ビジネス開始前に登録する「ビジネス・ネーム(屋号)」とは何ですか②

法律

Q

オーストラリア人の友人とビジネスを始めようと思っています。オーストラリアでは、会社を設立しなくてもビジネス・ネームを取るだけで営業できると知人から聞きましたが、このビジネス・ネームとは何ですか。また、ビジネスを始める際にディレクターとして気を付けなくてはならないことは何でしょうか。(50歳会社員=男性)

A

前回に続く回答となり、今回は主にディレクター(取締役員)として気を付けなくてはいけないことについて述べたいと思います。

まずオーストラリアでは主に3つの法形態に基づいてディレクターの法的責任・義務が成立されています。いわゆる一般法(General Law)、会社法令(Legislation)、そして会社定款(Company Constitution)です。

その主な概要として、ディレクターは①誠実に会社の目的に沿った務めを果たすこと、②会社と個人の利益を混同しないこと、③会社が経営不能状態になった場合直ちに業務を停止すること、④会社が清算される時は破産管理人に自分の把握している情報を全て開示すること、などが挙げられます。

またディレクターは会社の責任者として会社経営の義務も果たさなくてはいけません。これらは主に、1)会社の住所やディレクターの個人情報を「The Australian Securities and Investments Commission(ASIC)」に通知すること、2)会社の財政状況・出納(すいとう)記録を正確に管理すること、3)会社の詳細の変更やディレクターの異動があればASICに知らせること、4)ASICの費用を滞りなく支払うこと、などが挙げられます。

前回触れた通り、会社(法人)は一個人(自然人)と同じ権利を有しており、会社は個人と同様に、契約を交わしたり、資産を売買したり、お金を借り入れたりすることが可能です。しかし、ディレクターは会社の資産を個人の所有物として処理することは禁じられています。従って、原則的にディレクターが個人として会社の負債を負うことはありませんが、原則の対象外である場合は次の4つです。

  1. 1. 会社が破産した
    会社が支払い不能になった後に蓄積された会社の負債は、ディレクターが個人的に責任を負う可能性があります。
  2. 2. 会社の保証人になった
    例えば、ディレクターが会社の契約の保証人になり、その後会社が契約を履行できなくなった場合にはその履行責任はディレクターが個人的に負うことになります。
  3. 3. 会社が違法行為を行った
    例えば会社が資産の出所を隠す、贈賄する、横領や着服する、税金をごまかす、などという行為をした場合にはディレクターが個人的にその責任を負うことになります。
  4. 4. 給料やスーパーアニュエーションが払えない
    この支払いが滞ると「Australian Tax Office (ATO)」からディレクターに「Penalty Notice」が発行され、これに対する支払い義務が生じてきます。

これらから分かるように、ディレクターは状況に応じてさまざまな罰則などの対象になります。また他のディレクターが取った行為の連帯責任や刑事責任を負うこともあります。更に、他のディレクターに経営を任せていた場合、会社が前記の4つの状況に陥った後で役職を辞任したとしても、これらの罰則から逃れることはほぼ不可能です。そのため、ビジネスを始める際にはディレクターにはどんなリスクと法的責任・義務が伴うのか、また一緒に経営する人についても入念に精査することが重要です。

なお、本記事は法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

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山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

1998年NSW大学卒業(法学士・教養学士)。同年弁護士資格取得。1998年より数々の法律事務所での経験を重ねた後、「Yamamoto Attorneys」を設立、現在に至る

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