第40回 フェイスブックにおけるユーザー投稿の広告該当性

教えて! オーストラリアの企業法務

第40回 フェイスブックにおけるユーザー投稿の広告該当性

ベーカー&マッケンジー法律事務所
パートナー弁護士 リチャード・ラスティグ(左)
シニア・アソシエイト エリザベス・タイスハースト(中)
シニア・アソシエイト 辻本哲郎(右)

Q 近年、さまざまな企業が、自社の製品やサービスを広告するために、フェイスブックなどのソーシャル・メディアにおいて自社ページを開設し、マーケティングのツールとして利用しているようです。当社としてもこのようなソーシャル・メディアを活用した広告を考えていますが、その特徴として、企業側とユーザー側からの双方向のコミュニケーションであることが挙げられ、実際にも多くの一般ユーザーが各企業のページに製品の感想などのコメントを投稿しているようです。当社としてもこれら「口コミ」的なユーザーの声を広告として活用していきたいと考えておりますが、これに関して留意すべき点があれば教えてください。

A 近時のオーストラリア広告基準局(Advertising Standards Bureau、以下「ASB」)の決定において、企業のフェイスブック上に掲載されたすべての投稿内容は、それが日常的なユーザーからの投稿であったとしても、企業の行う「広告」として取り扱われることが確認され、ページ開設者たる企業としては、当該内容がオーストラリア全国広告協会(Australian Association of National Advertiser、以下「AANA」)の定める倫理基準(Code ofEthics、以下「AANA Code」)に従ったものとなるよう統制する責任があると判断されました。

これにより、企業としては、一般ユーザーが投稿する内容についても、それが誤解を招くまたは欺もう的な内容となっていないかなど、広告規制上の観点からの管理を行わねばならず、その対応策を検討する必要があります。

1. オーストラリアにおける広告規制

ASBは、オーストラリア国内で実施される広告活動に関して規制権限を有する業界団体であり、企業によって発せられる広告内容について、AANA Codeに従った内容となることを要求しています。当該AANA Codeは各種規制を規定していますが、中でも「マーケティングまたは広告のためのコミュニケーション」に関して、以下のことを要求しています。


・ 誤解を招く、または欺もう的なものでないこと
・ 人種、民族、国籍または性別などの観点から、個人や特定のコミュニティーを差別したり、中傷するような人物描写や記述を行っていないこと
・ 商品やサービスに関連する一定の正当化事由がない限り、暴力的記述や描写を使用していないこと
・ 広告の受け手との関係で、過度に性的なものや裸体などを使用していないこと

以下2において記載する通り、ASBは、フェイスブック・ページ上における一般ユーザーからの投稿についても「マーケティングまたは広告のためのコミュニケーション」であると判断し、これらに対してもすべてAANA Codeが適用されることを明らかにしました。

2. フェイスブック・ページに投稿された内容の広告該当性

近時、ASBにおいて取り上げられた事件の中に、著名なアルコール飲料ブランドである「VB」(Victoria Bitterビール)および「Smirnoff」(ウォッカ・ブランド)の公式フェイスブック・ページ上に一般ユーザーから投稿されたコメントおよび写真に関連するものがありました。

これら2件の事件は、同ページ上に掲載された当該飲料の「ファン」であろうと思われるユーザーからの投稿が、過度に節度を欠いた無謀なアルコール摂取を促すものであると問題視され、提起されたものでした。問題となった具体的な記載内容としては、「もうこれで8本目だ!」「体中に染み渡るぜ!」といった内容の投稿が挙げられます。

ASBは、上記両ケースにおいて、ユーザーにより企業のフェイスブック上に投稿されたこれらの内容は、AANA Codeにいう「マーケティングまたは広告のためのコミュニケーション」に該当するとの判断を行い、当該内容は伝統的な広告方法(テレビ・コマーシャル、印刷広告、看板など)によるものと同様、AANA Codeに準拠した内容でなければならないと結論付けました。

これに対して、「VB」および「Smirnoff」は、このようなユーザー側から発信された内容まで広告として取り扱うことは、当該投稿内容に対する統制可能性を考慮した場合、「不当な法的負担」であり、また「商業的に非現実的である」との主張を行いましたが、ASBは、フェイスブックは広告者が合理的な監督権を行使しうる「マーケティングまたは広告のためのコミュニケーション」ツールであると判断しました。

3. 上記ASBの判断が与える影響

上記ASBの決定は、フェイスブックやそのほかツイッターなどのソーシャル・メディアにおける一般ユーザーからの投稿内容について、企業としてどのように、またどの程度管理すべきであるのかについて、さまざまな問題を提起する結果となりました(同問題は、自社ホームページやブログを開設する企業にとっても検討しなければならない課題であるといえます)。

通常、フェイスブックのページ開設者は、フェイスブックのポリシーに従い、暴力的内容、いじめ、性的描写、人種差別その他攻撃的コメントの記載を統制する責任を負います。しかしながら、本ASBの判断は、これらソーシャル・メディアを利用する企業やブランド・オーナーは、当該一般的なポリシーを超えた広告規制的な配慮からも、ユーザーが発する内容について、監視し統制する義務を負うということを示唆するものとなります。

フェイスブックなどのソーシャル・メディアにページを開設している企業やブランド・オーナーは、現在導入しているソーシャル・メディアに関する自社ポリシーが、ユーザーからの投稿内容を監督、統制するという観点からも、AANA Codeに適合するものとなっているのかどうか確認の上、対応策を検討する必要があります。

当該対応策としては、例えばこのような不適切な投稿がなされた際に自動的に削除する仕組みを導入するなどの方法が考えられ、実際にも、女性用のレジャー・ウエアの会社である「Lorna Jane」は、近時、複数のソーシャル・メディア・サイトに投稿されたコメントを集約し、一括して管理するためのソフトウエアを試験的に導入したと報じられています。

4. そのほか付随する問題

上記のように不適切なユーザー・コメントを即時に削除するという対応は、企業やブランド・オーナーが法的手続きに巻き込まれるリスクをある程度低減させるものとなりますが、これによって別の問題を発生させる可能性もあります。

例えば、ユーザーからの批判的コメントが速やかに削除されなかった場合や、何らの合理的説明なく削除されたような場合には、それが否定的な世間の関心を引き起こす可能性があります。

このような例としては、近時、小売業者の「Target」のフェイスブック・ページに、過剰にセクシーな女性用子ども服を販売することを中止する旨の批判的投稿がなされ、世間の大きな注目を集めた事件がありました。当該フェイスブックの投稿に対しては、4万4,000件以上の「like」の投稿と2,300以上のコメントが投稿され、当該記事の削除後もその批判は収まらず、「Target」が最終的に当初コメントに対する公式回答を発表した後においても、さらに800以上のコメントが投稿されるという事態が生じました。

このように、ソーシャル・メディアは企業やブランド・ネームを社会に認知させる上で非常に効果的なマーケティング・ツールであることが実証された一方で、当該伝播の容易性に伴うメリットはデメリットなしには考えられないものといえます。

広告目的でフェイスブックのページを開設している者は、上記のASBの判断に伴う影響を十分に考慮する必要があり、また、利用者としても、自らが投稿する内容がどのような影響を与えるものであるのかを十分留意する必要があります。


※本記事に関する意見・質問は下記まで。
リチャード・ラスティグ   Email: Richard.lustig@bakermckenzie.com
エリザベス・タイスハースト Email: Elizabeth.ticehurst@bakermckenzie.com
辻本哲郎       Email: Tetsuo.tsujimoto@bakermckenzie.com

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る