without prejudiceとは

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Q: 別居中の妻の弁護士から財産分与に関する内容の手紙が送られてきました。自分はまだ弁護士を依頼するかどうかは思案中なのですが、オーストラリア人の友人から「もし自分で交渉するなら“without prejudice”ベースで交渉しないといけない」と言われました。これはいったいどういう意味なのでしょうか。

(45歳会社員=男性)

A: 口頭、あるいは文書での陳述がwithout prejudiceと言及された場合、その陳述には免責特権が与えられ、後の訴訟において証拠として提出されることが拒否される対象となります。これは家族法案件の交渉ではたいへん重要なことです。なぜでしょうか。

先方との交渉中、ある事柄について承認を行ったり陳述を行ったりすることがあります。また、先方の要求に合意する意思があることを表明することもあります。これらの承認、陳述、意思表明などがwithout prejudiceベースで行われておらず、交渉が不成立に終わり、訴訟に発展した場合には、これらがすべて法廷で証拠として提出され、こちら側に不利に働く可能性があります。例え、後になって、弁護士のアドバイスなどに基づいて自分の法的立場を把握し、考えを変えたとしても、過去の陳述に免責特権がなければ、「この文書にある通り、以前、夫は90%の財産を私に譲渡する合意をしました」と法廷で証言される可能性があるわけです。

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コモン・ロー上に古くに発生し、発展してきたこの原則は、今では制定法に織り込まれています。Ev idence Act(NSW)第131条は「示談・和解交渉の際に用意された文書や行われたコミュニケーションは原則として証拠・証言拒否の対象となる」と規定しています。

ただし、without prejudiceの言葉に絶対的な威力がないということは特筆すべきで、例えどのような言葉が用いられようと、双方の当事者に「誠実に示談・和解交渉を試みる意図」があった上での文書やコミュニケーションでなければ免責特権の限りではありません。この「意図」が法廷で常に争議の対象となることは言うまでもなく、こと家族法の案件では、和解を意図した「コミュニケーション」であるのか、単にののしり合いであるのか、客観的に判断しにくいことが問題になります。したがって、例えその言葉自体に絶対的権威はなくとも、without prejudiceの言葉が付け加えられると、少なくともその文書作成者の「和解の意図」が客観的になるため便利であるというわけです。

ただ、用心のために自分の文書すべてにwithout prejudiceの言葉を付けてしまうと、後になって提出が必要な自分の証拠まで拒否されることにもつながりますので、濫用は禁物です。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

 


 

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山本(青木)智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメン バーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している

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