【今さら聞けない経済学】相場とは何か、外国為替相場は誰が、どこで決めるのか

今さら聞けない経済学

日本や世界の経済ニュースに登場する「?」な話題やキーワードを、丁寧に分かりやすく解説。
ずっと疑問だった出来事も、誰にも聞けなかった用語の意味も、スッキリ分かれば経済学がグンと身近に。
解説・文=岡地勝二(龍谷大学名誉教授)

第38回:相場とは何か、外国為替相場は誰が、どこで決めるのか

はじめに

「相場」という言葉は、意味が深いものです。英語では「rate」と言い、意味は割合、歩合、または値段という意味で用いられています。例えば「hotel rates」と言えば、ホテル料金のことを意味し、「at the great rate」は、高速で、という意味です。このように「rate」という単語はとても有用な言葉です。

日本語でも「相場」はいろいろな場面で使われており、「世間の相場では」や「学生アルバイトの相場では」などという言葉が会話の中で飛び交います。この「相場」という言葉は経済関係の分析でも頻繁に、それも重要な場面で使われることが多いです。株の相場(株式相場)も常日頃使われています。しかし、ニュースで目にするのは「為替相場」という言葉です。

そこで今回は、この「相場」の意味を考えてみたいと思います。そして「為替相場」という意味をしっかりと考えてみましょう。更に、外国為替相場は誰が、どこで、どのようにして決めているのか、についても考えてみます。

相場とは

相場とは、世間では、価格のことを指します。ある商品が取引される時、売りと買いの力関係で決まった値が「相場」となります。つまり、商品が取引される時の目安が相場ということです。時折、「相場師」という言葉を耳にします。これは株式の取引において、思いっきりたくさんの株式を買って株価を高めるような役割の人のことを言います。「あの人は相場師みたいだ」と言えば、人生一かばちかの大勝負に出る人のことを意味します。大学の教員にはこのような人はまずいません。

また、先物相場という言葉もあります。これはある商品を買い付ける時、その商品の価格を前もって決めておきます。例えば皆さんが口にする大豆は、今やほとんどが日本で採れず、主にアメリカで日本の総合商社が買い付けています。

その時、来年購入する大豆の価格を今年決めておくのです。そうすると、来年もし天候不順で大豆の生産が悪く価格が高騰したとしても、以前に決めた価格で購入できるのです。しかし、逆に天候がとても順調で豊作となり、一気に大豆の価格が下落したとしても、昨年決めた価格で購入しなければならないのです。

為替相場とは何か

さて、今回のテーマである為替相場について考えてみましょう。あなたが遠くのお店で何か買う際、まず銀行へ行って送金手続きをします。銀行は、あなたの「為」に、あなたに「替」わってお金を送ってくれます。これが「為替」です。為替とは、遠くへ送金する手段だということです。今、あなたが外国から何かを買ったとし、銀行へ行って送金を頼みます。その時、外国へ送金することになるので、それを「外国為替」というのです。

この外国為替を利用する時、外国通貨を購入することになります。そこで外国為替相場の登場です。今、世界の主たる通貨はドルなので外国為替相場とは、1ドル=何円、というドルの値段のことを言います。このドルの売買をしているのが銀行の窓口です。

そこで、こうした銀行を外国為替銀行とも言います。かつてはそれを専門にしていた銀行がありました。横浜正金銀行と言い、後に東京銀行となりました。しかし、外国為替の取り扱いを一般の銀行もするようになると、東京銀行専属の仕事ではなくなり、いつしか東京銀行も三菱銀行と合併、その後UFJ銀行とも合併し、三菱東京UFJ銀行となりました。最近では、三菱UFJ銀行と名前が変わってしまい、ついに由緒ある「東京」という名前も消えてしまいました。私は講義で「UFJとは何の略ですか」と質問するのですが、誰も由来を知らず、「United Finance of Japan」の略であり、三和銀行と東海銀行という銀行が合併してできた銀行である、と説明すると皆、驚きます。

さて、銀行はドルの取引をしているので、外国為替銀行とも呼ばれます。この外国為替の取引はとても大切です。例えば、A会社が外国から物を売った代金=米ドルが入ったとします。これはまず銀行に入れられ、ドルと円が交換されてA会社のもうけとして円が入る、という仕組みでお金の取引がされています。そして、あるB会社が石油を大量に産油国から買ったとします。B会社の取引銀行で手持ちのドルがなかった場合、その銀行はドルを多く持っている銀行を探さなければなりません。そこで銀行同士でドルの取引をすることになります。

