”未来のお金に”期待 仮想通貨を使ってみよう

近頃、「仮想通貨」に関するニュースを耳にする機会が多くなってきている。しかし、仮想通貨とひと言に聞いても、それが本当に使える通貨なのか、利用に当たっての仕組みは一体どうなっているのか、今一つ理解できていない人も少なくないだろう。また、興味はあっても詐欺への不安や使える場所が分からないなどの理由から、手を出すことをためらってきた人も多いのではないだろうか。そんな疑問や悩みに答えるべく、本特集ではQLD州を拠点に活動する仮想通貨のスタートアップ企業「TravelbyBit」のCEO、ケイレブ・イェオ氏の協力の下、仮想通貨の魅力から課題までさまざまな角度から解説する。(取材・文=フリアン・ロドリゲス・カンポス)

仮想通貨の特徴と魅力

革新的な特徴

ビットコインを手に持つケイレブ・イェオ氏
ビットコインを手に持つケイレブ・イェオ氏

仮想通貨の何がそれほど革新的なのか? こう自問したことがある人は少なくないだろう。現在、既に電子マネーや、カードを使ったキャッシュレスな取引が行われていることもあり、仮想通貨のシステムは大騒ぎするほど目新しいものではないように思えるかもしれない。

そもそも仮想通貨とは、無数のコンピューターで分散的に管理されている通貨のこと。名前が広く知れ渡っていることもありビットコインが仮想通貨そのものだと勘違いされがちだが、3,000以上存在するとされている中の1つに過ぎない。円やドルなどの従来の通貨の単位ではなく、通常アルファベット3文字で表される。ビットコイン(BTC)の他にも、イーサリウム(ETH)、リップル(XRP)、ビットコインから派生した「ビットコイン・キャッシュ」(BCH)などが仮想通貨の代表格に挙げられる。

先述の通り、仮想通貨はコンピューターにより分散的に管理されることから、その最大の特徴は、取引に「集権的な管理者を必要としない」ことにある。銀行に管理されている現金通貨や企業が管理する電子マネーの取引は、集権的な第三事業者を介して行われるのに対し、仮想通貨の取引は、個人間で直接行われるのだ。これは、ビットコインの開発者であるサトシ・ナカモトを名乗る人物がある論文内で発表した「ブロックチェーン」と呼ばれるシステムが可能にした。

ブロックチェーンとは、仮想通貨の取引を可能にする中核的な技術のことを指す。ブロックチェーンのネットワークに参加しているコンピューター同士で取引を記録し再認証すると、それが「ブロック」と呼ばれるデータとして完成する。このプロセスが繰り返し行われることにより、取引の正当性が保証され、無事に仮想通貨の受け渡しが成り立つ仕組みとなっている。ほとんどの取引はブロックが3つ以上確保されてからでないと成立しない。このように取引の記録や再認証を担うブロックが幾つもつながることから「(ブロック)チェーン」と呼ばれる。ただし、ブロックチェーンには、取引額が上がるにつれてセキュリティーの関係上、認証に必要なブロック数が増えてしまい、取引に更に時間が掛かってしまう弱点がある。例えば、コーヒーを買う場合は瞬時に支払いが承認されるが、新車を購入するとなると取引に要する時間が長くなる可能性があるということだ。

仮想通貨の魅力

仮想通貨の大きな魅力は、まず送金手続きをスピーディーに行えるという点だ。世界のどこにいても取引は速やかにリアル・タイムで処理されるため、海外の銀行口座からの振り込みが届くのに2日程待たされる、というような状況を避けられる。

個人間の取引が可能という性質から、匿名(とくめい)で取引を成立させられるのも魅力の1つ。企業の管理ミスなどによって起こる個人情報の漏洩(ろうえい)のリスクや、プライバシー保護の観点から、この点に魅力を感じる人は多い。

また、国際取引に掛かる手数料が大幅に削減され、ないに等しくなるというのも利点として大きい。イェオ氏によると、仮想通貨の種類にもよるが、その手数料は基本的に1セント以下で、1ドルから2,000万ドル相当の取引でも限りなく0に近いという。取引のスピードとも合わせれば、今後、世界の共通通貨の役割を担う可能性も十分に秘めていると考える専門家もいる。

最後に、取引が暗号化されることで安全性が保証されるのも魅力だ。仮想通貨は、別名「暗号通貨(Crypto Currency)」とも呼ばれ、その名の示す通り、通貨が暗号化されることで全ての取引が安全に行えるようになっている。仮想通貨を保管しているデバイスが盗難に遭っても、数段階のパスワードがなければアクセスできないため、通貨が盗まれる心配も不要だ。アドレスとパスワードさえあれば、再びアクセスすることが可能という点に着目し、日常の購買行動に仮想通貨を組み込んでいる企業も増えている。

QLD州内での実用化の動き

ブリスベン空港で仮想通貨を導入

ブリスベン空港で仮想通貨による支払いを試すケイレブ・イェオ氏(左)とブリスベン空港内のバー「Windmill & Co」のジョージ・ドリバス氏(右)
ブリスベン空港で仮想通貨による支払いを試すケイレブ・イェオ氏(左)とブリスベン空港内のバー「Windmill & Co」のジョージ・ドリバス氏(右)

