企業買収、M&Aに伴う表明保証に係わるリスクを転嫁できる保険

Q この度豪州企業の買収を検討するように本社側からの指示を受けました。いろいろと情報を集めている際に企業買収、M&Aに伴う表明保証(Warranty and Indemnity)に係わるリスクを転嫁できる保険があると聞きましたがどのようなものなのでしょうか。
(48歳会社員=男性)

 

A M&Aは新規事業の立ち上げや事業の多角化など、経営戦略を実践する上で有効な手段ですが、その反面、ターゲット企業に内在するさまざまなリスクへの対処を誤ると、買収後に大きなトラブルを抱え込むことにもなりかねません。当然買収の前段階において財務、税務、法務、労務、および保険等に関わるデューデリジェンス調査などを通じてさまざまなリスク要因を洗い出し対処をすることになりますが、限られた時間と予算でどこまでターゲット企業の内情について詳細を調べることができるかという問題もあり、取引完了後に想定外の不測の事態が発生し、思わぬ損失を被ることが考えられます。そうした場合に予測外のリスクへの対策としてW&I(表明保証)保険のアレンジは有効な手段となり得ます。

かつてW&I保険はコストが高く、手続きも煩雑だと考えられ、伝統的なそのほかの方法(例えばescrow=第三者貯託など)にてそのリスクを管理しようとする傾向が強かった時期がありましたが、近年のW&I保険はより保険契約者のニーズに柔軟に対応できるようになってきています。

W&I保険の対象としての主なリスクとしては以下の事柄があります。

・過去に遡った環境汚染
・過去に遡った税務上の問題
・表明補償違反に伴う金銭的・財務上の損失
・買収した企業における潜在的な雇用に関する問題
・潜在的な賠償責任問題

一般的にW&I保険は買い手側企業が手配するケースが多く、上記のようなリスクを転嫁する手段としての有用性も重要ですが、それ以外にも例えば競争入札の場面において、競合他社との差別化を図ることができるなどのメリットもあります。

さらには保険のメリットは買い手側企業だけではなく、売り手企業においても保険手配によってより良い条件で売るための有効な手段であるとも言えます。つまり買う側にとっては買収後の不測の事態への備えとなり、売る側にとっては保険手配をすることによって売却対象の魅力の向上をし、取引後に未処理の問題を残さないようにする手立てを整えることで投資家の期待に応え、さらに買う側が安心して買収を進めることを促す付加価値となるわけです。

問題発生時の弁護士費用等についても保険対象となり、買い手側企業、売り手側企業ともに双方の長期的な友好関係を継続していくためにも無用なトラブルを保険手配することで防ぐことができるとも言えます。


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斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア ジャパン保険サービス部

 

世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当

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