住宅ローンの利用から引き渡しまで 海外在住者の不動産売買物件購入①

日本帰国に当たって考える新たな住まい。ライフ・ステージや家庭の状況などによっては、賃貸ではなく将来にわたり長く住み続ける「購入物件」も選択肢となるだろう。ただ、いざ物件を購入するとなっても、海外にいながら住宅ローンを組むにはどうすれば良いのか、物件の引き渡しまでにはどのようなプロセスを踏むのかなど、疑問は次から次へと出て来るのではないだろうか。そのような疑問に答えるべく、専門家による協力の下、海外在住者にとっての不動産購入の基礎知識を日本の住宅の最新事情も交えお届けする。

住宅ローン
記事協力=叶屋不動産/板屋雅博さん

住宅ローン利用の注意点

日本帰国後の住まいを「購入」によって手に入れたい場合、現金での購入を除き、「住宅ローンを組めるか」がそれを実現する上での大きなポイントとなる。

住宅ローンの審査期間は一般的に、書類がそろってから2週間程度と言われている。借入する本人(以下、本人)の与信によっては1カ月以上も掛かる場合があり、海外在住者の場合は、後者と考えた方が良いだろう。

住宅ローンの審査で最も重要視されるのは、本人の与信審査だ。これは、本人が勤務する会社、勤続年数、年齢、自己資金、物件の担保評価などを基に行われる。当然、自己資金や年収は多い方が有利だが、年齢が高すぎると審査が不利になる場合もある。

海外在住者が住宅ローンを組む場合は、日本企業または日本にも支社・支店を置く海外企業に勤務していることが前提条件となる。海外に住む個人や個人事業主の場合、日本の金融機関には、与信審査の方法がなくローンの対象外となるため、住宅購入の方法は現金による購入しか残されない。日本では現在、金利が非常に低いため、現金を十分に保有する個人でもほとんどの場合は、ローンを利用して不動産を購入しているのが実情だ。

審査はほとんどが書類で行われるため、書類さえ正確にそろっていれば日本在住者と海外在住者の間での審査に掛かる時間に大差はない。逆に言うと、海外在住の場合は書類準備に時間が掛かる恐れがあり、その分時間的な余裕を考慮した購入スケジュールを立てておく必要があることになる。

審査の場合には、大企業や有力企業などに勤務している方が与信面では有利に働くことが多い。中小企業でも一概に不利とは言えないが、時間が掛かる場合がある。日本に支店がない海外企業に勤務している場合も、海外企業の与信審査に時間が掛かったり、与信が下りないケースも十分に考えられる。

与信審査において、実際に勤務先に勤務しているかどうかの電話確認もあるが、国際電話を掛けてくれる金融機関はまれな存在だ。

与信審査における重要な書類の1つに、勤務先が発行する給与証明書があり、これは審査にも大きく影響する。英語などでの給与証明を受けてくれる金融機関は少ないと予想されるため、この点については特に注意しておきたい。

ただし、連帯保証人に十分な与信力があれば、本人や本人の勤務先に与信力がなくても、住宅ローンの利用が可能な場合もある。その場合は、連帯保証人が日本に滞在していて、十分な給与所得があり、本人と同様の全て書類をそろえられることが必要条件となる。

海外滞在者が住宅ローンを利用して不動産物件を購入する場合は、協力的な不動産会社(以下、協力不動産会社)が全体の流れをコントロールしてくれることが欠かせない。

金融機関と必要書類

住宅ローンの利用に当たって、扱っている代表的な金融機関は以下の通り。

  • 都市銀行:三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそな
  • 地方銀行:横浜、千葉、静岡など
  • 信用金庫・信用組合:東京、朝日、さわやか、小松川など
  • ネット銀行:住信SBI、イオン、楽天、新生、じぶん、ソニーなど
  • 信託銀行:三井住友、三菱UFJなど
  • その他:中央労働金庫、カブドットコム証券、SMIマネーサプライ、ARUHI、JAなど

金利は金融機関により多少の差が見られる。また金利には「変動金利」と「固定金利」があり全期間固定金利型の「フラット35」では金利1%台が続いており、団体信用生命保険加入の場合でも1.5%を切っている。低金利の現在、住宅ローンを使う方が有利と言える。

また、ローン手続きに必要な書類とその取得の方法などは以下の通りとなっている。

  1. 住宅ローン借入申込書(個人情報及び個人信用情報の取扱いに関する同意書)

