【特集】日本とオーストラリア、どこが違う?不動産の基礎知識(QLD)

人口が増え、あちこちで住宅が建設されているオーストラリアでは、不動産の取引が活発だ。憧れのマイ・ホームの購入やライフスタイルの変化からの住み替え、帰国に当たっての売却など不動産の売買を検討している人は多い。しかし、不動産に関する知識や経験が少なかったり、日本との手続きや法律の違いなどから戸惑う点も多々ある。そこで本特集では、日豪の不動産事情の違いから、オーストラリアでの不動産売買の方法、またQLD州内の注目エリアなどについて解説する。

監修:OPIC海外不動産情報センター/高田裕司氏、協力:ブリース洋子公認会計士事務所/ブリース洋子会計士、株式会社ワイドエステート/砂川盛作氏、ハーディング法律事務所/ハーディング裕子豪州弁護士

※この記事は情報提供のみを目的としています
※本特集の情報はQLD州の法律に基づいています

日豪の不動産事情の違い

物件は自分で探す

日本とオーストラリアでは不動産売買時の事情が大きく違うということを、まずはきちんと理解しておきたい。日本で賃貸物件を探したり、購入を希望する時は、最初に不動産会社を訪れて、自分の条件を伝え、それに合致する物件を紹介してもらい、気に入ったら契約するという流れになる。

しかし、オーストラリアの場合、一般的に自分で物件を探さなければならない。ローカルの不動産会社で物件を紹介して欲しいと頼んでも期待しない方が良いだろう。自分でインターネットなどで情報を集め、希望する物件を見つけ、担当する不動産会社に直接コンタクトする。紹介してもらおうと考えていては、いつまでたっても物件が見つからないと覚えておこう。

不動産会社の対応の違い

日本では、不動産会社は売り主と買い主の両者から手数料を取るシステムで、両者の利益になるようにバランスを取りながら妥協できるポイントを探しつつ商談を進める(図1参照)。

図1:日本の場合


オーストラリアの場合、不動産会社は売り主から手数料を取るため、売り主の利益のためだけに動く(図2参照)。オーストラリアにある日系の不動産会社も基本的には同様で、もし日本と同じ感覚で不動産会社に物件の紹介を依頼しても立場上は売り主側に立つことになる。

基本的にオーストラリアでは売り主が優位と言えるが「バイヤーズ・エージェント」を利用すると、対等の立場で商談することが可能だ。

買い主側にも手数料が必要になるが、バイヤーズ・エージェントの契約を結んだ不動産会社は買い主の利益のために動いてくれる。そのため積極的に物件を紹介したり、オープン・ハウスに同行しアドバイスを行ったりする(図3参照)。英語での交渉や書類手続きなどが不安な人にとって安心できる制度で、買い主側をしっかりサポートしてくれるため、近年はローカルの買い主もバイヤーズ・エージェントを利用する傾向にある。

図2:オーストラリアの場合

図3:バイヤーズエージェント

契約には弁護士が必要

売り主と買い主が納得すれば契約となるが、この時に必ず弁護士による対応が必要になる。このため物件探しと同時に、担当してくれる弁護士も自分で探しておかなければならない。

売り主と買い主のそれぞれに弁護士が付き、契約書の内容を確認し、修正、追加などが必要であれば弁護士同士がやり取りを行い、決済となる。

弁護士は購入する物件の土地税や市税、管理組合費用、水道代などの未払いがないかの確認も行う。前のオーナーの未払いを防ぐ意味でも、不動産契約手続き時の弁護士の存在は重要だ。

不動産売買の手続きなどが変更された

物件売買に関する手続きなどが2017年7月1日に変更された。主な変更は以下の3点となる。

①物件価格が75万ドル以上の売買時の追加手続き

物件(更地、居住、商業)価格が75万ドル以上の売買時、売り手は「Clearance Certificate」(キャピタル・ゲイン税の支払い義務はないという証明書)を豪州国税局(以下、ATO)へ申請し、その証書を決済前までに買い手へ提出することになった。

もし売り手が同証明書を取得できなければ(特に外国人の場合)、売却額の12.5パーセントを決済額からキャピタル・ゲイン税の源泉徴収分として支払うことになる。そして決済直後、この源泉徴収額をATOへ支払う義務は買い手へ移行するため、売り手だけでなく買い手も注意が必要となる。

なお、売却時キャピタル・ゲインが発生せず明らかに損失が発生する場合や過去の会計年度のロール・オーバーなどがある場合は「Variation Certificate」という書類申請ができる。これは、売り手が12.5パーセントの源泉徴収は正しくないと主張する場合にATOへ申請できる書類だ。

75万ドル以上の物件を売りたい、または買いたいと考えている人は、契約前に弁護士、売買決済後の確定申告については会計士へ相談しよう。

②FIRBの申請費用の値上げ

オーストラリアの永住権を持っていない外国人が物件を購入する際は、通常、外資審議委員会(以下、FIRB)から購入承認を受けることが前提となっている(例外あり)。17年7月1日からこのFIRB申請料が以下の通り値上げされた。

