DNA鑑定について – 身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第30回:DNA鑑定について

ほとんどの方には縁のない話ですが、ごくまれにDNA鑑定についての問い合わせを受けることがあります。いろいろなケースのうち、通常は父親が子どもの父親であることを証明するためであったり、父親が子どもの父親でないことを証明するためであったり、母親が子どもの父親を特定して紛争を解決するための科学的証明に用いられます。

近年では簡易キットやネットで簡単に検査が行えるようになっていますが、オーストラリアの裁判所で証拠として採用されるのは「Family Law Regulations 1984のPart IIA」に基づいて「National Association of Testing Authorities(NATA)」が指定する業者によって行われた検査結果である必要があります。もちろん、比較的安価で簡単に検査できる業者を否定するわけではないのですが、裁判所で証拠として採用されるためには当事者の身分証明が公平かつ一定の手順が義務付けられている検査機関によって確認されていること、そしてDNAサンプルが検査機関によって直に採取されている必要があるためです。

当事者間で同意している場合はDNA検査が容易に行えますが、一方がDNA検査を拒否している場合には裁判所の命令を求める請求を「Family Law ActのSection 69VA」に基づいて起こさなければなりません。相手の同意がない場合、相手に内緒で採取したDNAで検査した証拠を裁判所に提出することはできませんので注意が必要です。

また、「Family Law Actの69条」では法的に子どもの父親と推定される事由として、主に以下のような規定があります。

  • - 子どもの母親と結婚している状態で子どもが生まれている場合
  • - 子どもの出産時からさかのぼって20週から44週の間に母親と住居を共にしている場合
  • - 子どもの出生証明書に父親として名前が記載されている場合
  • - 裁判所が父親である旨の認定をしている場合

もし、これらの規定により子どもの父親であると推定される場合、過去の判例を見る限り、裁判所はDNA検査を強制的に行う旨の判決を出すことはありません。子どもの父親として長年の関係が構築されている場合、特段の事情がない限り、相手の同意がない状態ではDNA検査を請求することができないということです。

よく誤解されるのですが、相手の同意がない場合にDNA鑑定の請求を行うためのハードルは低くありませんので注意が必要です。


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後13年以上にわたって訴訟を中心に応対

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