公正証書について - 身近な法律問題

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法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第13回:公正証書について

日本人弁護士としてオーストラリアで仕事をしていると、ごくまれに『公正証書』の作成にあたって、日本人から相談を受けることがあります。

日本でいう『公正証書』とは、法務大臣が任命する公証人(裁判官、検察官、法務局長、弁護士などを長年務めた人から選ばれる)が作成する公文書でのことで、有事の際には裁判をせずに差し押さえなどの強制執行をすることのできる、判決に近い効力を持つ書類のことを指します。

一方、オーストラリアには公証人に相当する枠組みやシステムがなく、司法権を行使できるのは裁判所に限られていますので、日本の公証人役場に相当する機関が存在していないのが実情です。従って、契約などの取り決めを保全したいといった場合は、担保などを確認した上で留置権や抵当権などを設定しておくのが一般的な流れです。

ただし、担保がないようなケースや、そういった進め方が適当でないような場合において、オーストラリアでは裁判で争わずに判決と同様の結果を得るシステムとして『Consent Order』と呼ばれる手続きが存在しています。このConsent Orderとは主に家族法における財産分与と子どもの取り決めに用いられるものですが、契約当事者が取り決めた内容を裁判所に承認してもらう申請を行い、それが認められると判決と同じ効力を持ちます。

日本の公正証書と大きく異なる点として、『Consent Order』の申請は裁判所に対して行うため、申請時に厳かな要件を満たしている必要があり、契約当事者全員がそれぞれの選択肢を理解した上で、自由意志に基づいて作成した書類を基に承認申請を行わなければなりません。


また、日本の公証人役場のように公証人がいろいろと話を聞いて書類を作成するのではなく、利害関係が相反するであろう当事者が、それぞれ異なる弁護士からアドバイスを受けていなければなりません。それらの書面が有効と認められるためには、それぞれが別々の弁護士からアドバイスを受け、その旨を各弁護士が確認するLegal Advice Certificateを添付する必要があります。

すなわち、オーストラリアでは日本の公証人といった政府組織の庇護を受けるのではなく、利害関係にある両者が民間の弁護士からそれぞれアドバイスを受けていなければならず、その分、利害関係にない弁護士からアドバイスを受けることができますし、裁判所という国の機関が原本を保管しますので安全で確実と言えます。


弁護士:神林佳吾(神林佳吾法律事務所代表)
1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後11年以上にわたって訴訟を中心に応対

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