元配偶者に対する扶養料(Spousal Maintenance) - 身近な法律問題

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法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第8回:元配偶者に対する扶養料(Spousal Maintenance)について

オーストラリアの離婚時における請求は大きく分けて、養育、財産分与、そして元配偶者に対する扶養料(Spousal Maintenance)の3つが挙げられます。このSpousal Maintenanceと類似したシステムは日本にはありませんので、ほとんどの日本人の方はご存知ないかもしれません。

オーストラリアでは離婚した後でも元配偶者(元妻・元夫)に対して扶養料を払わなければならない場合があります。扶養料とは養育費や財産分与とは別に、元配偶者が離婚後に極端な生活水準の低下を余儀なくされてしまわないように配慮されたものであり、通常は元夫と元妻の収入に極端な差の開きがある場合に適用されます。

私の経験上からよくある例として、専業主婦のように長年にわたって家庭を守ってきた方が離婚後に社会で自立をしようと思っても、離婚前のような生活水準を維持できる職を見つけることは容易ではありません。

その一方で、ご主人は妻が子育てや家庭を守ってきてくれたおかげで社会的地位を築き上げることができ、その結果、離婚後も継続して離婚前と同等の収入を得ることができる場合があります。この場合、元夫が継続して離婚前と同等の収入を得ることができるのは、元妻による長年の内助の功に助けられたところが大きく、元妻のサポート無しには現在の地位、経験やノウハウなどの社会的基盤を築くことはできなかったわけですから、元夫は離婚後も元妻に対して扶養料を支払うのが妥当であると考えられます。

扶養料の金額はケース・バイ・ケースで考慮されますが、最初に扶養料を受ける側の収入・支出・資産・負債が考慮され、その上で、元配偶者の互いの年齢と健康状態、夫婦関係の期間、収入と資産規模、雇用に際しての身体的・精神的な適正値、経済的援助の必要性、離婚前と現在における生活水準の差などが判断材料となり、原則として、裁判所は公正を期すにあたって必要だと思慮できる内容はすべて加味した上で判断を行います。

なお、扶養料の支払い期間中に受領側が再婚をした場合ですが、その再婚による経済状況の変化次第でSpousal Maintenanceの支払い義務が喪失する場合があります。同様に元妻・元夫いずれかの経済状況に大きな変化があった場合にはSpousal Maintenanceの支払いについて変更を申し立てることが可能です。

また、裁判所におけるSpousal Maintenanceの申請は離婚後から12カ月以内、De facto(事実婚)の場合は別居開始から2年以内に行う必要があります。これらの期日を過ぎてしまいますと、申請を行うにあたって裁判所の許可が必要となりますのでご留意ください。


弁護士:神林佳吾(神林佳吾法律事務所代表)
1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後10年以上にわたって訴訟を中心に応対

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