オーストラリアで刑事事件に巻き込まれたら⑤ – 身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第45回:オーストラリアで刑事事件に巻き込まれたら ⑤

刑事裁判における前科

オーストラリアで刑事裁判を受けることになりました。前科が付くのでしょうか。

日本では有罪判決を受けると必ず前科が付き、その人が生きている限り、一生前科の記録が保管され続けます。他方、オーストラリアではシステムが異なり、裁判で有罪判決が下される際に裁判官が有罪判決を記録する旨の「Conviction Recorded」の判決を出すことにより、有罪(Conviction)の記録が付きます。ただ、諸事情を考慮して悪質性が薄く、再犯の可能性が低いような場合、Convictionの記録が付かないケースもあります。この場合はいわゆる前科の記録は残らないということになります。

Convictionの記録は一般に公表されるわけではないですが、何かあった時には政府や捜査機関に参照されたり、次に何らかの罪を犯した場合に記録が照会され、より重い刑が下されることもあります。

また、Convictionの記録が付くと、就労や海外渡航、特にビザや永住権が下りないなどさまざまな場面で制約を受けるだけでなく、会社によっては過去の犯罪歴を自主的に開示しなければならないという規定を置いているので、就職に際して前科を理由に雇用を拒否されるといった不利益を被ることもあります。

万が一、会社員がConviction Recordの判決を受けた場合、会社から解雇処分を受ける可能性があるので、裁判官がConviction Recordの判決を出すかどうかが、あなたの一生を左右する重大な岐路となり得ます。従って、もしConvictionの記録が付くと困るような状況であれば、たとえ軽微と思われる事件で起訴された場合でも、Convictionの判決を避けるために弁護人を付けて万全の準備で、減刑の嘆願をする意味は大いにあると言えます。

まとめ

これまで見てきたように、万が一オーストラリアで逮捕されてしまったら、何が何だか分からないまま有罪判決を受ける前に、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

刑事事件の弁護士費用は、一般の人たちにとって決して安い金額ではないかもしれませんが、刑事事件をどのように解決したかによって、刑の軽重や前科が付くかどうかなど、その後の社会生活にとても大きな影響を与えます。

そのため、場合によっては刑事事件を得意としている弁護士に依頼する方が、長期的に見て得策であることは言うまでもありません。


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後14年以上にわたって訴訟を中心に応対

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