2018年1月より、ブリスベン空港内のほとんどの売店で仮想通貨による支払いが可能になった。国際空港における試みとしては初であり、導入時点ではビットコイン、イーサリウム、ダッシュの3種類の仮想通貨を受け付け、ターミナル内の30以上のカフェやレストラン、お土産を販売している売店などで支払いが可能となっている。これは仮想通貨への投資で大きな利益を得た人たちが、その利益で海外旅行をしている傾向に着目し、そのような旅行者向けに通貨を使える場を提供することが狙いだ。

そして、今回、ブリスベン空港での支払いシステムの導入を行ったのが、イェオ氏が率いる仮想通貨取引のスタートアップ企業「TravelbyBit」だ。

QLD州のベンチャー企業「TravelbyBit」

「TravelbyBit」は現在、観光の場面での仮想通貨の使用を提案し、ブリスベンを始めオーストラリア全土で一般企業に対し仮想通貨による決済システムの導入を進めている。取り扱っている仮想通貨の種類は、ビットコイン、イーサリウム、ダッシュ、ライトコイン、NEMの5つ。中でもNEMは次世代暗号通貨と呼ばれる物の1つで、セキュリティー重視のプログラミングが使われているため日本でも注目を浴びている。イェオ氏によると、同社が取り扱っている通貨の中では、NEMとライトコインの2種類の仮想通貨の人気が最も高いそうだ。

仮想通貨の利点の1つに貿易などの国際的な取引がより効率的に行えることがあり、イェオ氏は観光でも応用可能だと考えている。

「想像してみて欲しい。国境を越えて瞬時に取引ができるのはすごいことだ。旅行する際にスマート・フォンさえあれば全ての支払いを済ませられるという画期的なシステムのため、観光業界にとっても新たな扉を開くことになるだろう」

QLD州ではブリスベン空港以外にも、バンダバーグから北へ70キロに位置する町アグネス・ウォーター、そこから更に北にある1770(ゼブンティーン・セブンティ)という町全体がTravelbyBitの導入により仮想通貨での支払いを受け付けている。グレート・バリア・リーフへの旅の費用も、仮想通貨で全て支払うことが可能だ。

また、取材に訪れたTravelbyBitがオフィスを構えるブルンズウィック通り(フォーティチュード・バレー)の歩行者天国一帯にある飲食店では、仮想通貨での支払いに完全に対応していた。その日、ビットコイン・キャッシュを入手し、スモール・サイズのラテの購入を試みたが、難なく買うことができた。ラテを購入した店は、ステフズ・カフェ(Steph’s Café)。TravelbyBitが初めて、仮想通貨の支払いシステムを導入した店だ。レジの店員が持つタブレットの画面で1秒以内に取引を確認することができた。

フォーティチュード・バレーはクリプト・バレー(仮想通貨の別名・暗号通貨(クリプト・カレンシー)から取ったもの)と呼ばれるほど、仮想通貨の関連企業を含む数多くのフィンテック企業が集まっているそうだ。TravelbyBitのオフィスがある建物内にも、多くのフィンテック企業が入居している。フォーティチュード・バレーを訪れる際は、支払いの選択肢として、仮想通貨も忘れずに持って行くのが良いかもしれない。

ブリスベン空港では既に仮想通貨での取引を開始している
ブリスベン空港では既に仮想通貨での取引を開始している
お店のレジ近くなどにこのステッカーがあれば仮想通貨での支払いを受け付けている
お店のレジ近くなどにこのステッカーがあれば仮想通貨での支払いを受け付けている
仮想通貨を使って買ったステフズ・カフェのコーヒー
仮想通貨を使って買ったステフズ・カフェのコーヒー
ビットコインATMではビットコインの購入、引き出し、現金での引き出しが可能
ビットコインATMではビットコインの購入、引き出し、現金での引き出しが可能

仮想通貨を活用してみたい人へ

仮想通貨の使い方

仮想通貨を使ってみたいとなった時、最初に気になるのが例えばビットコインなどをどこで手に入れるかということだ。ビットコインでなくとも、仮想通貨を入手する一番簡単な方法は、それを所持している人から買い取ることだ。それが最も安全かつ初めて仮想通貨を買う際に心配な人にはお薦めの方法だ。

実は、仮想通貨はATMからも入手することができる。ビットコインATMは仮想通貨専用のATMで、ビットコインだけでなく数種類の仮想通貨を取り扱っている。仮想通貨の現金やカードによる購入の他に、現金の引き出しや仮想通貨ウォレットへの引き出しが可能だ。ブリスベン市内とその付近には合計4つのビットコインATMが設置されている。また、「Bitcoin ATM map」というウェブサイトでは世界中に設置されているビットコインATMから、近くにある機械を検索することができる。同サイトによると、サーファーズ・パラダイス周辺には3カ所設置されており、ゴールドコースト、ブリスベン、サンシャイン・コーストのエリアで合計10カ所存在する。

