障害を持つ子のために遺書の用意を考えています。注意点は?(2)

何でも相談

Q 遺言書作成について質問です。私の子どもは障害を持っており、今18歳ですが今後もずっとケアが必要です。遺言を遺す時の注意点などを知りたいです。
(50歳主婦=女性)

A 前回は、一般的な遺言書では必ずしも個々の状況に即さない場合があることについてお話ししました。2回目の今回は遺言書上のトラスト規定についてお伝えします。

「トラスト」とは、自分とは別の第3者の利益のために財産を保有したり運用したりするための仕組みを意味します。トラストの下、第3者のために財産を管理する個人または組織のことを「受託者」と呼びます。受託者は常に受益人の利益を優先し最大化するよう努める義務を持ちます。この仕組みが盛り込まれた遺言書は「遺言トラスト」と呼ばれ、未成年であったり知的障害があったりすることが理由で受益人に直接財産を遺贈することができない場合によく用いられる方法です。この方法により、複数の子どもの間で遺産を均等分配しつつ、その中の知的障害を持つ子どもにも必要な利益を十分に遺贈することが可能になります。遺言書には障害を持つ子どもの受ける遺産の使われ方が詳細に規定され、受託者はこの規定に従って障害のある子どもが受ける遺産の管理をすることになります。

遺言トラストを用いて障害のある子どもに遺す遺産の種類としては、現金やその他の形の資産を直接遺贈をするのはもちろんのこと、遺産を投資運用して得られる収入をその子どもに定期的に支払う形も取ることができます。更に、家族が所有する家に生涯居住する権利を与えるなどの変則的な規定を盛り込むことも可能です。その子どもの遺産取り分との相殺分として家賃の免除などが前提にあれば、公平かつ実用に即した規定であるかもしれません。

また、知的障害を持つ子どもに遺産を託す遺言には、その子ども自身の遺産分配のあり方についても規定しておくことが望ましいでしょう。そのような先のことまで網羅する遺言を作るためには、さまざまな状況を今のうちから想定しておくことが重要です。

遺言トラストの受託者は遺言執行人が兼任することが多く、また遺言執行人は一般的に受益人でもあることが多いため、受託者が他の兄弟姉妹であるという状況が多く発生します。一方で、例えば弁護士など全くの第3者が任命を受けるケースも多くみられます。しかし、財産管理は場合によっては大変煩雑なものとなり、長期間にわたることが予想されるので、受託者の任務を他の子どもに任せることが現実的かどうかを十分に考慮する必要があります。例を挙げるとすれば、遺言トラストに基づいて管理されている財産から収入が得られる場合、その収入は基本的に課税対象となります。この場合、財産管理の必要を継続的にするだけでなく、障害を持つ子どもの社会保障受給額やその種類を左右する可能性にもつながります。そこで、継続的な管理の必要な収入を得られる財産よりも、不動産や自動車などの資産を購入する方が良い場合も想定されます。こうした例からも分かるように、受託者に課される任務は決して簡単なものではありません。

次回は、受託者の性質についてより詳しく述べたいと思います。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


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山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

1998年NSW大学卒業(法学士・教養学士)。同年弁護士資格取得。1998年より数々の法律事務所での経験を重ねた後、「Yamamoto Attorneys」を設立、現在に至る

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