物件価格 FIRB申請料
●~$1,000,000 $5,500
●$1,000,001~$1,999,999 $11,100
●$2,000,000~$2,999,999 $22,300

FIRBの申請手続きは通常、買い手側の弁護士が手伝って行い、審査期間は3週間程度となっている。

③空家罰金(Annual Vacancy Charge)の発生

これは、17年5月9日午後7時半以降、FIRBへ購入申請した外国人に該当し、開発業者が事前にFIRB免除書を取得している場合は、17年5月9日以降の契約日から適用となる。

条件は、12カ月のうち合算して6カ月以上空家(賃貸に出していない)場合に罰金発生となる。具体的な罰金額は、FIRB申請費用(上記参照)と同額で、条件を満たしていない年に罰金を支払うことになる。

ゴールドコースト、ブリスベンの注目エリア

ゴールドコーストは観光地としての人気が高いが、その中でも日本人に人気のエリアがブロードビーチだ。パシフィック・フェアを中心に洗練されたお店が集中し、トレンドの発信地として人気が高まっている。

今後ゴールドコーストで不動産価格の上昇が見込まれるエリアは、まず安定した人気を誇るビーチ・フロント。同エリアの物件は常に有望視されており、開発が続くロビーナやサウスポートも期待されているエリアだ。また、内陸部のヘレンズベールやオクセンフォードはゴールドコーストとブリスベンの中間地域でトラムの延長工事が進むなど、サテライト・シティーとして注目されている。

ブリスベンではウエスト・エンドに注目したい。シティーに近く、質の高い生活が実現でき、不動産価格も割安感を感じられるため人気だ。学校に通う子どもを持つ家族には、キャッチメント・エリアと呼ばれる人気の高い公立学校の近くのエリア、例えばサウス・ブリスベン、タラギンディ、マンスフィールドなどが注目されている。

ブリスベンで今後不動産価格が上昇すると予想されるエリアはサウス・バンク、ウエスト・エンドなどのシティーに近く、日常生活に便利なエリアで、特に川を臨むリバー・ビューと呼ばれるエリアの物件が期待されている。

ブリスベンのシティー郊外、チャームサイド、カリンデール、アッパー・マウント・グラバット、インドロピリーの各エリアも、政府が重点的に開発を行い、インフラを集中させる計画が進められていることから注目されている。

ゴールドコースト、ブリスベンはシドニーやメルボルンと比べ、不動産価格に割安感があり、オーストラリア国内だけでなく世界中から熱い視線が注がれているため、人気の高いエリアの良い物件はすぐに売れてしまうという状況が続いている。

オーストラリアで不動産を購入するまでの手順

不動産を購入したいと考えたら、最初に予算や場所、いつまでに購入するのかといった具体的な目標を設定しよう。同時にインターネットなどを使って物件を自分で探すことも必要だ。物件選びの基準は人それぞれだが、物件を自分の「資産」として見ることも意識しよう。買い主が永住権を所持していれば購入に制限はないが、ビジネス・ビザなどの場合、購入後の利用やビザの失効時などに規制があるので注意しよう。

日本では不動産の購入は一生に一度の大きな買い物と考えるが、オーストラリアではライフスタイルの変化に合わせて住み替える人が多く、購入時に売却することまで考えるのが一般的だ。将来売却する時に物件の価値がどのくらい上がるのかといった資産として物件を捉え、この視点から物件を探すという考えもある。

物件探しと同時に頭金の準備と、ローンを組む場合は幾らまでローンが利用できるのかの事前確認もしておこう。銀行のホーム・ローン担当者やモーゲージ・ブローカー(複数のローンを比較し自身に最適なローンを提案する専門家)に依頼し「プレ・アプルーバル」(ローンの仮審査)を用意する。これには収入証明と銀行の残高証明が必要になる。

物件探しの最中に、気になる物件が見つかったらオープン・ハウスに参加しよう。これは誰でも気軽に参加できる現地見学会で、遠慮せずに積極的に参加し、物件を見る目を養いながら自分にふさわしい物件を探そう。

購入の意思があれば不動産会社の担当者に連絡をして契約の準備を進める。買い主と売り主の両者がそれぞれ弁護士に依頼し契約条件を詰めていき、合意に至れば契約を締結することになる。

永住権を持っていない外国人が不動産を購入する場合はFIRBの許可が必要で通常は弁護士などが申請を行うが、特別条項にFIRB条項を入れて契約する必要がある。また購入価格が100万ドル以下の場合5,500ドル、100万ドルから200万ドル未満で1万1,100ドル、200万ドルから300万ドル未満で2万2,300ドルのFIRB申請料が必要になる。

併せて銀行やモーゲージ・ブローカーに住宅ローンをどう組むべきか相談し準備しよう。通常は契約締結後14日以内にローンの審査を受け、建物に問題がないかを確認するビルディング・インスペクションと、白アリなどの被害がないか確認するペスト・インスペクションをそれぞれ専門の業者に依頼し、レポートが届いたら弁護士に確認してもらう。

