ワーク・エクスペリエンスやインターンシップの制度について

Q ワーク・エクスペリエンスやインターンシップという言葉がありますが、本人が希望すれば無給で雇用しても良いのですか? また、その期間はいつまででもよいのですか? 最近私の経営する店にタダでいいから仕事を習わせてくれという人が多々訪れてくるので正しい対応が知りたいです。
(40歳会社経営=男性)

 

A 単刀直入にお答えすると、相手が誰であろうと、何歳であろうと、仕事を対価なしで(無給で)強制することはできませんが、タダでいいから仕事を習わせてくれと言っている相手を拒む義務もありません。ただし、「習う」ということはあくまでもオブザーブ(見習い)するということであるという程度に考えるべきであると思います。その関係が客観的に、終身的あるいは一時的なものも含め「雇用関係」であると思われるようであれば法的な問題が生じることが考えられます。その「見習い」の一環の仕事内容がそのビジネスの利潤を高めるようなものであればもちろんのこと、関係が長期になればなるほど「雇用関係」であるとの見方が有力になってくることでしょう。そうした状況においては、その「見習い生」は雇用関係を主張し、妥当な賃金の支払いに加えて法的権利(年次休暇やスーパー・アニュエーションなど)を要求することも可能になり、また、雇用関係の成立が認められた場合には、簡単にはその仕事を辞めさせられなくなってしまうことも大いにあり得ます。

ただし、大学などの教育機関のコースの中には実地訓練が単位や履修必須科目として含まれているようなものがあり、そうした要件を持つ学生に対して一定の期間、職場で訓練を受けさせることは、たとえ利潤を高めるような仕事を実際にさせるものであっても正式雇用としてみなされず、しかもその一定期間は無給で良いとした規定が関連法律で与えられています。同法律上でそうした実地訓練は「Vocational Placements」と言われています。そうした状況が当てはまる場合、雇用主側は関連政府機関からの承認を事前に受けている必要があり、また、そうした訓練の開始前に当事者間での契約書が交わされることになります。このようなフォーマルな訓練の規定が当てはまらないような場合には、冒頭のとおり、個人間の合意のもと無給での実地訓練が提供されることは必ずしも違法ではありませんが、法的に雇用関係が成立しない状況においてのみ可能であるということを繰り返します。見習い生からいきなり賃金の支払いや法的権利の要求を受けたり、または関連政府機関を通じて法的クレームが起こされたりするリスクを負うのはビジネス・オーナーであるということを意識して対処することが必要です。個人間の同意の下実地訓練を行う予定があるときには、事前に法律アドバイスを受けることをお勧めします。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。


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山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

 

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメンバーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している。

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