このようにドルの取引をする銀行を外国為替銀行と言いますが、こうした銀行が多く集まった所で「外国為替市場」が形成されるのです。日本では東京にそうした銀行が集まっていますので、「東京外国為替市場」と言われています。世界で外国為替の取引が大きいのがニューヨークとロンドンですので、これらを2大外国為替市場と呼びます。かつて、日本経済が今以上に活気を持っていた時は東京も含まれており、世界3大外国為替市場と言われていましたが、今では東京の地位が下がってしまい、その地位をシンガポールに譲るような有り様です。

ニュースで外国為替相場は、「東京で幾ら」「ニューヨークでは幾ら」という言葉が目や耳に入りますが、このことを意味しているのです。もちろん、外国為替の取引はしっかりとした金融機関が必要です。更にそこで働く人びとは語学に優れていなければならないでしょう。

私は縁あって、韓国のKDI総合政策大学院と漢陽大学のMBAコースで客員教授として長期にわたって講義をしたことがありますが、韓国の大学院教育ではほぼ英語で話されている、という事情を直接この目で見て、驚きました。韓国の大学教育の現実に触れて、日本の大学教育の現状を顧みた時、これでは日本という国は世界から取り残されると実感しました。漢陽大学の大学院(MBAコース)には35人の先生方が教鞭を執っていましたが、驚くことにその内30人が欧米の大学院で博士号(PhD/Doctor of Philosophy)を取得していたのです。そして講義では英語を使っていました。

日本の大学で長く教えていますが、私はただの一度も英語で講義をしたことがありません。「先進国の中でも語学教育に一番遅れを取っているのが日本の大学教育だ」と言われていますが、外国の大学などで生活してみるとこのことが良く分かります。

日本の大学教育の抜本的な変革が必要かもしれません。この日豪プレスを読んでいる人たちは、主にオーストラリアで居を構えていることでしょう。オーストラリア滞在中に、特に若い人たちは英語をしっかりと身に付けておくことをぜひお薦めしたいと、生意気ですが申し上げたいと思います。英語力は身に付けたら誰にも引けを取らない「最高の財産」だと思います。

為替相場の決定

1ドル=何円、というのがドル相場や外国為替相場、と言われています。これは国際通貨であるアメリカ・ドルの値段なのです。何でも値段が決まる所は「市場」と言うのですが、ドルの値段も外国為替市場で、ドルに対する需要と供給の2つの力関係で決まるのです。もしドルの需要が大きいとドルの値段(ドル相場)が高まり、ドルへの需要が低くなるとドルの値段は低くなります。

もう少し具体的に考えましょう。例えば、石油を大量に買ったとするとドルでの支払いが必要になります。すると日本円でドルを大量に買うということになるのです。つまり、「円の供給・ドルの需要」ということが起こります。そこでドルに対する需要が一気に増大しドルの値段(ドル相場)が高くなり、「ドル高・円安」という状態になります。逆に、日本車が大量にアメリカで売れたとすると、アメリカからドルが日本車の生産会社の取引銀行に入るので、ドルを外国為替市場で売って円を買います。なぜなら、日本で賃金や関係会社への支払いは「円」で実行されるので円が必要なのです。そこで円とドルの売買がなされ、次のようなことが考えられます。

  1. (1)日本の輸出の増大→ドルでの受け取り増大→ドル供給・円の需要→ドル安・円高
  2. (2)日本の輸入の増大→ドルでの支払い増大→ドルの需要増大→ドル高・円安

このようにドルと円は、外国為替市場でドルと円とのやり取りによって決まってくるのです。

以前にも述べましたが、1949年に1ドル=360円と固定されました。つまり1ドルを買うのに360円もしました。ものすごいドル高・円安でもあったのです。円が安いということは日本製品はとても安く外国で売れていたので日本から、とりわけアメリカへ製品が大量に輸出され、日本はとても豊かになりました。逆にアメリカ製品が日本で売れずにいると、アメリカは怒り、「もう1ドル=360円なんて止めた」とニクソン米大統領が1971年8月15日に宣言したのです。これを「ニクソン・ショック」と言います。それ以来1ドルの値段は下がりっぱなし(円は上がりっぱなし)で今日まで来ました。

日本経済が何とか再浮上するためには、1ドルが100円付近のレートから150円、200円に向かって行って欲しいと思います。けれど、この相場は日本政府が勝手に決めれるようなものではありません。全て経済の為替相場決定メカニズムに従う他方法はないのです。


岡地勝二
関西大学経済学部卒業。在学中、ロータリークラブ奨学生としてジョージア大学に留学、ジョージア大学大学院にてM.A.修得。名古屋市立大学大学院博士課程単位終了後退学。フロリダ州立大学院博士課程卒業Ph.D.修得。京都大学経済学博士、龍谷大学経済学教授を経て現在、龍谷大学名誉教授。経済産業分析研究所主宰

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