身近な法律問題/委任状による事前指示について

もっと知りたい!身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第4回:委任状による事前指示について

「何かあった時に無いと残された家族が困ってしまう」のが遺言状ですが、遺言状の作成時に併せてお勧めしたいのが、Enduring Power of Attorney(EPA)と呼ばれる事前指示に関する委任状の作成です。

日本ではあまり聞きなれないシステムですが、EPAとは事故や病気で植物状態になってしまったり、認知症になってしまった場合、すなわち、委任者本人が意思決定することが出来なくなった場合に効力が発生するよう定めておくことが出来る委任状のことを言います。

例えば、あなたが交通事故に遭ってしまい、意識不明になってしまった場合、どのような治療を施すのか、医療費やその他諸々の支払いはどうするのか、支払いに際してあなたが保有している銀行口座などにアクセス出来るのか、そして、何よりも誰が決定することが出来るのか、などの状況を取り決めておくことが可能です。

遺言書は作成者の方が亡くなった時点で初めて効力を発揮する文書ですが、存命中にこういった「不測の出来事」が起こってしまい、高額治療費などに自身の財産からの支払いが必要とされる場合であっても、もし、その時自身の判断能力が失われてしまっていれば、財産の処理が出来ないことになってしまいます。

例え、遺言書では唯一の受益人と定めていたお子様であっても、EPAが無ければ、親名義の不動産を処理する契約書に代理署名することは出来ません。このような事態に備えてEPAを作成しておくことによって、あなたの意識が戻るまでの間に発生するさまざまな取り決めをあなたが指定する代理人に委託しておくことが出来るのです。

もしEPAがない場合には、例え家族といえども裁判所の審理が必要となりますので、残されたご家族達に時間と経済的負担を強いることを未然に防ぐことが出来ますし、また、運営しているビジネスが決済できずに休業状態になってしまったり、税金や公共料金などの支払いなどが滞ってしまわないように準備しておくことが出来ます。

また、EPAの効果は遺言状と同様で無期限ですから、遺言状を作成される際には併せて作成(※)されておくことをお勧めします。

※英文を理解されない場合、EPAが有効と認められるには有資格者による通訳か翻訳が必要となります。


弁護士:神林佳吾(神林佳吾法律事務所代表)
1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後10年以上にわたって訴訟を中心に応対

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