不動産の共有名義について – 身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第34回:不動産の共有名義について

オーストラリアで不動産を所有する際、日本にはない合有所有権(ジョイント・テナンシー=Joint Tenancy)という制度が存在します。これをテナンシー・イン・コモン(Tenancy in Common)と混同される人を多く見受けますが、どちらも不動産を共有する点に変わりはないものの、大きく異なる点が幾つかあります。今回のコラムはこの違いを解説したいと思います。

テナンシー・イン・コモン

複数人で不動産を所有しますが、所有権の割合は合計が100%になればどのような持ち分でも問題ありません。もし所有者の1人が亡くなった場合、その所有権は遺言書で指定された相続人に譲られる形となります。

ジョイント・テナンシー

ジョイント・テナンシーは2人以上の個人(誰とでも可)が不動産を所有する形態で、各所有者はそれぞれ所有権を等分に持ちます。生存者取得権(Right of Survivorship)があるのが特徴で、所有者が亡くなった場合、その持ち分は均等に生存している他の所有者のものになります。

ジョイント・テナンシーの場合は誰に相続されるか検討する余地はなく、生き残っている人に所有権が移転するため、プロベート(検認)手続きは不要となります。ただし、夫婦が事故などで同時に亡くなられた場合に備えて遺言書を作成しておくと良いでしょう。

所有権のシナリオ例

  • 夫婦の場合

    トムさんとマリーさん夫妻が不動産をジョイント・テナンシーで保有しています。妻のマリーさんが亡くなられた場合、トムさんは彼女の死亡証明書(DeathCertificate)を役場に提出することで不動産名義をトムさん単独に書き換えることができます。

  • 付き合って間もないカップルの場合

    ジョンさんとマーガレットさんは付き合って比較的間もないこともあり、不動産をテナンシー・イン・コモンで50%ずつの権利で購入しました。しかし、その数年後、ジョンさんは交通事故で亡くなってしまいました。この場合、彼が所有していた不動産の権利はマーガレットさんに自動的に移動するのではなく、彼の遺言書によって相続人に権利が移転する形となります。

  • 混合家族の場合

    ボブさんとスーさんは結婚して10年が経ちますが、各々が再婚で連れ子がいます。この場合、不動産をテナンシー・イン・コモンで50%ずつの権利を持つ形で購入すれば、亡くなった時には各々の遺言書に基づいて不動産を譲れますので、自分と血のつながった子どもに不動産を残せるようになります。

どのように不動産を保有するべきか

一概には言えませんが、もし亡くなった時に不動産をどのように譲りたいのか検討するのが良いと思います(私のブログをご参照ください。Web: www.kklaw.com.au/archives/joint-tenants-or-tenants-in-common.html)。その上で、こうしたパターンに当てはまらない場合や、また、どのようにしたら良いのか分からない場合には、専門家からアドバイスを受けると良いでしょう。


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後14年以上にわたって訴訟を中心に応対

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