ハーグ条約

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Q: 日本がハーグ条約に加盟する、しないというニュースを最近よく耳にしますが、どうしてそんなに取りざたされるのか。そして加盟したらどういうことになるのか、法的な観点から教えてください。

(50歳男性=会社員)

A: まさにそのハーグ条約への加盟が5月22日参院本会議で全会一致で可決、国会で承認されました。筆者がニュースで知る限り(本稿執筆は5月末)、国内手続きを規定する実施法案も今国会で成立する見通しであるようです。正式加盟は、あるニュースでは年度内、ほかのニュースでは来年3月ごろと言われていました。

条約の正式名称は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(The Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction)」です。16歳未満の子どもがその定住国から一方的に他国に連れ出された場合、その他国側が定住国に子を送り返す義務を負うというのがこの条約の趣旨です。

現在84カ国がこの条約の締約国で、主要8カ国(G8)内では日本だけが非加盟のままです。つまり日本に一方的に子どもが連れ帰られた場合でも非加盟国である限り日本側は定住国からの返還要請に応じる必要がないということです。国際結婚増加に伴い、日本人による一方的な子どもの連れ去りが年々増えている中、他国からの加盟への日本に対する圧力も同時に高まり、最近では米下院と仏上院で日本に加盟を求める決議までが採択されていました。

日本加盟に対する慎重派の理由は、主に家庭内暴力被害を訴えるケースを中心にした「邦人保護」であり、また、定住国で養育に関する取り決めをめぐる裁判になった場合の裁判費用や言葉の障害、そして人種差別意識などに対する懸念でした。しかし非加盟であるという事実は、日本が逆に定住国であり、子どもが日本国外に一方的に連れ出された場合には子の奪還を求める日本人には公的な仕組みを使って争いを解決する術がないということでもあるのです。

実際に筆者が近年担当した数件の案件は、まさに日本で生まれ育った子が日本人の母親側の承諾なしに(あるいは騙されて)オーストラリアに連れ出されたケースで、日本側からは成す術がなく、オーストラリアでの裁判に参加することを余儀なくされたというものでした。日本がハーグ条約の加盟国ではないために、当該子は裁判が終了するまで(1年から1年半もの間)出国禁止命令の対象となりました(オーストラリアからの返還命令に応じる必要がない日本に連れ帰られることを水際で防ぐためです)。

観光ビザ以外に現実的に取得できるビザがないため、1人の母親は就労資格の与えられない観光ビザで12カ月以上滞在することになり、ある母親は継続的にオーストラリアに滞在することができなかったため、裁判出席とオーストラリアに「軟禁」されている子に会うために日本とオーストラリアを何度も行き来することになりました。

実際にこのようなケースを担当した筆者の私見としては、今回の日本のハーグ条約の加盟は歓迎できることであると考えています。加盟慎重派主流意見である「家庭内暴力被害からの保護」については、オーストラリアに関しては国内のDV関連法と被害者保護規定や施設はたいへん充実したものであり、それらに対する的確な情報をタイムリーに得ることができさえすれば、国内保護は十分に得られるはずであると思っています。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

 


 

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山本(青木)智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys
 

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメン バーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している

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