事業撤退し新事業へ移行する場合のランオフ(Run-Off)の保険について

保険

Q

オーストラリアで長年にわたりデザイン・エンジニアリングのサービスを顧客に提供してきましたが、昨年末をもって同事業を一旦ストップして日本の親会社商品の輸入・販売に特化することになりました。これまでデザイン内容の瑕疵(かし)に起因する賠償責任をカバーする保険を手配していましたが、今後は同保険の手配は必要なくなるのでしょうか?(49歳駐在員=男性)

A

お問い合わせの件ついては、事業撤退した後も引き続きランオフ(Run-Off)と呼ばれる状態での保険手配が必要となります。

ランオフの保険は、主にクレームメイド(Claims-Made)と呼ばれる、クレームが表面化した時点で保険会社が対応をする方法で、アレンジされている賠償責任保険での手配手段の一部です。

一般的に法的賠償責任をカバーする保険には、オカランス・ベース(Occurrence‘ Base)と呼ばれ、クレームが発生した時点で保険会社が対応をする方法と、クレームメイドの方法がありますが、前者は一般賠償責任保険(Public Liability)や製造物賠償責任保険(Products Liability)などが主なものとなり、後者は役員賠償責任保険(Directors and Officers Liability/D&O)や専門職賠償責任保険(Professional Indemnity)など保険クレームが表面化するまで時間が掛かる種目が主なものです。今回の問い合わせにあるデザインの瑕疵などに起因する損害賠償をカバーする保険がこの専門職賠償責任保険です。

オカランス・ベースの場合、保険クレームとなる事故が発生した時点で保険が発動するのに対し、クレームメイドの場合は、保険クレームが起こされた時の保険が発動します。ご質問者の場合、昨年までにデザイン事業を終了していますので、将来的にはその事業に関わるリスクがなくなることを考慮して保険手配は必要がないように思われがちですが、実際には過去に行ったデザイン内容の瑕疵を理由に、数年後に顧客から損害賠償請求を起こされる可能性が考えられます。その時点で有効な賠償責任保険を持っていないと、たとえ過去にさかのぼってデザインを納入した際に手配していた保険があったとしても、クレームメイドの保険である場合は対応ができません。

しかしながら、将来的に継続を行わない事業に対して、以前と同様、継続的に毎年ずっと同じ保険をアレンジし続けることは費用も含めて難しいため、通常このようなケースに対しては事業終了から数年間にわたり徐々にリスクが小さくなるという前提で、それに見合った最低限の保険料でランオフの保険を付けることで対応します。

ランオフ保険の手配期間は一般論として7年くらいが目安と言われていますが、必ずしもそれ以降はリスクがなくなるわけではないので、状況を見据えて対応することが求められます。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア
ジャパン保険サービス部

世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当

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