【特集】快適なシニア・ライフを求めて③

快適なシニア・ライフを求めて

年金・スーパーアニュエーション
【年金】取材協力=ライフメイツ社会保険労務士事務所/蓑田透さん
【スーパーアニュエーション】取材協力=さくらパートナーズ/吉住京子さん

日本の年金

オーストラリアでの日本の年金受給

日本における公的年金(老齢年金)とは、現役時代(20歳~60歳または65歳)に毎月年金保険料を支払うことにより、その金額に応じた年金額を老後に受給できる仕組みとなっている。国民全員が加入する国民年金と、被雇用者が加入する厚生年金(公務員は共済年金)の2つの年金がある。

年金を受給するための条件は、国籍や居住地に関する制限はなく請求手続きを行えば、オーストラリア在住でも日本の年金を受給することは可能だ。日本に住所があれば年金に関する情報(受給開始時期や受給見込額など)が通知されるが、海外居住者の場合は住所を登録しない限り通知されない。日本へ行く機会があれば、最寄りの年金事務所で年金記録を調べてみてはいかがだろうか。

年金受給と日本での加入期間

老齢年金を受給するためには、原則的に現役時代に年金保険料を10年間払い続けることが要件となる(2017年8月に資格期間が25年から10年に短縮された)。

しかし例外として、海外在住期間(ただし日本国籍のまま)またはオーストラリアの老齢年金(Age Pension)の加入期間を日本の年金加入期間に含め通算することもできる。これらの措置により、例え日本の年金加入期間が短くても10年の受給要件を満たすことが可能になっている。

受給の手続き

日本の年金を受給するための方法は、以下の3つに分かれる。

  1. 日本へ帰国し、手続きを行う

    年金を受給するために日本への帰国が可能であれば、全国各地にある年金事務所(共済組合の場合、各組合事務所)に出向いて手続きを行う。

  2. 日本の家族または専門業者に依頼

    日本へ帰国することが難しい場合、日本にいる家族や専門業者(社会保険労務士事務所)に年金受給のための手続きの依頼をする。ただし、受給者本人からの委任状が必要となる。

  3. オーストラリアの年金事務所で手続き

    オーストラリア国内にある年金事務所に必要書類を提出し、日本の年金事務所に書類を郵送してもらうという方法。日本への書類郵送に時間を要すること、また受付窓口でのやり取りが英語になるため手続きのハードルが高くなる。

障害、遺族年金の受給

日本の年金の受給については、老齢年金以外にも障害年金、遺族年金も受給可能だ。

障害年金は、保険料を払っている現役世代(つまり、まだ老齢年金の受給開始年齢に達していない人)が傷病により障害状態になってしまった場合に受給できるもの。障害年金の受給には、障害の原因となった傷病の初診日に日本の年金に加入していることが必要条件となる。

遺族年金は、年金受給権を持つ人または現在受給中の人が亡くなった場合に一定の家族に支給されるもの。対象遺族は遺族基礎年金が高校生以下の子どもがいる場合の配偶者または子、遺族厚生年金は配偶者、子(高校生以下)、父母、孫、祖父母のいずれかになる。

スーパーアニュエーション

スーパーアニュエーションとは

スーパーアニュエーション(以下、スーパー)とは、オーストラリアの企業、個人の積立年金(確定拠出年金)制度のことを言う。スーパーのファンドに積み立てられたお金は、退職後の受給に向けて増やすように投資運用され、一般的にその投資内容は個人で決めることができるようになっている。例えば、バランス・ファンドへの投資や、企業の株式を自由に持つことも可能だ。

投資によって発生した利益に課される税率は15%(アカウント・ベースド・ペンション/ABPの場合は無課税)のため、個人の税率によってはスーパーを使う方が有利な場合もある。

また、サラリー・サクリファイス(給与を全額現金で受け取る代わりに、収入の一部をスーパーに積立運用する制度)などで節税対策にも使われるが、積立方法により税金の掛かり方や積立額の上限も異なる。