その後、決済が買い主、売り主、銀行のそれぞれの弁護士間で行われ引き渡しとなり、後は引っ越すだけとなる。

住宅購入の一般的な手順

目標設定 予算やどこにある、どんな物件をいつまでに、など具体的に目標を詰めていく。頭金を幾らに設定するか、またその準備
情報収集 購入に向け、いつまでに何が必要か、弁護士やモーゲージ・ブローカーを誰にするか、情報を集める プレ・アプルーバルの準備 どのくらいローンを利用できるのか調べる。収入証明の準備。銀行の残高証明を準備する
モーゲージ・ブローカーまたは銀行
物件探し インターネットなどを使って探し、オープン・ハウスがあれば積極的に参加する バイヤーズ・エージェント 利用する場合、不動産会社を決め、希望する条件を伝え、物件を紹介してもらう
バイヤーズ・エージェント
購入意思の
表明
気に入った物件が見つかったら、不動産会社の担当者へ伝える。担当する弁護士を決める 契約準備 売り主と買い主の双方の弁護士が契約条件を確認し、内容を詰める
弁護士またはコンベイアンサー
契約 契約書へサイン。弁護士が立ち会うこともある ローンの申請 モーゲージ・ブローカーや銀行へホーム・ローンを申し込む
モーゲージ・ブローカーまたは銀行
インス
ペクション
建物に不具合や問題がないか、白アリなどの被害がないか、専門業者に依頼する レポートの
確認
弁護士がインスペクションの結果を確認し、問題があれば解決させる
ビルディング・インスペクター、ペスト・インスペクター 弁護士
セトルメント
(決済)
売り主と買い主と銀行の弁護士で行う。頭金をいつでも動かせるように準備
弁護士
引き渡し セトルメントの1カ月後からローンの返済がスタート。引っ越し準備。電気やガス、電話、インターネットなどの手配

不動産を売却する時の注意点

オーストラリアで暮らし不動産を購入したが、日本へ帰国することになったため、その不動産を売却したいというケースもあるだろう。

この場合、多くは購入した時に利用した不動産会社へ売却の依頼を行うが、事情によっては別の不動産会社を利用することもある。どの不動産会社へ依頼するのかは売り主が決めることだが、不動産売買の手数料は売り主が全て支払う点が日本とは異なる(バイヤーズ・エージェントの場合を除く)。

売却の条件などは不動産会社と協議し、それを弁護士が確認する。また買い主が現れた時に出てくる購入条件を、適切かどうかを判断するのも弁護士と相談して行う。そのため不動産の売却に当たっては信頼できる不動産会社と弁護士に業務を依頼しよう。

契約手続きなどは弁護士に依頼するが、別の方法として費用が安価な「コンベイアンサー」に頼むということも考えられる。

コンベイアンサーとは、契約をスムーズに進めるための手続き代行業者のことであり、書類に不備がないかなどの確認を行うが、細かく内容をチェックした上での契約条件の変更や、買い主側の弁護士との交渉などは行わないので、コンベイアンサーに業務を依頼したいという場合には売り主自身が契約内容を調べる必要がある。その上で、売り主が弁護士またはコンベイアンサーのどちらに依頼するのかを自分自身で判断しなければならない。

売却を不動産会社に依頼する時は、主に以下の3つの方法が考えられる。

①エクスクルーシブ

オーストラリアでは一般的な不動産売却の方法で、日本での「専属専任媒介契約」に当たる。不動産会社は60日間で売却できるように動くため、短期間で売却できる可能性が大きい。そして、日本と同様に同時に別の不動産会社と媒介契約を結ぶことはできない。また、売り主が自分で買い主を見つけた時も不動産会社を通さなければならない。

②ソウル

専任媒介契約で、ほぼエクスクルーシブに準ずるが、自分が親族や知人などの買い主を見つけた場合は不動産会社を通すことなく直接交渉し契約することができる。

③オープン

一般媒介契約のことで、同時に複数の不動産会社に依頼することができ、また自分が買い主を見つけて直接契約することもできる。

売却先が決まり、ローンが残っている場合は清算を行わなければならないが、弁護士が行うケースもあれば、自分が銀行へ行きローンの残金を清算することもある。

不動産を購入した時の価格より高い金額で売却できた時は利益(キャピタル・ゲイン)を得ることができる。自宅として住んでいた物件の場合は課税されないが、不動産投資として物件を所有して場合は所得と一緒に納税しなければならない。ただし1985年の9月20日以前に購入した物件の場合は課税の対象にならない(永住ビザを持たない外国人は別規定あり)。

また日本へ長期にわたり帰国し不動産を売却することになった場合は、いつ帰国するかやどの段階で不動産を売却するのかによって課税の状況が変わるため、必ず事前に会計士と相談し確認するようにしよう。

不動産を売却する3つの方法

不動産会社1社(同時に複数は不可)と媒介契約を結ぶ。自分で買い主を探しても不動産会社を必ず通す。短期間で売却できる可能性が高く一般的な方法

ほぼエクスクルーシブと同様だが、自分が親族や知人に売却する場合、不動産会社を通さずに直接契約できる方法

同時に複数の不動産会社に売却の依頼ができる。買い主を自分で探し、不動産会社を通さずに直接契約できる

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