ビジネス開始前に登録する「ビジネス・ネーム(屋号)」とは何ですか①

何でも相談

Q オーストラリア人の友人とビジネスを始めようと思っています。オーストラリアでは、会社を設立しなくてもビジネス・ネームを取るだけで営業できると知人から聞きましたが、このビジネス・ネームとは何ですか。また、ビジネスを始める際にディレクターとして気を付けなくてはならないことは何でしょうか。
(50歳会社員=男性)

A この質問への回答は、かなりの情報量となりますので、2回に分けてお答えしたいと思います。

まず、ビジネス・ネームのことから説明します。ビジネス・ネームとはいわゆる屋号のことで、個人名または会社名をそのまま屋号として使用する場合を除いて、ビジネスを行う場合には必ず登録する必要があります。

この屋号は現在「The Australian Securities and Investments Commission(ASIC)」が管理しています。まず11桁の「Australian Business Number(以下、ABN)」を取得した後、ビジネス・ネームを登録します。ABNを登録する際に現在費用は掛かりません。しかし、ビジネス・ネーム登録料は現在1年35ドル、または3年で82ドルとなっており、登録したビジネス・ネームを使い続ける限りこの登録料を払う義務があります。

ビジネスを始めようと思っている方は、会社と屋号は全く意義も性質も異なるものということを認識する必要があります。屋号はあくまでも名称のみであって、屋号が登録されたからといって法人格が与えられるわけではありません。また、屋号が登録されたからといって、申請者に知的所有権が発生するわけではなく、また有限責任のメリットが与えられるわけでもありません。従って(会社を設立する代わりに)屋号そのものを主体としてビジネスを行うことはできません。

ビジネスを行う際には、会社形態にすることが必ずしも最良の方法であるとは限りません。法人(会社)を主体として行う場合、自然人(個人)が主体となって行う場合、パートナーシップ、トラストなどいろいろな方法があります。どの方法を選択するかは、ビジネスの性質、有限責任の必要性、税法上のメリットなどさまざまな要素に応じて異なります。よって「会社を設立しなくとも」個人が主体となってビジネスを行うことはあり得ることです。

例えば、「Kotaro Suzuki」をそのまま屋号として用いる場合には登録の必要はありませんが「Kotaro Suzuki Cafe」の場合には登録の必要があるということです。

その登録の際に、類似した屋号が既に登録されている場合や、政府機関、英国王室を連想させるような屋号の申請は却下されます。他にも登録できない言葉があり、例えば ”Limited” “Trust” “University”なども紛らわしい屋号として登録不可とされます。登録希望の屋号が登録可能かどうかは「Australian Business Register」のウェブサイト (abr.gov.au) で事前に調査することができます。

このように他と類似した屋号が登録されることは未然に防がれるシステムになってはいますが、登録されたからといって、類似を主張する個人、あるいは他団体が公正取引法などの下で訴訟提起することを阻止することはできません。また、たとえ屋号そのものが類似していなくても、他のビジネスとの関連を連想させる屋号が使用された場合にも損害賠償請求の対象と成り得ますので、屋号を選ぶときは心しておきましょう。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


日豪プレス何でも相談

山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

1998年NSW大学卒業(法学士・教養学士)。同年弁護士資格取得。1998年より数々の法律事務所での経験を重ねた後、「Yamamoto Attorneys」を設立、現在に至る

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る