同棲中の彼が車のローン契約を要求してきます。応じていいですか。

Q オーストラリア人男性と同棲して1年近くになります。現在彼が車の購入を考えていますが、彼の収入だけではローンがおりないため、私もローン契約書にサインしてほしいと言われました。自分が車を買えば私も恩恵を受けるのだからと彼から言われれば確かにそうだとも思うし、また、私がサインするのを拒んだために彼との関係が壊れてしまうのも嫌なので、サインをしてもいいかなと思っているのですが…。
(25歳学生=女性)

 

A 単刀直入に申し上げますと、回答はNoです。もしどうしても、という場合は、少なくともサインをする前に事情を完全に把握することが肝心です。サインをしてしまえばこの方は、彼と共同借主(co-borrower)になり、自分の名義でもないものに対して借金の返済義務を負うことになります。しかも両者それぞれが半額ずつではなく、借り入れ額全額に対して返済義務を負いますので、もし何らかの理由で彼が返済不能に陥った場合はこの方が残りの借金を完済しなければなりません。

もちろん、購入した車を売却してローンが完済できるという場合はさほど大きな問題ではないかもしれませんが、(特に車の場合は)そうでないことの方が多いのが現実です。極端なケースとしては、2人の関係にいつしか破局がきて、「すべて」を忘れたい彼が車とともに去って行ってしまったら…。その時、彼女に残されるのは彼を失った喪失感と借金の取り立てのみ。それこそ悲劇以外の何ものでもないでしょう。

実はこうしたケースは非常に多く、一般的に恋人間や夫婦間でよく見られるという事実から“Sexually Transmitted Disease(性感染症)”ならぬ、“Sexually Transmitted Debt(性感染借金)”などと呼ばれています。相手との関係が壊れるのを恐れるばかりにサインしてしまったという場合や、最も信頼を置いている人物の言うことなので疑問さえ抱かなかったという場合など、理由はいたって単純なことが多いようです。

例えそれが夫婦であっても、配偶者だからといって他方の配偶者の借金に対して共同借主や保証人(guarantor)になる法的義務はありません。共同借主として、あるいは保証人としてサインするということは、ローン契約をする人のサインの立会人になるのでもなく、また「ただの形式的なもの」でもなく、他人の借金に対しての法的責任を自分が負うことを認めるものであることを認識するべきです。その認識のもと、もし元の借主が何らかの理由で(例えば失職、疾病など)返済不能になった場合、果たして自分が代わりに返済することができるか、もし自分が返済できない場合には自分の身に何が起こり得るのかなどと自問自答する必要があります。これらの質問に答えられない場合はサインすべきではないでしょう。

ただし、いったん共同借主や保証人としてのサインがなされたものであっても、場合によっては無効と主張することが可能な場合もあります。例えばサインを強要されたり、全く事情の説明を受けないままサインしたりした場合などがそれに当たります。しかし、こうした法的手段を講じて成功することは稀であると考えるべきで、まずは自己防御に万全を期すことが得策であると言えるでしょう。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys
NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している。

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