    各金融機関の書類に記入する物で、海外でも取得可能。

  2. 本人確認書類(パスポート、運転免許証、住民票など)

    住民票が必要な場合は、領事館で在留証明が取得できる。その際の必要書類としては、パスポート、住所を確認できる文書(滞在許可証、運転免許証、納税証明書、住所の記載がある公共料金などの請求書、現地の警察が発行した居住証明など)が挙げられる。

  3. 印鑑証明書

    住宅ローンの設定や、住宅の購入、住宅の登記の際に、印鑑証明書と捺印は何度も必要になる。ただし、海外に転出する際に市役所などで国外転出届(住民異動届)を提出してしまうと、連動して実印の登録も抹消されて、印鑑証明書も取得できなくなってしまう。その場合の解決策として、一時帰国の際に親兄弟などの扶養家族になることにして、市役所・区役所などで転入手続きすれば、1日程度で住民票、健康保険証を再度取得することができる。住民票とパスポートがあれば、実印登録と印鑑証明書は即日発行が可能だ。一時的に住民票や健康保険証を入手する場合の留意点として、取得と同じ月に再度転出届を出せば、その月の住民税と健康保険料は不要だが、翌月に提出すると2カ月分の請求が求められることが挙げられる。詳しくは各役所のウェブサイトを参照。
     また、海外でも領事館で印鑑証明の登録、印鑑証明書の発行が可能だ。印鑑登録時の必要書類としては、印鑑登録申請書、印鑑登録原票、登録する印鑑、パスポート、現住所を証明する書類、印鑑が二重登録でないことを立証する証明書、住民票の除票または戸籍の附票など。詳細は、領事館に要問い合わせ。

  4. 収入確認書類(給与証明書、源泉徴収票、住民税決定通知書、課税証明書など)

    海外の場合は、勤務先や役所、会計士・税理士から公的な給与証明書を入手が必要だ。日本や海外での貯蓄証明書(預金通帳のコピーなど)が求められる場合もある。

  5. 団体信用生命保険申込書兼告知書

    海外でも記入が可能。

また、上記以外にも滞在開始時期(期間)を確認できる物(賃貸契約書、公共料金の請求書など)、戸籍謄(抄)本もローン手続きの必要書類とされている。ここで挙げた書類は、あくまでも代表例のため、詳細については各金融機関、不動産会社、不動産売主、領事館、市役所などに問い合わせ正確な情報収集に努めておきたい。

住宅購入までの流れ
記事協力=叶屋不動産/板屋雅博さん

一般的な不動産売買物件

住宅購入とひと言で言っても、新築・中古マンション、新築戸建て、中古戸建て、土地を購入して注文住宅を立てるなど手段によってかなり手続きが異なる。そこで、ここでは一般的な不動産売買物件購入の流れについて取り上げる。

不動産売買物件は、大きく分譲物件と仲介物件に分かれる。分譲物件とは、売り主である不動産会社から直接購入する物件のことを指す。新築マンションや販売戸数の多い新築一戸建ては分譲物件となる。仲介物件は、売り主から仲介の依頼を受けた不動産会社を通して購入する物件のことで、一般的に販売戸数の少ない新築一戸建てや中古物件は仲介物件となる。分譲物件の場合は、本人が直接購入することが可能だが、海外在住者にはサービスが提供されないケースが多く、分譲物件の購入を考える場合は協力不動産会社との相談が必要だ。

物件引き渡しまでのプロセス

購入する不動産売買物件の種類が決まったら、最初の情報収集の段階から実際に購入し物件の引き渡しに至るまでには次の9つのプロセスを経ることになる。

  1. 情報収集

    購入する物件の場所、間取りなどの一般的な不動産物件情報をウェブサイトなどから収集。どのような物件があり、価格はどのくらいか、まずは相場を見た上で希望条件で検索をして購入条件を固める。

  2. 不動産会社の選定

    海外滞在者との契約が可能な不動産会社を選定する。不動産業者は大手といえども手続きが面倒な海外滞在者を敬遠する傾向が比較的強く、小規模な不動産会社では全く取り扱わない業者も多くある。東京には現在、1万社以上の不動産会社があるが、海外滞在者との取引実績がある会社は数%程度。不動産会社の協力が得られれば、適した物件の調査、契約、金融機関との調整、住宅ローンの設定などが可能になる。
     なお、日本の全ての不動産会社には、宅地建物取引業法(宅建業法)により国土交通省が認定した不動産物件データベース(REINS)の使用が義務化されているため、どの不動産会社を通しても一般的な不動産物件の購入が可能だ。

