障害を持つ18歳の我が子のために遺書を残したい。注意点は?

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Q 遺言書作成について質問です。私の子どもは障害を持っており、今18歳ですが今後もずっとケアが必要です。遺言を遺す時の注意点などを知りたいです。
(50歳主婦=女性)

A 最終回の今回は、受託者の性質と選択の考察に関してお伝えします。

前回の遺言トラストの説明で述べた通り、遺言トラストの受託者は遺言執行人であり、また受益人の1人でもあるというケースが多く見られます。これは法的には全く問題ありませんが、障害のある子どものための遺言トラスト作成には、以下の事柄に着目して受託者の選任をすべきでしょう。

① その子どもの気持ちとニーズを理解する人格を備えているか
② 投資などの商行為に必要十分な知識を有しているか
③ 時間を長期間十分に割けるか
④ 利害の不一致がないか
⑤ 長期にわたる業務をこなすため、比較的年齢が若くそして健康であるか

この他にも着目すべき点はありますが、ここで挙げた内容は受託者選任をする上で全て不可欠な要素となります。

原則として、複数の子どもの内の障害の無い子ども1人だけを受託者として任命するのは避けたいことです。長期間の言執行になるため、受託者の病気や死亡により受託者が不在になる場合が起こりやすくなるからです。また、利害が相反する状況や不正行為が発生しやすくなるのも想像がつきます。遺言執行人は執行費用を裁判所に申し立てることもできるため、もしそうした権利を行使し他に牽制(けんせい)する者が存在しない状態では、受益人の最大利益の実現は危うくなるかもしれません。

このため、冒頭で挙げた要素を満たすことを条件として、受託者は障害を持つ子ども以外の兄弟姉妹全員を受託者として任命するか、弁護士や会計士などの第三者を加えることが望ましいと考えます。障害を持つ子どもが一人っ子である場合、おのずとそうした第三者が専任されることになりますが、弁護士や会計士などは同僚や同業者がビジネスを継承するため、例え専任を受けた者が途中で他界した場合でも執行業務が頓挫することは通常ありません。弁護士や会計士の他に、こうした受託業務を専門にしている団体への業務依頼も可能です。投資のプロであるため遺産の運用については安心です。一方で、こうした団体は一般に業務遂行費用が大変高額であるため、遺贈する遺産金額とのバランスを計る必要が出てきます。

受益者である兄弟姉妹だけが受託者である場合は、通常費用は大変安価で済みます。しかし、たとえ家族であっても長い期間にわたる執行をほぼ無報酬で実直にこなせるかどうかは現実的な問題として考えたほうが良いでしょう。これは私見ですが、受託者の少なくとも1人は弁護士を任命することが望ましいと考えます。それは、弁護士は常に倫理的な行動が社会から期待されているからです。弁護士は高い倫理意識を持つことが資格保持の条件とされる唯一の職業であり、不適切な行動や非倫理的な行動があった場合その資格が取り上げられる恐れがあります。そうしたことから牽制役としては弁護士が最も適任であると考えるわけです。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


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山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

1998年NSW大学卒業(法学士・教養学士)。同年弁護士資格取得。1998年より数々の法律事務所での経験を重ねた後、「Yamamoto Attorneys」を設立、現在に至る

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。

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