オーストラリアの遺言書について - 身近な法律問題

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法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第10回:オーストラリアの遺言書について

オーストラリアでは、有事の際に備えて遺言書を作成しておく人は割と多いですが、日本人の感覚では(大病にでもかからない限りは)遺言書を作成しておくことは、あまり一般的なこととは言えないかもしれません。

しかし、相続という問題は誰でもいつかは必ず経験することですから、遺言を早めに用意しておけば、必ず来る相続を積極的にコントロールできますし、また備えがあるので日々の生活を安心して送ることができます。もし、あなたが事故や病気で急に亡くなった場合、あなたの銀行口座は死亡時に凍結されてしまいますし、不動産や株式の名義変更などの手続きを行う際には遺言書の存在が重要になってきます。

オーストラリアでは若い人でも不測の事態に備えて遺言状を作っておくのが一般的で、やはり「何かあった時に無いと家族が困る」のが遺言書ですから、結婚した時や家の購入を機に作っておくのが普通です。

オーストラリアの相続手続には日本のような「自筆遺言状」という概念はなく、故人が残した書面が“遺言書”と認められるにあたって厳格な書式とルールが適用されますので、弁護士に依頼するのが一般的となります。また、日本に居住されている人であっても、オーストラリアの不動産や銀行口座を保有されている場合には、日本の遺言状とは別にオーストラリア国内で有効な遺言書を準備しておく必要があります。

私の経験上、日本の方から「オーストラリアでは遺言書が無いと財産が政府に没収されるのか?」という質問を良く受けます。これはよく聞かれるので、どこから出たうわさなのかなと聞かれるたびにいつも思っていますが、オーストラリアも日本と同様で遺言状が無くても相続の手続きを行うことは認められています。ただ、遺言状が無い場合は相続に際して必要な手続きが増えますし、遺族間のトラブルの元になりますので、遺言状を作っておいたほうが良いに越したことはありません。

オーストラリアの法律事務所に遺言状の作成を依頼される場合の費用は、10ページ程度の定型遺言状で300~500ドルが一般的です。相続金額が少ない場合でしたら、政府が運営する組織やNPO法人において彼らを遺言執行人に指定することを条件に無料(※)で遺言書を作成してくれますので、状況に応じて積極的に利用されると良いでしょう(※遺言執行時の手続きは有料)。

ただ、遺族や相続人が英語をネイティブ並みに理解しない場合は大変な負担を強いることになってしまいますので、日本語のできる人に遺言執行人になってもらうことをお勧めします。


弁護士:神林佳吾(神林佳吾法律事務所代表)
1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後10年以上にわたって訴訟を中心に応対

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