男性が子どもを認知しない…

Q 付き合っていた男性との間で妊娠したのですが、相手は自分が父親であることを認めません。相手に認知させるにはDNA検査を受けさせるしかないのでしょうか?
(28歳会社員=女性)

 

A 関連法令の1つ「連邦家族法」(Family Law Act 1975)は、以下の状況のいずれかに該当する場合、その男性は生まれた子の父親であると推定します。

 
(1)婚姻関係にある女性に子が生まれた場合:第69P条
(2)内縁関係の女性に子が生まれた場合(破綻後20週以内で出産した場合も含む):第69Q条
(3)出生証明書にその男性の名前が父親として記載されている場合:第69R条
(4)その男性が父親であることが裁判所で決定された場合:第69S条
(5)男性が連邦あるいは州法などの規定に従い法定宣言書(Statutory Declaration)を用いて父親であることを宣言し、その宣言が撤回されていない場合:第69T条

また、同様の推定は同じく連邦法である「養育費に関する法令」(Child Support Assessment Act 1989)やNSW州制定法の「子の身分に関する法令」(Status of Children Act 1996)などにも設けられています。

上記の状況いずれかに該当し、裁判所によってその男性が父親ではないと決定されない限り、その男性は父親であると見なされます。要するに、子の父親が誰であるかの決定は、あくまでもその男性の意思表示に依存されるということで、男性が父親であることを否定しない限り、(科学的根拠には依存せずに)その子の父親として見なされるということです。

父性が審理される裁判では、男性が父親であることを立証する責任は母親側に生じます。そうした場合の立証方法としては、(A)その男性が父性を認める供述をした事実の提示、(B)養育費の支払い事実や、または支払いを行うことを約束した事実、などが一般的です。加えて、質問者の場合は、内縁関係の状況を説明し、その男性以外との関係が出産前44週間存在しなかった(第69Q条規定)ことの裏付けが必要になるでしょう。

子の出生登録は生後60日以内に行われなければなりません。男性自らが父親であることを認めない場合には、母親の主張だけで父親の名前を記載させることはできません。また、母親の名前だけで出生登録はできますが、その場合には当局に対して父親の名前を記載できない事情を説明する必要があります。

DNA検査などの父性検査は、両当事者の合意がなければ行うことはできません。また、たとえ科学的に父性を確定する検査結果が得られたとしても、その結果だけでは不充分です。つまり、ある男性が子の出生登録に父親としての記載を拒否している場合は、DNA検査結果を当局に提出してもその男性を父親として記載させることはできないということです。そうした場合にはDNA検査を証拠に父性を認めさせる裁判を行った上で、上述の(2)第69S条の裁判所確定命令を得る必要が出てきます。

相手がそもそもDNA検査を拒否している場合には、DNA検査を受ける裁判所命令を取得することになります。ちなみにそうした裁判では、相手の拒否そのものが自分が父親であることを認識していることの現れであると主張することは認められており、検査の結果、父親であることが確定した場合は裁判費用を相手に請求することも可能となるでしょう。


山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys
NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している。

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