オーストラリアの誹謗中傷(Defamation)について – 身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第39回:オーストラリアの誹謗中傷(Defamation)について

Q: サービスを受けた会社に関して、ネガティブなコメントをしても問題ないでしょうか。

A:サービスを受けた会社の評価をコメントするに当たって、問題が起きそうな点は、誹謗(ひぼう)中傷や名誉毀損(きそん)罪だと言及されることが何となく想像できるかと思います。英語で中傷や名誉毀損を「Defamation」と言い、オーストラリアではこれを州法で定めていて、1889年に制定された法律が2005年に「Defamation Act 2005」として現在のシステムに改定されています。

基本的には事実と大きくかけ離れている摘示(てきし)がなされ、それによって社会的評価を低下させた場合にのみDefamationが成立しますが、日本の名誉毀損罪とはコンセプトが若干異なります。

Defamationの適用は、主に著名人や有名人がメディアなどで不当な損害を被った際に用いられ、10人以上の従業員がいる法人は組織力があるのでDefamationとして相手を訴えることはできません。現在、グーグル・レビューやトリップ・アドバイザーなどで利用者が星を付けたり、コメントを書くことができますが、これはオピニオンなので正当な評価である場合は特に問題ありません。

悪意を持って虚偽の内容で悪口を書く行為は、民事上の損害賠償請求の対象となり、QLD州では最高25万豪ドルの請求が認められています。

とはいえ、余程の被害が発生しない限り、現実的に個人では数十ドルや数百ドルなど少額の請求はなかなか難しいといったところですが、刑事事件では3年以下の懲役刑が設定されています。なお、Defamationのプロセスでは、裁判をするに当たって事前通達が行われ、28日間の猶予期間が裁判開始までに設けられており、その間に記事やコメントの撤回、謝罪や妥当なコストの支払いを行うことで裁判を回避することができます。

裁判所では悪質性があるかどうか、社会秩序の維持を重要視していますので、最近の判例では悪質性が高く、社会ルールや法律を蔑(ないがし)ろにするようなケースにおいて原告側が提示した請求額より、裁判官が高い判決を出したことが話題になりました。

これらの理由から、社会通念上で悪質と見なされなければ問題ないと思いますが、悪意を持って相手方を貶(おとし)めるようなことを書くなど、あえて問題が起きそうなことは控えた方が良いかもしれませんね。

トリップ・アドバイザーやグーグルなどに記載されている利用者のレビューはオピニオンですが、公益性があるものと、ビジネス側から異議申し立てがあれば削除できるシステムがあるので問題ないと思います。


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後14年以上にわたって訴訟を中心に応対

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