不動産特集②シドニーでマイホームを購入しよう

(Photo: AFP)

今、マイ・ホームを買うべきなのか−−。シドニーの住宅価格が史上最高値圏で推移する中で、悩んでいる人も少なくないようだ。しかし、現時点でも空室率はきわめて低く、長年にわたって人口増加が見込まれることから、短期的な調整はあっても相場の急落は想定しにくい。需給バランスがますますひっ迫していくことを考えれば、長期的な資産形成を視野にできる限り早く購入しておくに越したことはないだろう。

住宅価格の上昇が止まらない。米国拠点の不動産情報サービス会社コアロジックが毎月発表している「コアロジックRPデータ」によると、今年8月31日時点のシドニーの住宅価格(戸建てと集合住宅)の中央値は77万3,000ドルと前年同月比で17.6%上昇した。戸建ては90万ドルと18.6%、集合住宅は67万ドルと12.7%、それぞれ高い伸びを記録した。シドニーとメルボルン(前年同月比10.6%上昇)以外の主要都市はどれも1ケタの小幅な伸び、またはマイナス成長となっており、2大都市の突出ぶりが改めて浮き彫りになっている。

特に、シドニー市内中心部(CBD)周辺、「ノーザン・ビーチ」(北部海岸)や「イースタン・サバーブ」(東部郊外)といった海に近い高級住宅街、日本人が多く住む「ノース・ショア」(北部郊外)などの環境の良い地域では、一般的な戸建ての中古住宅の相場は優に100万ドルを超え、日本円で1億円以上は当たり前。夢のマイ・ホームはなかなか手が届かなくなっている。

一方、CBDから遠い「ウエスタン・サバーブ」(西部郊外)、新興住宅地が多い北西部の「ヒルズ」地区、クルマで1時間以上かかる北方の「セントラル・コースト」などではまだ、一般的な勤労者世帯でも購入できる価格帯の戸建て住宅やタウンハウス(低層の集合住宅)を探すことはできる。また、CBDに近いエリアでも、市内南部の産業地区に最近多く建設されている新築集合住宅などは、比較的手頃な価格で購入できる。

ただ、相場が最高値圏にある今は、果たして「買い時」なのか。マイ・ホームの購入をためらう人がいるのも無理はない。

「土地神話」は生きている

しかし、日本でかつて信じられていた、不動産価格が右肩上がりに上昇していくという「土地神話」は、シドニーでは今も生きている。

過去の長期的なデータを見ると、シドニーの住宅価格はインフレを大幅に上回るペースで上昇してきた。統計手法が現在と異なるため単純に比較できないものの、大雑把に計算すると、シドニーの住宅価格指数は1986年から2015年までの約30年間に約8倍(オーストラリア統計局=ABS)に拡大した。一方、消費者物価指数(CPI)は86年から14年までに約2.5倍(オーストラリア準備銀行=RBA)上昇した。つまり、30年前にシドニーで家を購入した人は、物価上昇分を考慮した実質ベースで平均3倍以上の付加価値を手にしている。

また、過去10年間の動き(グラフ参照)を見ても、住宅価格の上昇率はインフレを上回っている。ABSによるとシドニーの住宅価格指数は05〜15年に約75%上昇した一方、CPIは約31%の上昇にとどまる。この間に、リーマンショック前の景気拡大時の07年、その直後の景気回復時の10年、そして歴史的な低金利下にある13年〜現在の3回のピークがあった。数年おきのサイクルで調整局面を挟みながら、シドニーの不動産相場はほぼ右肩上がりに上昇している。

シドニーの住宅価格指数と上昇率の推移(四半期ごと)、出典:オーストラリア統計局
出典:オーストラリア統計局

価格は実需を反映している

外国人による投資熱の先行きなどマクロ経済要因次第で今後、短期的には小幅な調整はあり得るものの、シドニーの住宅価格が急激に下落する可能性は低そうだ。その最大の理由としては、現在の相場が投機的なマネー・ゲームよりも、実需を反映していることが挙げられる。例えば、シドニーの賃貸物件の空室率は2.1%(15年6月=NSW不動産研究所)とほぼ満室の状態にあり、世界の主要都市と比較しても非常に高い水準にある。

移民や他地域からの人口流入やを背景に、シドニーの人口は長期的に拡大していくと見られる一方で、特にCBD周辺の既存住宅地では新規供給の余地が限られている。住宅の供給不足は構造的な問題であり、容易に解消されることはないだろう。

