労働基準(NES)の10項目について


労働・雇用法弁護士 勝田順子の
職場にまつわる法律の話

第12回 労働基準(NES)の10項目について

オーストラリアで人材を雇用する場合において、注意しなければならないのが、連邦法であるフェア・ワーク法(Fair Work Act 2009)という法律です。この法律は、雇用労働に関する総合的な法律と位置づけられており、雇用の際に遵守しなければならない事柄につき、まとめてあります。労働党によって制定されたフェア・ワーク法は、労働者保護法規であるとも言えます。今回は、その中でも重要となる労働基準(National Employment Standards、通称“NES”)を紹介します。NESには、10項目にわたり、最低労働基準や労働者の諸権利が規定されています。これら10項目は、労働者の職務レベルや給与水準に関係なく、オーストラリアで働くほぼ全ての労働者に適用されます(例外はほぼありません)。雇用契約書作成の際には、上記の規則を理解した上で、契約書へ盛り込んでいくことが重要となります。

それでは、以下にてNESの10項目について、まずは簡単に説明いたします。

1. 最大労働時間

フルタイム労働者の場合、労働時間の上限は週38時間と定められています。それを超える残業は妥当な範囲で認められますが、不当な残業については、労働者においてこれを断る権利を有します。また雇用者と労働者が合意すれば、最長26週間を上限に特定の期間における労働時間を週平均に振り分けて、38時間勤務とすることができます。

2. 柔軟な勤務条件の取り決め

労働者が、勤続1年以上であり、かつ、就学前児童の保護者または55歳以上などの条件に当てはまる場合は、勤務時間、就労形態、就労場所等を柔軟に調整することで、その労働者に特有のニーズに合った働きやすい労働条件を雇用主に要求できます。

3. 出産・育児休暇

出産予定日の時点、もしくは申請する休暇の初日の時点で勤続1年以上の労働者は、12カ月を上限とする無給出産・育児休暇を取得できます。労働者はその後、更に、12カ月の無給出産・育児休暇を要求することできますが、妥当な理由があれば雇用主は拒否できます。男女問わず取得が可能です。

4. 年次有給休暇

労働者は、毎年4週間分の有給休暇を付与されます。未消化の有給は次の年に繰り越され、退職時には、雇用者が未消化分の有給休暇に対して、給与を支払う義務があります。

5. 疾病・介護休暇、忌引休暇

労働者は、疾病・介護休暇として年間10日分の有給休暇を取得できます。また、家族の重病や死亡などの場合、2日の有給忌引休暇を取得できます。その他、年間2日間の無給疾病・介護・忌引休暇の取得が認められています。

6. 地域活動休暇

労働者は、陪審義務、山火事などの自然災害に対応する緊急ボランティア活動、治安・消火活動など自治体活動、動物保護活動に参加するための休暇を取得することが認められています。陪審義務以外は無給休暇です。

7. 長期勤続休暇

労働者は、労働協約または労働契約、州法などで別途規定される長期勤続休暇を取得できます。準拠する規定により勤続年数に7年から15年の開きがあります。NSW州で勤務する労働者は、勤続10年から取得が可能になります。

8. 祝日

労働者は、連邦政府が定める祝日、州政府または特別地域政府が別途規定する祝日を公休日として休みをとることができます。準拠する規定により公休日や日数にも違いがあります。ただし、雇用主は労働者にこれらの公休日に労働するよう要請することができます。

9. 解雇通知および解雇手当

■ 解雇通知:雇用主は、労働者を解雇する際に、労働者の勤務期間に応じて、1〜4週間前の書面による解雇通知をしなければなりません。

■ 整理解雇:雇用主の事業運用上の都合や倒産などによって労働者を解雇する場合、解雇される労働者は勤続年数に応じて4〜16週間分の給与に相当する解雇手当を受け取る権利が生じます。

10. フェア・ワーク情報文書(Fair Work Information Statement)

フェア・ワーク法を執行する政府機関として設置されたフェア・ワーク委員会は、NESや集会自由、プライバシー保護規定、解雇規定など雇用労働に関係する労働者の法令上の権利に関する情報をまとめて、書面を発行しています。雇用主は、この書面を雇用時に配布しなければなりません。



PROFILE

2004年に来豪。シドニー法科大学院卒(Graduate Diploma in International Law)。09年にNSW州弁護士登録。専門分野は労働・雇用法。Katsuda Synergy Lawyers(カツダ・シナジー・ロイヤーズ/www.katsuda.com.au)の代表弁護士。 複数の弁護士事務所と協業体制をとり、企業法務全般、訴訟、家族法や移民法(ビザ)をはじめとする幅広い分野において専門性の高いリーガル・アドバイスを提供している。連絡先: contact@katsuda.com.au

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