカのニューヨークの「ウォール街」という証券街で突如として株価が暴落し、世界経済が大不況に突入した経済事件です。

私は経済学の講義で必ずこの出来事について触れるのですが、その時「ケインズ」という偉大な経済学者が、イギリスに現れて世界経済を救ったという有名な話があります。

日本では昭和4年から8年のことであり、当時の日本経済も「奈落の底」へ突き落とされたような状態でした。時の大蔵大臣は「高橋是清」という「やり手のアメリカ帰り」の政治家でした。高橋が大蔵大臣の任に就いた1931年(昭和6年)は、世界恐慌の真っ只中で日本も例外でなく、というよりは小さな日本はそれこそ瀕死の状態でした。

その当時、世界経済の体制は「金本位制」で成り立っており、各国の通貨の発行が金に基づいていました。そこで世界各国間の輸出入の「支払い、受け取り」も金で実行していました。

しかし、高橋蔵相は「金輸出禁止令」を出し、金本位制を停止して「管理通貨発行体制」に移行しました。日本経済を世界恐慌から抜け出すため、高橋は日本においてケインズ以前に「ケインズ政策」を実施していたのです。

ところが同年、満州事変が勃発し、日本は戦争へと突入していきました。そこで高橋は、日本銀行引き受けによる国債発行への拡大予算政策といった、極端な金融政策を採るようになり、これを36年まで続けました。高橋財政は今の日本政府と、同じような財政政策と実施していたのです。

そんな「豊満な」財政政策はどう考えても長続きするはずも無く、急に緊縮財政に舵を切った時、戦争遂行をもくろんだ軍部の一部反乱軍によって暗殺されてしまいました。これは「2・6事件」と呼ばれ、「高橋財政」の終焉として余りにも有名な歴史的出来事です。



岡地勝二 プロフィル
関西大学経済学部卒業。在学中、ロータリークラブ奨学生としてジョージア大学に留学、ジョージア大学大学院にてM.A.修得。名古屋市立大学大学院博士課程単位終了後退学。フロリダ州立大学院博士課程卒業Ph.D.修得。京都大学経済学博士、龍谷大学経済学教授を経て現在、龍谷大学名誉教授。経済産業分析研究所主宰

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る