  3. 物件内見・現地調査

    高額な費用が必要となる不動産物件購入において、内見や現地調査は欠かせない。協力不動産会社を通して、物件見学の段取りをつけてもらい、複数の物件を見学して納得できる物件を決定する。

  4. 住宅ローンの事前審査

    住宅ローンが前提の場合には、事前審査を受けて住宅ローンの利用が可能であることを確認しておく必要がある。現金での購入の場合は、当然このプロセスは必要ない。融資不可の場合は、協力不動産会社と相談して他の金融機関に申し込みをするなどの方策を調整する。

  5. 購入申し込み

    必要書類に記入して購入を申し込む。

  6. 購入申込金・手付金の支払い

    物件確定の際に、不動産物件の5%程度の手付金の支払いが発生する。海外送金でも国内でのネット送金でも支払い方は自由だ。手付金の場合、その後に申し込みをしても返金されない場合があるため、支払い前に確認しておくことが重要となる。住宅ローン融資不承認の場合の解除特約があり、期限内に解除すれば申込金は返却される。

  7. 重要事項説明書の交付と不動産売買契約書の署名捺印

    宅建業法では本人への宅建士による重要事項の説明と署名捺印が求められる。協力不動産会社と相談して段取りを組んだ上で対応する。

  8. 住宅ローン契約の締結と残金の支払い

    住宅ローンからの支払いが完了した後に、司法書士により不動産登記を行われる。その結果、物件は本人の所有となる。

  9. 物件の引き渡し

    残金の支払いと登記により、物件が本人へ引き渡される。

中古物件の購入

新築だけでなく、中古物件も住宅購入の選択肢の1つだ。中古物件購入の場合も、既に存在する物件のため、住宅ローンの手続きを除けば、手続きは新築と大きく変わらない。ただし、購入後のリフォームについては、本人とリフォーム会社とのトラブルが多く報告されているため、リフォーム会社の選定は慎重にする必要がある。

また、中古物件の場合、例えば東京23区の駅前などの物件は人気が高く、発売から数日中に売買が決まってしまうことが多いため、協力不動産会社とよく相談して良い物件が出たら、即座に帰国して物件を決めるなどの措置が必要となる。

この点について、海外の場合、協力的な不動産会社の存在が決定的に重要で、一度不動産会社を決めたら他の不動産会社を使わないようにすることが肝心だ。複数の不動産会社を使用することで、結果として不動産会社からの協力を得られなくなる恐れがある。

日本の住宅最新事情
記事協力=ミサワホーム株式会社/高宮秀樹さん

現在の日本における特筆すべき住宅事情としては、景気の先行き不透明感、人口減少、子世帯の減少、共働きの増加などを理由に、注文住宅、分譲住宅共に年々着工件数が減少していることが挙げられます。一方で、世の中のサステナブルな方向への変化の影響、環境への配慮もあり、リフォーム市場は年々拡大の動きを見せています。全ての市場の共通項としては、「インテリア」への興味が非常に高まっていることがあります。これは、成熟した暮らしにおいて自己表現をする場が住まいに求められているためと思われます。

先述の人口減少や高齢化を背景に、全国の自治体は政府の指針の下、「コンパクト・シティー」(生活に必要な諸機能が近接した効率的で持続可能な都市、もしくはそれを目指した都市政策)が推進されていることも、日本の住宅事情における興味深い動きです。立地の良い場所に「集まって住む」ことが進められています。注文、分譲、中古、いずれの住宅を購入するにせよ、そうした最新の状況も踏まえて将来住むエリアを考える必要があるでしょう。

また、2020年にはゼロ・エネルギー住宅(ZEH)を標準にするという、政府主導の動きが進んでいます。現在、新築着工する戸建建物のほとんどが太陽光発電を備えたZEHの住まいです。これからは、住まいにエネルギー対策を施せるかどうかも住まい選びの条件として当たり前になることを覚えておいた方が良いでしょう。中古住宅購入の場合は、リフォームでZEHにできるか否かも重要なポイントの1つです。


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