これらの点を踏まえ、スーパーは老齢年金(Age Pension)とは仕組みが異なったものになるので注意が必要だ。

スーパーの引き出し時期

スーパーの受給については、以下に挙げる人が主な受給対象者となる。

  1. 受給資格年齢に達し退職した人(55~60歳まで異なる、表1を参照)
  2. 受給資格年齢に達したが退職していない人(持っているスーパーを「Transition to retirement pension」に組み替えると最高割合の10%までアクセス可能)
  3. 60歳以上で仕事を辞めた人
  4. 65歳以上の人(仕事をしていても受給可能)
  5. 死亡した人(スーパーは遺族に譲渡される)

【表1】年齢別スーパー受給対象者の生年月日(55~60歳)

生年月日 給付開始年齢 生年月日 給付開始年齢
1960年7月1日以前 55歳 1962年7月1日~1963年6月30日 58歳
1960年7月1日~1961年6月30日 56歳 1963年7月1日~1964年6月30日 59歳
1961年7月1日~1962年6月30日 57歳 1964年7月1日以降 60歳

引き出し可能額

退職移行期間(TTR)ペンションとして出す場合には、最高10%までと引き出し可能額が決まっているが、ABPの場合は特に引き出し額の上限は決められていない。

ただし、最低引き出し率はTTR、ABPのどちらにも適応するのでどちらのペンションにおいても引き出し金額の最低割合が表2の通り決められている。

【表2】ABP保持者年齢 最低割合(%)

65歳以下 4% 85~89歳 9%
65~74歳 5% 90~94歳 11%
75~79歳 6% 95歳以上 14%
80~84歳 7%

引き出しの手続き・手数料

スーパーの引き出しには一般的に手数料は掛からず、引き出したい場合はスーパーのファンドを持つ会社へ問い合わせた上で、フォームを取り寄せ記入する必要がある。

ただ、ファンドの会社はフォームの手配はしてくれるが、個人の状況に対してのアドバイスを行ってくれる場合は少ないので、スーパーの引き出しに当たってはファイナンシャル・プランナーなどに問い合わせることをお勧めする。

スーパーの運用と問題点

オーストラリアも日本も世界的に長寿国となっており、シニア・ライフは長くなってきている。シニア・ライフを安心して進めようと考えていても、退職後の生活に十分な貯蓄がなければそれは難しくなる。そこで、スーパーの運用に関連する退職後の大きな問題点は以下に挙げられる。

退職後の一番大きな問題

 スーパーアニュエーション・ファンド「VicSuper」の調査によると、75~79歳の約30%及び保守的な投資をしてきた人の約50%は、退職後の生活に十分な貯蓄がない。また、55歳以上のオーストラリアの退職者で財政的に準備ができている人はわずか約8%に留まり、約54%は準備ができておらず、この問題の根本的な原因を特定して対処しない限り、次の世代になっても状況は改善しないと言える。退職時にお金を使い果たしている人が多い。

長生きの国民

 私たちは、寿命を両親がどれだけ長生きしたのかを目安に考えがちだが、現代の寿命は親世代に比べもっと伸びている。世界保健機関(WHO)によると、日本人もオーストラリア人もトップ5に入る長寿国だが、平均的な退職年齢は65歳のままとなっている。長寿になったことで、退職してから平均20年間も余生がある。

アクティブなライフスタイル

 医学の進歩や健康管理に関する情報収集がしやすくなったことで身体的、社会的にアクティブなシニア・ライフを楽しんでいる人が多くなっている。
 大手銀行HSBCの報告によると、退職者の約45%は、退職後に旅行や新しい趣味、家族や友人との時間を過ごすことを楽しみにしており、最新の調査では、退職者の約62%が国内旅行の予算はあると考えて、約40%は海外旅行を計画している。シニア・ライフの質を維持、改善したいという思いが、ますます支出の多さにつながっていると言える。

貯蓄をセーブせず使っている

 退職後、所得がないのに今までの生活水準を維持する、もしくは改善するとなるとよりお金が必要となる。
 HSBCの調査によれば、退職者の半数は毎年スーパー・ファンドから最低額以上を引き出しており、将来の貯蓄が劇的に削減している。オーストラリア人は同調査に参加した全17カ国で最大の貯蓄不足を抱えている。
「何とかなる」という楽観的な見方のまま綿密な計画がなくては退職時にお金が不足する問題は続くだろう。資産テストをパスできず、年金をもらえなくなった人も多い。どのように改善できるか一度専門家と話し合うのが良い。


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