物件購入における調査と決済までの流れについて

何でも相談

Q 自宅を購入しようと考えています。不動産エージェントから弁護士を雇うようにといわれましたが弁護士に何をしてもらうのかよくわかりません。大まかな流れを含めて説明してください。
(32歳会社員=男性)

 

A 3回目の今回はOff-the-Plan(オフ・ザ・プラン)での不動産購入に関してです。
 近年、多数の新築物件が建設されています。平均価格がさらに上昇し続けると思わせるような不動産ブームの中、不動産購入価格を現時点での価格で確定し、供給不足を意識して自分の住みたい地区での不動産を確保することは当然のことのようにさえ感じられます。新築物件を購入する際に得られる州政府からの資金援助、印紙税減額や免除も魅力的です。オフ・ザ・プランとは不動産が建設計画途上にある状態で購入することの通称です。「購入」するとは言っても目の前に存在しないものを購入する契約をするわけですので通常の不動産購入とは異なる点を認識する必要があります。以下は弁護士の視点からのいくつかの注意点です。

①適正価格であることを見極めるのが困難
 完成していない物件に価値を付けるわけですから販売価格が適正であるかどうかを判断するのは非常に困難です。比較対象となる近隣物件がない場合は特にそうでしょう。価格交渉をするにも交渉材料が乏しいわけですので言い値を受け入れざるを得ないことが多くなります。当然のことながら、不動産価格は上昇も下落もします。完成時の物件市場価格が契約価格よりも上がった場合は良いでしょうが、下がる場合も大いにあり得ることを認識する必要があります。

②融資が困難
 決済(引渡し)のための銀行融資確約を契約の時点で受けることは大変困難です。銀行は一般に、物件の鑑定評価ができる段階になるまで融資を確約せず、決済前に行う評価額を基準に融資査定を行いますので、決済前の評価額が契約時よりも下がった場合、決済時に必要な資金に不足が生じることもあります。また、例えば失職などの理由で決済前になって仮融資許可が撤回されることもあり得ます。

③契約金が長期間「塩漬け」になる
 契約の時点で購入価格の通常10パーセントを契約金として収めますが、引き渡しまでの長い期間この契約金が売主側で保管されることになります。場合によっては利息が付く口座で管理されることもありますが、一般的には契約金は「塩漬け」になります。これは売主側の都合で契約が解消され契約金の返金が受けられる場合でも、返金されるまでほかの物件に契約金を充てることができないことを意味します。さらに売主側が物件引渡し前に倒産した場合にはこの契約金が返金されないこともあり得るということです。

④仕上がりが契約時の計画と異なることがある
 売主側はさまざまな建築申請手続きを行う中で計画を変更せざるを得ないことも多くあります。そうした際、契約時と異なる仕上がりや仕様、さらには物件面積まで買主の承諾なく変更できると謳っている契約も多々あります。
 オフ・ザ・プランでの購入では契約する前に契約書を十分に精査し自分が「何を」「どのような条件で」買うのかを理解しておくことが何よりも重要です。また、売主となる開発業者、そして建設業者の評判を契約前に独自に調べておくことは行うべきことの1つでもあるでしょう。


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山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している。

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