ビットコイン・キャッシュを受け取ったウォレット・アプリ(Bitcoin.com)の確認画面
ビットコイン・キャッシュを受け取ったウォレット・アプリ(Bitcoin.com)の確認画面

それら以外には、インターネット上や実際の取引所で買い取る方法がある。ここで注意しておきたのは、いずれの方法で手に入れる場合でも、仮想通貨を保管するウォレットが必要になるということだ。それには、スマート・フォンのアプリが最も簡単で、初めての人には最も使いやすいだろう。物理的な仮想通貨ウォレットと呼ばれるデバイスも販売されており、USBのような形をした物から特殊な形をした物まで幾つか種類がある。ウォレットを販売しているウェブサイトはたくさんあるため、信用できるウェブサイトから選んで購入しよう。

仮想通貨について学ぶ

仮想通貨は、スマート・フォンのウォレット・アプリがあれば誰でも売買できるが、投機や値上がりを期待して買い取るのは、あまり得策ではないかもしれない。仮想通貨は、価値の変動が激しいため、価値が上昇するか下落するかを予測するのが非常に難しい。「私たちの狙いは、仮想通貨を1つの実用的な通貨システムとして確立することだ。値上がりを期待した投機は避けた方が良く、それに携わる者も技術の応用や開発にエネルギーを注ぐべきだ」とイェオ氏は語る。仮想通貨の専門家の言葉は信頼できる指針となるだろう。仮想通貨に関する知識をもっと深めたい人のために、関連ウェブサイトを幾つか紹介する。

●仮想通貨入門ナビWeb www.redgobiernoabierto.org
 仮想通貨に関するあらゆるテーマの解説が、初めての人にも分かりやすいよう日本語で多数掲載されている。

●ビットコイン日本語情報サイトWeb jpbitcoin.com
 単語やキーワードで検索できる日本語の仮想通貨百科サイト。仮想通貨の歴史や種類、プログラミング言語など専門的な情報が満載。

●Bitcoin.comWeb www.bitcoin.com
 ビットコインの初期推進家の1人で、ビットコイン・キャッシュの推進家でもあるロジャー・バーによって開設されウェブサイト。ビットコインのウィキペディアに当たる。

●Coin Market CapWeb coinmarketcap.com/currencies/dash
 あらゆる種類の仮想通貨の市場価格の情報が載ったウェブサイト。仮想通貨を買う前にどの通貨を買うか迷ったり、買った後でどれくらい変化しているのか見ることができる。

●TravelbyBitWeb www.travelbybit.com
 TravelbyBitの公式ウェブサイト。ハードウェア・ウォレット(仮想通貨をオフラインで保管できる物理的な財布デバイス)も販売している。

仮想通貨のウォレットの役割を果たす数々のスマート・フォン・アプリ
仮想通貨のウォレットの役割を果たす数々のスマート・フォン・アプリ

仮想通貨の課題と対策

近年では、ハッキングや詐欺などの被害が相次ぎ、仮想通貨の利用者はセキュリティー上の問題に直面している。オーストラリアだけでも、仮想通貨に関する詐欺の被害額は甚大だ。

今年5月にオーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)が発表した詐欺被害の年次報告によると、17年の仮想通貨関連の詐欺被害だけで総額210万ドルを超えるという。このような見出しを見ると、仮想通貨の利用を始めることに躊躇してしまうだろう。そこで、そういった被害から身を守るためにできる効果的な対処方をイェオ氏に聞いた。

1つの方法はデジタル・ウォレットを他のデバイスでもアクセスできるようにバックアップすることだ。ウォレットに仮想通貨を一定額以上保管する際、パスワードのバックアップをする必要がある。バックアップすることでウォレットを紛失しても再び取り戻すことが可能となる。画面に表示されるリカバリー・フレーズを紙に書き留めておくと、紛失や盗難などで困った場合でも保管してある金額を取り戻すことができる。紙に書いてあれば、ハッキング被害に遭う恐れもなく安心だ。パスワードを設定する際にもハッキング防止のためパスワードの保管場所を別々にすることや、前述したようにアナログに保管することがお勧めだ。また、心配なのは大金を盗まれてしまわないかということ。その被害を防ぐには、持っている仮想通貨を小分けにし、保管する場所を別々にするのが得策だ。大量の仮想通貨を一カ所に集めず、分散させて保管するのが防犯として最も効果的だとイェオ氏はアドバイスしてくれた。

また、取引所から儲け話を持ち掛けられた場合に詐欺から身を守る手段として、相手がウォレットのアドレスとパスワードを所持しているか確かめることも有効だ。「仮想通貨アクセス用のパスワードがなければ、明らかに怪しいと判断すべき」とイェオ氏は語る。このようなシステムを持つ取引所が全て詐欺だというわけではないが、仮想通貨のリスクやシステムをよく理解しているのならともかく、少なくとも初心者は避けて通るべきだろう。仮想通貨による初めての歴史的な取引から8年が経ったが、依然として新しい技術であることを理解し、これからの改善に期待を持ちながら、利用する心構えが大事なのかもしれない。

TravelbyBit Australia
■住所:315 Brunswick St., Fortitude Valley
■Tel: 0430-484-025
■Web: www.travelbybit.com
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