クレーム・メイド・タイプの保険

Q 先日会社で手配している役員賠償責任保険の契約更新に際し、いくつかの保険会社から見積もりを取ったところ元のところよりも安い提示を受けたので、保険会社を切り替えました。その際に既に発覚していた事柄があり、それが保険クレームに繋がるような案件がある場合は注意が必要だと言われました。どういうことでしょうか。
(56歳会社員=男性)

 

A 一般的に役員賠償責任のような保険は、クレーム・メイド(Claims Made)と言われ、クレームとなる事象がいつ起きたかということではなく、それに起因して事柄が発覚した時に有効な契約を持つ保険会社がクレーム対応をするようにデザインされています。ですので、自動車保険などのような事故発生ベース(Occurrence Base)の保険よりも専門的な観点からの留意点が多いのですが、まずは最初に保険契約における非常に基本的な告知義務についての説明をしたいと思います。

保険契約とは、保険会社と被保険者の間の信頼関係で成り立っています。従ってその基盤には被保険者からの関連情報の告知の義務があります。具体的には保険法(Insurance Act)で「誠実に事実を申告すること(utmost good faith)」および「包み隠さず申告する義務(duty of disclosure)」が定められていて、これは保険申込み時に過去の事故歴や自身のおかれている状況などの必要情報を可能な限り提示するということが求められており、契約の基本条件となっています。

保険会社側は契約者より提示を受けた情報を元に、保険の引き受けをするかどうか、保険料をいくらにするか、免責額をいくらに設定するかなどの条件を考慮していきます。

では、この告知義務に違反があった場合はどうなるのか。

もしも、故意または重大な過失で重要事項が申告されずに保険契約が締結された場合、契約そのものを解除されることもあり得ます。もしくは契約解除とは言わないまでも、事故時に十分な補償を受けられなかったり、さらには追加で保険料の請求をされたりすることも可能性として考えられます。

なお、この申告義務は例えば連名での契約の時など、契約者すべてに適用されるため、自分が知らない事案であっても、ほかの契約者の誰かが知っていてそれを保険会社に申告をしていなかった場合、そのケースによっては申告義務の違反と取られる可能性もあります。

質問にあった役員賠償責任保険などのクレーム・メイド・タイプの保険では、過去の出来事に端を発した事故が数年後に発現するということが想定できます。特に事故の原因となる事象にどれくらい遡及して対応できるのかという点を確認すること、何か懸案事項がある場合には必ず前もって保険会社へ告知することがとても重要となります。それを怠り、保険会社を切り替えた場合には、現行はもとより以前の保険会社からの保険対応をしてもらえない事態になり得ることがありますので十分注意してください。


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斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア ジャパン保険サービス部

 

世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当

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