疎遠になった実子(娘)の子(孫)にもっと会いたい…。方策は?

Q シドニー在住35年の日本人夫婦です。我々の娘がオーストラリア人と結婚し、オーストラリアで生まれた孫は現在4歳です。娘はもともと我々と意見の食い違いが多く口論が多かったのですが、子どもが生まれてからますます疎遠になり、過去2年ほど孫と会わせてもらえない状態が続いています。せっかく祖父母がオーストラリアにいるわけですし、我々もいつまで元気でいるか分かりませんのでもっと孫と時間を過ごしたいと思います。娘に対して法的措置を採ることはできるのでしょうか。
(71歳主婦=女性)

 

A 子の養育に関する命令(Parenting Orders)に関する家族法(The Family Law Act 1975)の規定は2006年に改正を受け、子の祖父母との関わりの重要性が以前より認識されるものとなっています。その改正法令、「The Family Law Amendment(Share Parental Responsibility) Act 2006」(以下、「同法」)の第65C条では、子の養育に関する命令の申し立てを行うことができるのは、(a)子の親、(b)子自身、(ba)祖父母、(c)子の健全な発育に重要な関わりを持つ人物誰でも、と規定しています。さらに、同法60B(2)(b)条では「子は両親、そしてそのほかの重要な影響を与える人物(例えば祖父母やその他親類)と頻繁に接する権利を持つ」と規定されています。

この通り現行の家族法は、子の健全な発育には祖父母の役割や存在も重要であるとした認識を社会に植え付けることを意図したものとなっており、子が自身の家族背景や人種背景、そしてその民族的文化を知ることは子の権利であることも改めて認めるものとなっています。

ただし、子の養育に関する命令の申し立てにおいて、子が誰と、そしてどのような頻度で接触するかについての決定を裁判所が下す際、それが“the child’s best interests”、つまり「子自身にとっての最善策」であるかどうかが常に最終的な決定要素となることは変わりありません。つまり、今件に当てはめると、お孫さんがご質問者と接するようになることで、その子自身(祖父母ではなく)の受けるメリットが増えるかどうかに焦点が当てられるというわけです。

ご質問者とお嬢さんの関係、子の現在の家庭環境や家族関係を鑑みた上で、お孫さんがこの先祖父母と接することが現在の平穏を乱したり、子の両親との関係悪化につながったりすると考えられる場合には、ご質問者の申し立ては認められない可能性があると考えます。

このことは2006年改正後のいくつかの判例で示された裁判所の姿勢であり、08年のある判例では、子の現在の生活と後の人生において祖父母の存在がたいへん重要であるという事実は認めながらも、「子が祖父母と接することでその子の親が極度の精神的苦痛を受ける事実は、その子の親との関係が阻害されることであり、結果的にその子の利益が最大化されることにはならない」との見解を示しました。この見解はつまり、子がその親から妥当に養育を施されている限り祖父母は親より優位に立つことはない、ということを示しているものでもあります。

ご質問者への回答としては、弁護士のアドバイスが必要であるということを申し上げます。過去と現在の状況を具体的に示した上で、求める命令内容が認められ得るものであるかについて十分に協議した上で措置を講じる必要があるでしょう。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


日豪プレス何でも相談

 

山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る