このため、長期的な視点で資産形成を考えるなら、歴史的な低金利下で資金調達コストが低い今のうちに、手の届く物件を購入しておくのが得策と言える。最初は無理せずに買える範囲内の物件を購入し、それを元手に段階的に大きな家に買い替えていくことで、長期的な資産形成を図ってはどうか。

確かにここまで価格が高くなってしまうと、「一生借家に住んで家賃を払い続けた方が得だ」といった指摘もある。しかし、家賃をかけ捨てするだけの借家と、将来の価格上昇を見込める持ち家を単純に比較できない。幸いオーストラリアに相続税はない。子どもや孫の代までを見据えた長い時間軸で、マイ・ホーム購入を考えたい。

永住権を持たない外国人(短期滞在の非居住者または長期滞在の居住者)については、投機的な売買を防ぐためにさまざまな規制が設けられている。

外国人の非永住権保持者の住宅購入に関する主な規制

短期滞在の非居住者 1年以上滞在可能なビザを持つ居住者*
中古住宅 購入不可 申請・認可が必要。居住目的の住宅1軒に限り購入可能。帰国時に売却しなければいけないなどの条件がある。投資目的の購入は不可
新築住宅 申請・認可が必要 申請・認可が必要。購入前の入居期間が1年以内で、かつ開発業者から直接購入する新築住宅のみ購入可

*永住権申請中の者を含む
出典:外国投資審議委員会(FIRB)

住宅価格以外のコストも負担に

とはいえ、住宅は普通の勤労者にとって人生で最大の買い物。住宅ローンを利用する際は、収入や支出の見通し、将来の家族構成といったさまざまな要素を考え、現実的な返済計画を立てたい。また、オーストラリアで主流の金利変動型住宅ローンの場合、現在は低金利のため支払い金額は少ないが、将来は金利上昇にしたがって負担が増えることも想定しておく必要がある。

オーストラリアでは、最適な住宅ローン選びを支援する「モーゲージ・ブローカー」のサービスを利用する人も多い。状況に応じて、支払い中にローンの借り換えを行うことも一般的だ。予算やローン借り入れ金額、購入したい住宅の地域や条件などが決まれば、インターネットなどで物件を探す。気に入った物件があれば、「インスペクション」(内見会)に参加したり、見学を申し込んだりする。購入の意思が決まれば不動産会社に申し込むが、複数の買い主がオークションに参加するケースも多い。購入が決まれば「バイヤーズ・エージェント」と呼ばれる買い主側の代理人を通して、売り主側の不動産会社と交渉する人も少なくない。契約手続きは、弁護士や事務作業を担当する「コンベイアンサー」に依頼するのも一般的だ。

購入時には、頭金以外にもさまざまな支出が発生する。大手不動産サイト「realestate.com.au」によると、総額50万ドルの一般的な物件を頭金10%(5万ドル)、利率5%で自宅として購入した場合、印紙税(1万7,990ドル)、住宅ローン保険(7,920ドル=頭金が20%以下の場合)、法的費用(1,500〜3,000ドル)、ローン申請料(600ドル)、物件検査費(300〜400ドル=中古住宅の場合)、書類作成費(200〜300ドル)など、合計1万1,540〜1万4,050ドル程度の費用が別にかかる。

一方、NSW州で自分で住む目的で初めて新築住宅(上限75万ドル)を購入する場合、1万5,000ドルの補助金「ファースト・ホーム・バイヤー・グラント」(2016年1月1日から1万ドルに減額)を受けることができる。ただ、これを差し引いても、合計1万1,540〜1万4,050ドル程度の追加コストが必要になるという。

購入後も、ローン支払い額のほかに、「ストラタ・レビー」(共益費=集合住宅の場合)、市税、水道代などの固定費の支払いも意外と負担になる。水道、電気、ガス、雨漏りなどさまざまな修理に思わぬ出費がかかる可能性もある。古い家を購入後に人に貸したり転売したりする場合、物件の価値を高めるためには外装やインテリアのリノベーション(改修)も欠かせない。

こうした追加コストも考慮した上で、家計を圧迫しない、無理のないマイ・ホーム計画を立てたい。

(編注:本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、住宅の購入を推奨するものではありません。購入の際は、専門家によるアドバイスを受けることをお勧めします)

「不動産特集②建築・不動産の頼れるプロ」
はこちら

「不動産特集①シドニー未来予想図」
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