障害を持つ子のために遺書の用意を考えています。注意点は?

何でも相談

Q 遺言書作成について質問です。私の子どもは障害を持っており、今18歳ですが今後もずっとケアが必要です。遺言を遺す時の注意点などを知りたいです。
(50歳主婦=女性)

A 過去にも遺言書について書きましたが、今回のテーマは考察が多岐に及ぶので3回にわたっての回答としたいと思います。

受益人の障害の有無に関わらず、遺言書の作成が大切であることは過去の記事でお伝えした通りです。遺言の内容は人それぞれ自分の境遇に合った遺言書を作成する必要があります。境遇に合っていない場合は、遺言書作成者の遺志とは裏腹に受益人が遺言の規定通り益を受けることが法的に不可能とされたり、裁判所による介入が起こり得ます。受益人となる子どもに障害がある場合には特に不測の事態や法的トラブルを未然に防ぐために、子どもの障害の性質や程度、付随して発生するニーズなどを考慮し個々の状況に即した遺言書を作成することが重要です。

遺言では受益人に遺す遺産の種類、あるいは各受益人に遺す遺産の金額や価値の決定は作成者の自由裁量です。受益人が障害者である場合はその者を優先して遺産を多く遺す決まりがあるわけではありません。従って、受益人となる子どもが複数の場合、障害を持つ子どもも含めての均等分配を遺言で規定する親もいれば、別の親は障害を持つ子どもを他の子どもが面倒を見るだろうと考え少ない遺産額を残すよう規定するかもしれません。また、障害がある子どもは他の子どもよりお金が必要だろうとして多くの遺産を障害を持つ子どもに遺す可能性もあります。

障害のある子どもへの遺産には、資産の必要度合いの検討もさることながら、本人の直接管理が可能かの判断も重要になります。知的障害の場合、程度により本人の直接管理が法的に認められないこともあります。遺言を遺した親はその子どもが直接管理できると考えても、遺言執行の際に執行人である子どもが執行不可能と判断すれば、遺言書で管財人の設定がされていないと裁判所に管財人の選任を求めることになります。実際、こうした場合の管財人は遺言執行人が選任を受けることが多く、執行人が子どもの1人であれば、兄弟姉妹間の不和や利害の不一致が発生することがありえます。他の子どもによる世話を期待して不均等な分配を規定した場合はどうでしょうか。遺言に「弟の面倒を見る」とした条件を付記しても、その条項は通常の遺言の書式では執行不可能なものと見なされるので、遺産の分配後は他の子どもの自発性の問題となるのは必至です。また、障害を持つ子どもにより多くの遺産を遺した場合には、他の子どもが不平等として遺言に異議を唱えることができる事実も忘れてはいけません。

次回は遺言上のトラスト規定についての説明を行います。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


日豪プレス何でも相談

 

山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

1998年NSW大学卒業(法学士・教養学士)。同年弁護士資格取得。1998年より数々の法律事務所での経験を重ねた後、「Yamamoto Attorneys」を設立、現在に至る

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る