物件購入における調査と決済までの流れについて

何でも相談

Q 自宅を購入しようと考えています。不動産エージェントから弁護士を雇うようにといわれましたが弁護士に何をしてもらうのかよくわかりません。大まかな流れを含めて説明してください。
(32歳会社員=男性)

 

A 前回に続く回答となり、今回は主に物件調査と決済までの流れについて述べたいと思います。

近年まで売り主は物件の状態について保証する法的義務はなく、したがって物件に関する情報を買い主に開示する義務はありませんでした。この原則はラテン語の「Caveat Emptor」という言葉で表されるもので、英語では「Buyer Beware」、つまり購入する物件の状態を精査確認するのは買い主の責任であるとしたものです。現在は売り主の情報開示が一部法律で義務付けられてはいますが、それでも契約締結後に見つかった物件の欠陥については、たとえ買い主が申し立てやそれらを根拠に契約を破棄する法的権利を持っていたとしても、それらを行使することは現実には非常に困難であると言えます。そのために可能な限り契約締結以前に調査レポートなどを関連機関より入手し、十分に精査することが肝要です。

買い主は物件の購入価格に従って印紙税を収める義務があり、同印紙税は契約締結日より3カ月以内、決済以前に支払われる必要があります。しかしほとんどの場合決済は契約締結から6週間とされるので、実際には6週間の猶予しかないことになります。これに加えて、銀行などから融資を受ける場合は融資額に対しても印紙税を別途収める必要があります。ただし、この印紙税に対しては購入価格に対しての印紙税の税率よりはるかに低い税率が定められています。

決済とは売買契約が完了する時点のプロセスのことで、この時点で売り主は売却価格を受取り、買主は所有権を手にします。通常契約時に決済日が指定されますが、実際にはさまざまな理由で指定の日に決済が行われないことも珍しくありません。しかし、決済が遅れることで買い主のみが不利な状況に立たされることのないように売り主側と締結前に交渉しておくことが大切です。

弁護士などが法務遂行の依頼を受けている場合は、買い主自身が決済に立ち会う必要はありません。融資を受ける場合はローン提供者も決済に立ち会います。その場合、新たな権利書が発行されるために必要な売主からの書類一式はすべてローン提供者に渡されます。新しい権利書はローンが完済されるまでローン提供者が保管することになります。また、鍵は通常決済後に売り主のエージェントから入手します。

光熱サービス関係の名義変更は当事者同士で行いますが、カウンシルをはじめ、地方自治体などへの家主変更通知は弁護士などが行います。ローン提供者が存在する場合はそれらが行うことになります。

以上を住宅不動産購入の一般的な過程と注意事項の概略としますが、契約は千差万別であり、専門家のアドバイスを受けることが不可欠であることは言うまでもありません。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


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山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している。

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