離婚後の“親としての権利”と子どもの連れ去りについて – 身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第48回:離婚後の“親としての権利”と子どもの連れ去りについて

夫婦がオーストラリアで離婚することになった際に18歳未満かつ扶養下にある子どもがいる場合、夫婦としての関係が終了した後も子どもの父親と母親としての関係は継続します。

オーストラリアでは、父親と母親は子どもに対して平等の権利があるという前提で、子どもに有意義な人生を歩んでもらうべく、両親が協力して子どもを育てていく形を取るのが一般的です。従って、養育や面会など子どもについての取り決めをしっかりと行う必要があります。

しかしながら、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去り、相手方の“親としての権利”を一方的に奪い去ってしまうという事案も残念ながら起きているのが現状です。

もし、急に一方の親と連絡が取れなくなり、子どもが連れ去られて所在が分からなくなってしまった場合、子どもを連れ去られた他方の当事者である親としては、警察に誘拐事件として捜査してもらうことも可能です。また、「Family Law Act」の「Section 67M」に基づいてオーストラリア連邦家庭裁判所に申請を行い、子どもと親がどこに住んでいるのかを把握している人物や機関に対して情報開示を行うよう求めることができます。

裁判所から、子どもの所在を開示する旨の判決命令が出た場合、連れ去られた子どもと連れ去った親がどこに住んでいるのかを把握している人物(よくある例としては、連れ去った親の友人や親族)は、その情報を申請者に開示する義務が発生します。また、政府機関が保有している情報の開示(ATOやセンターリンクなどに登録されている住所など)から子どもと親の所在を突き止めることができるようになります。

もし元夫婦間で子どもの連れ去りが起きてしまった場合、仮に子どもを取り戻したとしても、他方の親との関係を修復することは非常に難しくなります。当然ですが、連れ去った親は誘拐事件の犯人として刑事上の処罰を受けることもあり、その場合には子どもとの面会もできなくなります。そういったことを考えると、いかなる場合でも、他方の親の同意を得ずに自分の都合で子どもを連れ去ることは絶対に避けなければなりません。

オーストラリアでは一方の親の権利を上回る特殊な事情など、一方の親が子どもの親権を引き受ける必要性がある場合には、法的に有効な取り決めを作成することができます。しかし、それ以外に他方の親に無断で子どもの居住地を移転させる方法はありません。

子どもの連れ去りとして問題が重大になってしまう前に、弁護士に相談することをお勧めします。


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後14年以上にわたって訴訟を中心に応対

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