Pre-nuptial agreemen(婚前合意書)とは

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Q: オーストラリア人と結婚する予定ですが、彼が最近、結婚する前にPre-nuptialagreement(婚前合意書)にサインをしてくれと言い出しました。結婚式まであと10日ほどしかなく、これまでそんな話は1度もなかったし、考えるのに時間がなさすぎると反論すると、サインをしないと結婚しないと言い出しました。サインをするしかないのでしょうか

(28歳女性=会社員)

A: 一般的な呼称であるPre-nuptial agreementはオーストラリアの家族法上ではFinancial Agreementと呼ばれるものの1つであり、離婚や別離に際して分配の対象となり得る財産を対象外として隔離させることを目的とした婚前合意書のことです。有名スターなどの結婚や離婚劇が報道される際に耳にすることも少なくないのではないでしょうか。

一般的な人々の婚姻の際にもカップルがそれぞれ所有する財産(不動産、ビジネス、生前贈与や遺産など)の価値に大きな差がある場合には、離婚・別離時の財産分与から自分の財産を守るための合理的手段として価値を認める人が多くいるのは事実で、また合意書があることで離婚・別離の際の財産分与交渉が比較的簡単になることがあるのも事実です。

ただし、婚前合意書に関わる法律上の規定はたいへん厳格なもので、規定に沿って正しく作成されていない合意書は無効となる場合があります。したがって合意書作成を希望する場合には関連分野において専門的知識を持つ弁護士に依頼することが不可欠となります。

さらに、例え合意書自体が法律規定に従って作成されていても無効とされる場合があります。このような場合の原因としては、予測不能であった境遇変化、また重要情報の非開示や、片方の脅しが作成時に存在したことなどが挙げられます。

3つ目の点に関して次のような判例があります。自国からフィアンセ・ビザでオーストラリアに入国した女性に、夫となる男性が婚前合意書の作成を迫りました。その時点では結婚式を5日後に控えており、さらにその男性との間で女性が妊娠していることも明らかになっていました。女性は合意書にサインさせられることに強く反論し、抵抗しましたが、男性から「サインしなければ結婚しない」と言われ、結局サインをしました。後に起こった財産分与訴訟で裁判所は、この婚前合意書が脅しにより作成されたものであり、ゆえに無効であるとしました。

この判例から、差がある力関係が存在する中、非力な方の当事者が不当に圧力をかけられる状況で署名をするに至った婚前合意書は無効となることが明らかになりました。この判例を鑑みて、ご質問者の状況がこうした「不当に圧力をかけられる状況」に相当するか否かはいただいた状況説明だけでは定かではありません。また、上述のケースでは女性が妊娠していた事実が裁判所の判断に大きなインパクトを与えたことと思います。サインをしなければ自国に戻り、父親なしで子どもを育てることになると女性が考えたであろうことは容易に想像がつき、さらに至極妥当な考えであると認められたものと思います。


ご質問者はただちに専門家のアドバイスを仰ぐことをお勧めします。もし既に合意書草案がしたためられているのであれば、草案者とは異なる弁護士からの具体的な見解を求めることが必要です。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

 


 

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山本(青木)智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメン バーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している

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